博士の長靴

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  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591173299

作品紹介・あらすじ

天気を変えることはできない。
人間も、他の生きものも、あるがままを受け入れるしかない。


天気の研究に生涯をささげた藤巻博士。博士一家・四世代の歴史と、彼らとの出会いで変化していく人々の生きざまや家族の在り方を丁寧に描いた傑作連作短編小説。

『うさぎパン』、『左京区』シリーズ、『ありえないほどうるさいオルゴール店』の瀧羽麻子、新たな代表作。

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、天気を変えたいと思ったことはないでしょうか?

    あーした天気にな〜れ!、旅行、試合、そして何かの晴れ舞台などなど、私たちはそんな日に雨が降らないように、てるてる坊主にお祈りするといった行為を多かれ少なかれしてきたと思います。その一方で、農業をされている方にとっては、雨が降らないことに頭を悩ませもします。古の世より続く雨乞いの儀式は、そんな人の思いが太古の昔から続いてきたものであることを思わせもします。

    この先の天気の移り変わりを知ることが大きな関心事であることはいつの世でも同じことです。そして、『気象学』という学問が生まれ、人工衛星まで投入して、最先端の科学技術の力によって、その予測の精度は上がってきてはいます。

    しかし、『どんなに科学が進歩しても、人間の力で天気を操ることはできない』という現実が立ちはだかります。自然の力に贖うことなど私たちちっぽけな人類には夢また夢のことなのだと思います。

    さて、ここに『天気を変えることはできない』という現実を認識した上で『気象学』の研究を地道に行ってきた研究者と何らかの関わりを持つ人たちを描いた作品があります。『天気を変えることはできない』という考え方を人の世に置き換えるこの作品。ままならない世の中に生きていく人の姿を描いたこの作品。そしてそれは、何もかも自分の思い通りになるわけではない人生をそれでも工夫の積み重ねで地道に生きていく人たちを見る物語です。

    『わたしには下を向いて歩く癖がある』、自分の『この癖』がついたのは、『中学校を卒業し、はじめてお勤めした先でのことだ』と思うのは主人公のスミ。『裕福なおうち』で『主に掃除を担当することにな』ったスミは『がんばった分だけ着実に家の中がきれいになる』ことが気に入り、『丹誠こめて働』きました。そして、『勤続五年目にして』『旦那様の転勤』もあって『新しい働き口を世話して』もらいます。そして、『藤巻のお宅に通いはじめて、ちょうど一週間になる』という今のスミは『五十代の母親と社会人の息子のふたり暮らし』という家で『掃除と洗濯を任されて』います。『勤め先は、大学の研究室』という息子の昭彦とは時間が合わず『いまだに一度も顔を合わせていない』というスミ。そんなスミは、『空気を入れ替えるだけでかまわない』と言われている昭彦の部屋を開けます。『日々自室で寝起きしている』という昭彦の部屋は『畳のそこかしこに本やノートが積みあがり、数式や図のようなものが書きつけられたメモが散乱してい』ました。『他人が下手にいじ』るわけにはいかないと思うスミは、『坊ちゃまは大学でなんの研究をなさっているのだろう』と考えます。場面は変わり、『どんよりとした曇天だった』という翌日、『卵を買い忘れちゃって』と説明する奥様に『わたしが行ってきますよ』と返すスミ。『雨の中、ごめんなさいね。今日はそれでお終いにしましょう。本降りになる前に、おうちに帰って頂戴ね』と言われたスミは、『奥様は優しい』と改めて思います。そして、『国鉄の駅前にある商店街まで』出かけて帰ってきたスミは『藤巻家の門前で』『すぐ前を歩いていたら男が』『いきなり足をとめた』ことで立ち止まります。『黒い雨傘をさし、くすんだ緑色のゴム長靴をはいて、ずぼんの裾をたくしこんでいる』というその男は『頭上にさしていた傘をさっと下ろ』すと『雨に打たれ』ます。『顔を上に向けて、ざんざんと降り注ぐ雨水を全身に浴び』る男は『あっというまにずぶ濡れにな』りました。そして、『悠々とした足どりで門をくぐ』ると、『ただいま』と『ほがらかな声』を出すその男。男を追い、『おそるおそる玄関に足を踏み入れた』スミは、『どうしてあなたは、いつもそうなんですか。傘はちゃんとさすように、何度も言っているでしょう』と叱る奥様の姿がありました。それに、『一瞬、西の空が光ったように見えたんです。もしかしたら雷かもしれない。かなり珍しい現象ですよ、こんな寒い季節に落雷だなんて!』と返す男は昭彦でした。茶の間へと上がり、『はじめまして。どうぞよろしくお願いいたします』と挨拶するスミに、『はじめまして』と返す昭彦は、『ひょっとして、窓を拭いて下さいましたか?』と訊き返します。それに、スミが『ああ、はい』と答えると、『やっぱり。やけに空がくっきり見えるなあと思ったんです。どうもありがとうございました』と『顔をほころばせ』る昭彦。それに、『雨が上がったら、また磨いておきます』と言うスミに、『明日は晴れるのかしらね』と奥様が言うと、『今日の夜中か、遅くとも明け方までにはやむでしょう』と『なぜか自信たっぷりに』答える昭彦。『気象学』を研究する昭彦の家で働くスミ視点の物語が描かれていきます…という最初の短編〈一九五八年 立春〉。書名ともなる『博士』=昭彦の若き日の人となりをスミ視点で鮮やかに見せていく好編でした。

    “天気の研究に生涯をささげた藤巻博士。博士一家・四世代の歴史と、彼らとの出会いで変化していく人々の生きざまや家族の在り方を丁寧に描いた傑作連作短編小説”と内容紹介にうたわれるこの作品。『博士の…』で始まる書名にフラフラと導かれるように手にした私。はい、そうです。『博士』で始まる小説と言えば小川洋子さんの傑作「博士の愛した数式」が反射的に思い浮かびます。この反応は恐らく私だけではないと思います。であれば、そんなあなたにここで是非お伝えしたいことがあります。『博士の…』で始まるこの作品には確かに『博士』に相当する人物が登場します。しかし、この作品は、小川さんの作品のようにそんな『博士』にずっと光が当てられてはいきません。どちらかと言えば『博士』はすぐに裏方に回ってしまいます。とは言え、それでこの作品の魅力は減じられません。この作品は内容紹介にある通り、『博士』と何かしらの関わり合いをもった人たちが、その出会いによって何かしらの影響を受けていく、そんな物語が描かれていくのです。この点をまずはお伝えしたいと思います。

    では、そんな作品の魅力を二つの視点から見ていきたいと思います。まず一つ目は、六つの時代を描いていく構成です。この作品は六つの短編が連作短編を構成しながら描かれていきますが、そこに、その時代、その時代を表すものが登場します。

    ・〈一九五八年 立春〉: 『部屋の隅へと目が吸い寄せられる。四本脚で支えられた四角い箱に、布のカバーがかけてある』。
    → さて、問題です。これは何でしょうか?
    → はい、『テレビ』です。『休憩中は自由に見ていいと言われて心が動いた』というスミですが、『立ちっぱなしで眺める街頭テレビでさえ何時間でも没頭してしまうのに、ゆったり座って見られるなんて』と『つけたが最後、時間を忘れて見入ってしまいそうだ』と自重します。

    ・〈一九七五年 処暑〉: 『タワーリング・インフェルノ、先生も観た?』
    → この年に日本公開もされた大ヒット、アメリカ映画が会話に登場します。
    → 『消防局長のスティーブ・マックイーンがもう、かっこよくてさあ…』と続く会話の場面。作品の内容自体が本編に関わるわけではありませんが、現代よりも映画の力が大きかったとされるこの時代には、自然な会話の場面と言えると思います。

    ・〈一九八八年 秋分〉: 『わたしは食卓に残された朝刊の一面に目を落とした』。
    → さて、そんな誌面には何が掲載されていたでしょうか?…って流石にこれだけでは分かりませんね。
    → 『ソウルオリンピックの開会式でおそろいの制服に身を包み晴れやかに行進する選手団の写真が、大きくあしらわれている』。そうです。同年に開催された『ソウルオリンピック』の記事が掲載されていた、ということですね。いかがでしょうか?

    他にも、『昼前に駅前 ー 国鉄、もといJRの駅だ。横文字の呼称にはいまだになじめない ー の商店街で買いものを…』といった感じで時代を表現していく瀧羽麻子さん。複数の時代を連作短編で描く作品にはこの時代の演出はつきものですが、これから読まれる方には是非、そんな時代表現も追いながらの読書をお楽しみください!

    次に二つ目はこの作品通しての主人公である『博士』が『気象学』の研究者であるという点です。

    『僕は主に、雲と降水のしくみを研究しています。雲の中でなにが起こっているのか、解明するんです』。

    そんな風に話す『博士』は、『常に空の様子を気にしてい』ます。そして、そんな『博士』の授業は、『受講にあたっては数学と物理学の基礎知識を持っていることが望ましい』と『履修選択用の学修要項』に記されているものの、それは『明らかに語弊があ』り、『「基礎」は「高度な」、「望ましい」は「必須」と書き換えるべき』という極めて高度な内容です。しかし、だからこそそんな講義に惹きつけられる学生も出てきます。例えば『宇宙物理学を専攻するつもりで』入学したはずの学生を『僕はすっかり気象というものに魅了されていた』と学びの方向を変化させるなど大きな存在でもある『博士』の日常にはこんな場面も見られます。

    『ぱらぱらと雑誌のページをめくっていた』『博士』は、ふと窓の外に目を向け』、『ああ、一雨くるな』と呟きます。
    → 『言われてみれば、暗灰色の乱層雲がどんよりと空を覆っている。ついさっきまでからりと晴れていたのに、夏の天気は本当に変わりやすい』と思う主人公は、『藤巻先生は、常に空の様子を気にしている』とまとめます。ここで、”ポツポツと雨が降り出した…”と安直に書かないところが好印象です。『博士』は研究者であって超能力者ではありません。このあたりの描き方にも魅力を感じました。

    また、上記で短編タイトルを記載しましたが、そこには、『立春』、『処暑』、そして『秋分』という『二十四節気』が登場します。この作品では、この『二十四節気』も巧みに物語に織り込んでいきます。例えば、『今日って穀雨ですよね』という〈二〇一〇年 穀雨〉の一場面。

    『穀雨の日に雨が降ると、その年は充実した一年になるって言われてるんです。だから前日の夜に、てるてる坊主を作るんですよ。さかさにつるせば雨が降るっていうでしょう?』

    そんな風に語られていく物語は、『二十四節気』についてよく知らない私のような人間にとっては、なるほど、なミニ知識を提供してもらえる場面でもあります。短編タイトルに時代とともに『二十四節気』が記載されていくこの作品。なかなかに面白い視点を提供していると思いました。

    そんなこの作品は、上記した通り六つの短編が連作短編を構成していきます。連作短編は人を共通にするものと、人以外を共通とするものがありますが、この作品は人を繋げていく作品です。具体的には藤巻家の『息子』として『勤め先は、大学の研究室だ』と最初の短編〈一九五八年 春分〉に登場する『博士』が軸を作ります。この短編は、上記もした通り、そんな藤巻家で『掃除と洗濯を任されている』スミが主人公となって展開し、そこに『博士』が大きな存在感をもって登場します。この短編中でスミは『女中』という表現がされてもいますが、まさに一九五八年という時代を感じさせるものです。そんなスミの前に現れた『博士』は、『職業柄、上のほうが気になるんですよ』と、その個性がこの短編で炸裂していきます。この時代の女性は、今の時代では考えられないほどに関わり合いを持つ男性の個性に人生が影響を受けていた時代でもあります。そんな中に幸せな日々が描かれていくスミの物語、この作品の冒頭を飾るに相応しい優しさに溢れた短編です。そして、それを継ぐように、物語は時代を下っていきます。そんな物語の中に『博士』が冒頭の短編ほどに存在感を示すことはありません。短編を経れば経るほどに、『博士』のその後、スミのその後が極めて納得感のある物語の中に描かれていきます。そして、そんな短編に背景として登場する『博士』やスミは間違いなく、冒頭の短編の印象そのままに年を取っていきます。また各短編には、そんな二人にまさかの関わり合いで繋がる人物たちに順に光が当てられていきます。誰に光が当たるのか、なかなかに凝った人物への視点移動が用意されているこの作品。ここでは、これ以上書くことは伏せ、是非あなた自身の読書の中でその驚きを体験していただきたいと思います。物語は、上記した三つの年代の先、〈一九九九年 夏至〉、〈二〇一〇年 穀雨〉、〈二〇二二年 立春〉と、冒頭の短編から実に五十五年も後の世が結末の短編で描かれていくという幅の広さを見せます。もちろん、そんな変遷の中で『博士』は歳を重ねていくことになります。このあたりの描き方含め、人を共通とする連作短編の見事な描き方は瀧羽さんならではです。それぞれの登場人物がそれぞれの苦悩の中に人と人との出会いをきっかけに何かしら影響を受けながら生きていく様が描かれるこの作品。終始優しく紡がれていく物語の中に「博士の長靴」と書名に刻んだ瀧羽さんの上手さを感じました。

    『天気を変えることはできない…人間も、他の生きものも、あるがままを受け入れるしかない』。

    そんな言葉の先に『気象のしくみを知りたい』と『気象学』の世界に生きる人たちなど、『博士』に繋がる六人の主人公たちの生き様が描かれたこの作品。そこには、五十五年にも渡る物語が描かれていました。それぞれの時代を写し出す表現の登場が楽しみなこの作品。どんな繋がりの人物に視点が移るかとても楽しみなこの作品。

    “明日晴れにしたいと思って晴れさせることはできない。そういうままならないのは天気に限らずある”とおっしゃる瀧羽さん。そんな瀧羽さんが優しい眼差しの中に描く、ほのぼのとした作品でした。

  • 天気の研究をしている昭彦。
    彼が妻と出会った時から、ひ孫の代までの連作短編集。
    読み始める前は、昭彦を中心に話が進んでいくものと思っていたのだけれど、お話ごとに、中心人物は代替わりをしていく。
    初めの方の何編かは古き良き時代のほっこりしたお話が続き心地よかったのだけど、後半はなんだか急にすごーく嫌な気分になるお話になってきます。
    なんなの!?残念すぎるんですけど!
    と、思っていたら、天気は変えることはできない、と。
    天気も人間もあるがままを受け入れるしかないんだ、と。
    そういえば、我が家のトイレの松岡修造カレンダーも、天気や人の性格は変えることができないから考えても無駄、無駄なことはシャットアウトしろ!と言っていたっけ‥‥と思い出しました。
    自分の思い通りにならないことに遭遇するとついついイラッとしてしまうけど、受け入れること、大切ですね。難しいけど笑 

  • 初めのお話が良かった。
    二十四節気…古くからの季節の節目。
    季節の移り変わりと家族代々の物語。

  • 本を読みながらそっと外を眺めてから空へと目向ける。
    爽やかな風と眩い光が差し込んでいる今日は、空の雲の流れもゆるやかだ。
    たしかに空は美しい。
    雲の色もかたちも刻々と変わっていくのを眺めていると飽きることはないのだろう。

    これは、気象の研究に生涯を捧げる藤巻博士の一家、四世代の歴史である。
    家族の在り方を連作短編で綴っている。
    二十四節気の決まりごとを代々、受け継いでいるのがとても素敵である。

    ちょいちょい不倫やシングルマザーなどをぶっ込んでくるのだが、苦悩やドロドロ感などなく、気象と同様に諍うことなく、なるようになる…的な感じで流れていく。
    この揺蕩うような感じがとても心地良い。
    優しく流れていく雲のような物語だった。

  • ご夫君を亡くされた奥様と、大学で気象学を研究している坊ちゃま。
    スミが働き始めた、藤巻家を描いていく、連作短編集。

    1958年から2022年まで、母親との暮らしから、どんどんと世代が移り変わっていく。

    藤巻家のそれぞれだけではなく、ご近所さんや仕事の関係者など、外からの視点もあり、世界に広がりがある。

    浮世離れした学者肌、無口で穏やかな昭彦がいると、不思議と雰囲気があたたかくなる。

    次々と世代が変わってしまうが、スミ視点の最初の話が一番魅力的。
    スミと昭彦のエピソードは、もっと読んでみたかった。

    最後の話の、ひ孫・玲とのメモ帳のエピソードもよかった。

  • 瀧羽麻子さんの作品を読むのは「うさぎパン」に続き2冊目です。
    今回は気象学者の藤巻昭彦さんから始まり藤巻家の4世代にわたるストーリーが書かれています。
    私は、もっと気象学がっつりのお話かと思っていましたが、藤巻家の日常をいろいろな世代で書かれていて、
    最初と最後のお話がとてもほんわかして
    可愛らしかったです。
    世代がどんどん変わってもどこか風変わりな
    藤巻昭彦さんの温かさが軸になっているので
    心があったかくなりました。
    最後のお話の
    ひいおじいちゃんになった昭彦さんが、メモをたくさんとりながら、空を見上げているのを不思議そうにひ孫の玲くんが見ていると、
    「あなたの頭で考えたことは財産です。残しておかないともったいない」とメモ帳をプレゼントしてくれた場面がとても温かく心に残りました。

  • 「博士の長靴」 瀧羽麻子著|(北上次郎のこれが面白極上本だ!)日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/303285

    <訪問>「博士の長靴」を書いた 瀧羽麻子(たきわ・あさこ)さん:北海道新聞 どうしん電子版
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/665104?rct=s_books

    博士の長靴| 一般書| 小説・文芸| 本を探す|ポプラ社
    https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8008383.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ちょっぴり不思議な気象学の研究者とその家族を描く、連作集『博士の長靴』 | ananニュース – マガジンハウス
      https://ananw...
      ちょっぴり不思議な気象学の研究者とその家族を描く、連作集『博士の長靴』 | ananニュース – マガジンハウス
      https://ananweb.jp/news/410758/
      2022/04/19
  • 博士の一家を通して、日本の歩みを感じました。
    二十四節気のお祝いなど、受け継がれていく家族のつながりが好きです。

  • 博士とその周りの人たちが主役になりながらの短編集。

    気象学を研究している博士は、いつも空を見上げている。気象のことに全部の力を使い果たして、他には回らない博士がとても良い感じで、もっともっと気象の話をいっぱいしてほしくなる。
    短編集として、ちょっと苦みを含みながらも穏やかな空気に包まれた素敵な作品だと思うが、やはり長編好きなので、博士のお話を深く読みたくなってしまいました。

    最後のお話で、メモ帳を買ってくれた時の言葉がとても好き。「自分の頭で考えたことは、あなたの財産です。残しておかないともったいない。」

  • 天気は変えられないのであれば対策するというのは天気に限らず全ての問題において言える事。家族のお祝いが時代を超えて受け継がれていくのも素敵。そして何よりの感動はひ孫に贈られた長靴。時代を越えた愛情が伝わってきた。

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著者プロフィール

1981年、兵庫県生まれ。京都大学卒業。2007年、『うさぎパン』で第2回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞し、デビュー。
著書に『ふたり姉妹』(祥伝社文庫)のほか、『ありえないほどうるさいオルゴール店』『女神のサラダ』『もどかしいほど静かなオルゴール店』『博士の長靴』『ひこぼしをみあげて』など多数。

「2023年 『あなたのご希望の条件は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

瀧羽麻子の作品

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