- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582945317
感想・レビュー・書評
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子どもの頃、日曜日になると通常の新聞と一緒に届く日曜版に描かれた日本の懐かしく素朴な絵が楽しみでした。その絵を描いていたのが原田泰治さんだと知ったのはいつの頃か、記憶は定かでは無いけれど、この本の存在を知って懐かしく、購入しました。
今までに絵が荒れた作品は、すべて原田泰治さんの手元にあるとこと。一度、諏訪市にある原田泰治美術館を訪れ、原画を実際に観てみたいと思っています。 -
「野の道を歩く画家」とされているように懐かしい【ふるさと】に出会える。私にとっては、絵画のナラティヴ・アプローチの世界だと思っている。
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図書館、新刊コーナーにあった本を数冊無造作に借りた。いつものこと、ランダムに斜め読みする癖がある。
一面を埋め尽くす睡蓮の花が全景の3/4を占めている。その向こうに壁の剥がれた家屋と雲浮かぶ青い空が描かれ、家に向かって歩く麦わら帽子を冠り杖をつくひとりの老人が点景として描き込んである表紙が目に止まった。家に戻り、机の上に積んどく状態にしてあった。一日が雨の今日、座椅子に座り何気なく手に取り広げた。滅多に使う言葉ではないけれど、感動だった。すべての絵に「人の姿」があることに驚いた。ああ、この人は自然を描いているのではなく「人」を描いているのだなと思い至った。どのページを開いても、自然の中に人が、子供が点景として描き込まれてある。この人の自然を、人を視るまなざしの優しさは本物だと思った。30年、ひとつのことに打ち込んだ人の言うことは信用できる。決してぶれることのない豊かなまなざしの底には、若き日に出会った奥さんとの深い愛情物語があるようだ。写真の世界にあって自然を撮る人は星の数ほどいるけれど、その中に必ず人を配置する人は極めて少ない。絵の世界だからこそ出来ることがある。そこに人を点景として入れることがそれだ。人への信頼と期待がなくてはできることではない。画家、原田泰治は自然を描きながら人を描いている。