- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582853278
作品紹介・あらすじ
世界に一〇〇〇万人のジプシーがいるとの推定もあるが、その実態は不明な点が多く、作られたイメージが流布している。事実、インド起源の民族集団とする説について、最近の研究では、多くの問題点が指摘されている。では、"ジプシー"と呼ばれる人びとは誰なのか?ジプシーと主流社会との関係を重視しつつ、呼称、分布、歴史、文化など、全体像を描く。
感想・レビュー・書評
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「ジプシー」というのは差別用語であるので、「ロマ(ロマニ)」と呼び替えるのが望ましい。
・・・というような話を目にするようになったんだけど、自分の中には差別的なニュアンスはみじんもない。はてどういうことなんだろうと思ってこういう本を読んでみた。
実は「ジプシー」という民族上・文化上の一貫した存在があるわけではなくて、いや一部にはあるらしいが、その来歴や構成は杳としてつまびらかではない。それと目される人々は世界各地に散らばっていて、呼び名も違えば言葉も違う。自己意識や文化習慣ももちろん違う。社会の「資本化」や格差の拡大などによって、流動化した結果そういう境涯に至る人々も少なくないようだ。
どうも、ジプシーとはある民族のことではなく、社会的イメージの存在であるらしい。乱暴に言わせてもらえるなら、結局「人類の差別意識の吹きだまり」なんじゃないのか・・・と思った。
一方で、オレも含めて日本人の多くは、「ジプシー」と言われた場合にある一定の(共通の)イメージを抱くのではないだろうか。あまり西欧的ではない風貌、流浪の民である、歌舞や楽器が上手い、etc。これらは、近世のずさんな「科学的研究」の影響が大きいようだが、そういう画一的なイメージに押し込みたがる「人類の悪い性癖」のせいもあるのかも知れない。
たまたま先日読んだ岩城宏之氏(指揮者)の本にもジプシーに関するくだりがあって、「ジプシー音楽」とか「ツィゴイネルワイゼン」(ツィゴイネルはドイツ語でジプシーの意)という言葉が持っている意味とかイメージがあるので、音楽に関しては「ロマ(ロマニ)」と言い替えなくてもいいんじゃないか、という趣旨だったけど、被差別側の心情を考えるといささかのんきな主張のようにも思える。
著者は最後に、日本の「サンカ」との類似性を指摘するが、その実態のわからなさもあって、一筋縄ではいかない問題のようである。 -
文字通り、世界中に散らばっているジプシーについて丹念に分析した一冊。
世界中にいる故に混血も進み、一言で語るのは困難な中、その歴史から現代の動向を分析してたのでとても勉強になった。
最後の日本のサンカとの関係も(直接関係はないものの)面白かった。 -
新書らしい新書。
いわゆる「ジプシー」という概念に関する世界各国での成立史・現在まで続く諸問題について、ニュートラルに概観できる良書でした。 -
ジプシーに関する歴史、社会との関係性、文化が学問的に、かつバランス良くまとめられています。
文献引用も明確で、さすがっ!と思わせる書き方です。
(文中に日本のジプシーに関する書籍の問題点も書かれており、買わなくて良かった!と思ったものもありました。) -
日本人ならほぼ万人がそのイメージを共有できる「ジプシー」だか、そのイメージの強さに反して、実態や出自には未知の部分も多いらしい。そもそも「ジプシーとは」という命題に応えうる正確な定義付けが難しく「ジプシーと呼ばれる人びとを示す言葉がジプシー」という笑い事のような言い回しが、研究者の間では真面目に使われているようだ。ジプシーがいないのは中国と日本だけと云われる。その日本からみると、ミステリアスで異国情緒に溢れ、ロマンさえ覚えてしまう存在だが、過去そして現在に至っても、マイノリティとしての迫害や差別の歴史を背負っている事実が、本書を通じて知らされた。
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昨今、話題となっているフランスのロマ追放などの理解の手助けとなった。
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ジプシーについて勉強するとき、最初に読んでおくと便利かも。詳しく知りたくなった人は『「ジプシー」と呼ばれた人々』(加賀美雅弘)とか『ジプシー差別の歴史と構造』(イアン・ハンコック)とか読むといいかもしれない。
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[ 内容 ]
世界に一〇〇〇万人のジプシーがいるとの推定もあるが、その実態は不明な点が多く、作られたイメージが流布している。
事実、インド起源の民族集団とする説について、最近の研究では、多くの問題点が指摘されている。
では、“ジプシー”と呼ばれる人びとは誰なのか?
ジプシーと主流社会との関係を重視しつつ、呼称、分布、歴史、文化など、全体像を描く。
[ 目次 ]
第1章 ジプシーと呼ばれる人びと(人口と分布 ジプシーとは誰か ほか)
第2章 ジプシー像の変遷(ヨーロッパへの登場―「エジプト人」として(一五世紀)
セルバンテスの『ジプシー娘』(一七世紀はじめ) ほか)
第3章 歴史―主流社会のはざまで(インド起源説の現段階とその意味 バルカン半島への進出と定着 ほか)
第4章 ジプシーの現在―いくつかの事例(バルカン半島のモザイク模様 旧チェコスロヴァキアのロマ問題 ほか)
第5章 日本とジプシー(日本人のジプシー認識 サンカは日本のジプシーか)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
フラメンコに興味をもってからジプシーへと波及。
特に欧州でのジプシー研究をダイジェストしたもの。歓迎と迫害の歴史の中で、否定的な感情論が優勢となってきたようだ。起源については北インド-東欧-西欧という流れが主流ということのようで、北アフリカ経由のスペイン入りは否定的であった。 -
音楽が好きです。その背景が分かったような分からないような。
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分類=民族・ヨーロッパ・ジプシー。06年6月。