- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591130773
作品紹介・あらすじ
忘れかけていた何かを、きっと思い出す――
『頭のうちどころが悪かった熊の話』著者による
少女たちの日常に潜む小さな奇跡の物語。
「それとは気づかぬまま、
自らの倫理の譲れぬ一線を守り抜こうとする少女たちの、
なんと一心不乱でけなげで強靭でうつくしいことか。」
――梨木香歩(解説より)
小学五年生のミオと妹ヒナコの毎日は、小さな驚きに満ちている。
目かくし道で連れて行かれる別世界、町に住むマチンバとの攻防、
転校してきた少年が抱えるほろ苦い秘密……
不安と幸福、不思議と現実が隣り合わせるあわいの中で、少女たちはゆっくりと成長してゆく。
一篇一篇が抱きしめたくなるような切なさとユーモアに満ちた珠玉の連作短編集。
書き下ろし短編「明日への改札」を収録。
【解説/梨木香歩】
感想・レビュー・書評
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レースのカーテン越しから、ドアの隙間から、オレンジ色に光る溢れんばかりの温もりを覚えている。音の賑やかさ、笑い声、ご飯の炊きたての香り、今日も一日辛く苦しかったことなどしまい込み、灯りの魔法が消えるまで涙を堪えたのでした。結局、子供の頃から泣くのはひとりなのです。
何が正しいことなのか、ちゃんとわかっていました。花を美しいと感じれること、それを壊されたら悲しむ人がいるということ。他人の気持ちを考え行動出来る心は、チョコレートの苦味にまたひとつ大人になったと顔を顰めたのでした。
カタン、コトン。君の罪と私の罪、ねぇどちらのが重いのか教えてよ。昨日感じた鉄の味は、血の味に似てる気がした。上がれば空が広い、落ちれば地が深い。そんな感じで君と私の重さも変わらない。忘れないのでしょう、分け合った鉄の傷を。忘れてしまうのでしょうか、君のことを想った日々を。天のシーソーが上下する。光と影、風と桜吹雪。目まぐるしく、彩やかに、美しく。いつか君とここへ来ても笑い話に出来るでしょうか。カタン、コトン。私達はこのまま何処までも上がっていける気がした。 -
私には3つ、年の離れた妹がいます。人生で初めて意識した同性でした。これがなんともまあ、可愛げがなくて。取っ組み合いこそありませんでしたが、何かと言い合ってばかり。両親が共働きだった事もあり、それこそ毎日、学校が終わればノーレフェリー・時間・ラウンド無制限で言葉のボクシングをするような関係でした。それでも、そのすぐ後には一緒にぬり絵をしたり、手を繋いで外に遊びに行ったりで、遠慮はないけど後腐れもない。もしかしたら、私にとって生まれて初めての親友は妹だったのかもしれない。そんな事を思い出させてくれる本でした。
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児童文学として。
姉妹がいる人には、同じような気持ちになったことが1度や2度はあるのではないかしら?
幼い頃の、無条件に憎たらしく愛おしい妹との出来事を、懐かしく思いながら読み進めました。 -
小学生の姉妹ミオとヒナコ。悪意や嫉妬、時に見せる信頼関係や優しさがリアル。ふたりとも生意気で一筋縄ではいかない子どもだが芯は純粋でまっすぐで正直。いい子だなと思う。小学生の時期ならではのグレーなヒリヒリした経験には身に覚えがある。どの話にも幼い私がいる。ミオとヒナコが私のこともわかってくれた気持ちになった。読んでよかった。
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下手をすると道徳の教科書読んでるみたいな気分になるけど、最後をウヤムヤにして考えさせられる道徳本よりは、あー良かった世の中そんなに悪くないな、って思わせる結末を持ってきているので、良くも悪くも安心して読める。
子どもに読ませたい本ランキング上位なイメージだけど、娘に渡しても読まんなぁ。まぁそんなもんか。
と言うわけで名簿業者が最悪だから死刑だな、あの人たち。子どもを騙すなんて酷い話ですよ。 -
ヒットしないので理論社の単行本の感想。
所収されている話が文庫本より、少ないかもしれない。
表題の「天のシーソー」を含めた6話の連作短編集。
主人公は、小5ミオ。家族は、生意気で金魚のフンで小さい頃はよくひきつけをおこした妹と、見栄張りで、ちょくちょく小言も言うママと、物語にはあんまり登場しないお父さんの4人。
「ひとしずくの海」は、母親と言い合いになって家を飛び出したヒ ミオが、近所のサチねえちゃん中3に会って、めかくし道で帰って来る話。
「マチンバ」は、友達とローラーブレードを転がしながら、ピンポンダッシュを、動物も子どもも嫌いなマチンバにする話。
「針せんぼん」ゼリー作りに凝っていたミオは、家の前で遊んでいた5歳の純一と3歳の翔の兄弟を家に入れて食べてもらい、それをきっかけに、二人は家に遊びに来るようになる。
ある日、ミオは二人との約束を忘れてしまう。
「天のシーソー」2月前に転校してきた佐野は、運動が得意で明るい。何となくミオに優しい。
エリに誘われてミオは佐野を尾行して、佐野の家を突き止めることに。
「ラッキーデイ」朝から学校でミオはついていない。雨にしおしおと濡れながら家に帰ってからもついていない。そこに、電話がかかってきて、クラスメイトの住所と電話番号を教えてくれと言う。最初は断ったミオだったが、脅されて教えてしまう。
「毛ガニ」食料として貰った生きた毛ガニ。妹のヒナコは飼いたいと言う。具合が悪くなったヒナコと毛ガニを重なって見えるミオはー。
私は、なかでも、天のシーソーとラッキーデイが良かった。2つとも、私も大人になった今でも同じような事が思い当たるからかな。天のは、自戒も込めて胸が痛くなるし。それと、ラッキーデイは
クールでいく(そんな表現だった確か?)って軸をぶらさないで行動するから、世界が反転するんだと思うと、勇気な湧いてくる。 -
小学生のミオとヒナコの姉妹の物語。
一番最後の「明日への改札」は、ミオが高校生、ヒナコが中学生に成長した後のお話。 -
等身大の女の子の話。
2013/06/13 -
書店で、酒井駒子さんの表紙絵に惹かれて、手に取りました。
内容も、よかったです。
擦り傷を作ったときのような、ひりひりとした痛み。でも、それだけじゃない。作品のなかにも出てくる言葉だけれど、『キズをおおってなおしてくれるものがちゃんとあらわれるんだから。だから、カサブタ、はがしちゃダメ』。
愛おしい一冊が、増えました。 -
できたら佐野を
上げたままにしてやりたかった。
(ひとしずくの海/マチンバ/針せんぼん/天のシーソー/ラッキーデイ/毛ガニ/明日への改札) -
ミオとヒナコを見ていたら、モモちゃんとアカネちゃんを思い出した。
私には妹はいないけれど、姉妹ってお互いに一番愛しい友達で、そして同時に一番憎らしいライバルなのかも知れないと思った。
幼いながらも凛と瑞々しいミオとヒナコの感性がどこか懐かしく、ちょっぴり切ないです。 -
安東さんの他の作品にくらべると、
こちらは可もなく不可もなく・・・といった感じでした。
どの話も読了後に苦みを残すところが性に合わなかったのかもしれません。 -
7話の短編集はそれぞれ独立した話ながら、
主人公の少女達がそれぞれ育っていく様子がふんわりと心地よく伝わってくる連作となっています。
小学五年生のミオと妹ヒナコの毎日は、小さな驚きに満ちている。目かくし道で連れて行かれる別世界、町に住むマチンバとの攻防、転校してきた少年が抱えるほろ苦い秘密…不安と幸福、不思議と現実が隣り合わせるあわいの中で、少女たちはゆっくりと成長してゆく。一篇一篇が抱きしめたくなるような切なさとユーモアに満ちた珠玉の連作短編集。書き下ろし短編「明日への改札」を収録。【内容情報】(「BOOK」データベースより)
どの話も取り立ててもの凄いトピックがあるわけでもなく、
推理したりどんでん返しがある訳でもなく、
ミオとヒナコを中心にして淡々とした日常の様子が描かれています。
日常の中にあるちょっとしたアクシデントのようなことや、
幼い頃に誰もが一度は感じたことや起きたであろうことなどが、
ふんわりとした空気感の中で展開していく短編集です。
一人暮らしの怖いおばあさんが居る家のインターフォンをいたずらで押してみたり、
カッコいい同級生の男の子の後を着いていって自宅を探し当ててみたり、
その結果として思いがけず相手を傷つけてしまったりというように、
子ども達の世界が丁寧にやさしく、そして時にはせつなく描かれている物語なんです。
短編のひとつひとつの物語の中で姉妹が出会って感じていく出来事には、
人の寂しさや悲しさや優しさなどがほど良く入り交じっていて、
読み終わった時にジンワリと温かいものが胸の中に広がるような気がしました。
特に最後の一話である「明日への改札」は数年後の姉妹のことが描かれていて、
書き下ろし短編ながらこの一冊の総まとめとしてちょっとしたアクセントになっています。
小学生の頃の二人が出会った出来事が思い返せるようなお話なんですよ。
「ちょっと気軽に気負わずページをめくりたいな」という時にオススメの一冊ですし、
寝る前にふわっとした気持ちで静かに読んでみたい一冊です。 -
ミオとヒナコ 姉妹の話。
リアルな世界。
ミオの姉を取られたような気持ちとか。いらないものだったはずなのに、人にあげるとなると、やっぱりいやって言ちゃうのとか。
ミオが、妹いてもいいことないって言っちゃうとこ。
自分の方が怒られる。そういう気持ち。
日常でも、何気ないことがこんな物語になるんだな。
ひとしずくの雨が印象的で、すぐに物語の世界に入っていける。
天のシーソー
毛ガニ が特に好き。
最後の梨木香歩さんの解説もいい。
表紙も、酒井駒子さんのもの。好きだ。
迷ったけど、トータルで評価★5にしてしまう。 -
#読了。連作短編集。児童文学。小学5年生の姉と妹の成長を綴る。たまたま読む本がなく、子供から借りた一冊。家のチビ(姉妹)たちのことを考えながら読んだ。癖のない話しで、微笑ましかった。
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子供の生きづらさ。それは世界に向ける目がまっすぐで、取り繕うことがまだ下手で、おとなの「それはそれ」が理解できなくて、と、いろんな要素があるのだけれど、そういうひとつひとつにぶつかるさまを瑞々しく軽やかに描いた短篇集。それこそ取り繕った書きかたはされていないのが好感をもてる。それぞれの内にあるルールに則って、毎日を駆け抜けるさま、ときに屈託を知ってすこしずつ成長していく光景がほほえましく、まぶしい。
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私も妹がいるし、「ミオ」という名前も似ているし、親近感沸きまくりで読み進めました。おもちゃ箱の中に入ったような気分。