座布団

著者 :
  • 白泉社
4.20
  • (27)
  • (21)
  • (11)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 225
感想 : 27
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784592862758

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ほんの気まぐれで足を踏み入れた寄席で、山久亭初助の高座に魅せられた要は、初助への弟子入りを決意する。気難しいが芸を伝えることを惜しまない初助、3才年下の気のいい兄弟子寒也の助けもあって、要はすぐにしきたりの多い落語界にもなじみ、元々かわいらしく華のある佇まいと持って生まれた才も相まって、めきめきと頭角を現す。
    師匠初助を敬愛し真打ちを目指し精進する要を常に暖かい眼差しで見守る寒也。真っ直ぐな愛情を隠さない寒也にほだされるように、要はその好意を受け入れる。
    ある日独演会で初助が選んだ演目、正妻と妾のほの暗い女の情念が絡み合う場面を見事演じきった初助。どこかのん気で気のいい亭主とお互い激しい嫉妬の炎を燃やす正妻と妾の姿は、寒也を挟んだ初助と要の姿にほかならないのだ、と要は本能的に察知する。寒也は自分とこうなる前は師匠の相手をしていたのだと。
    かわいい間夫を若い妾に横取りされる。その嫉妬心さえも芸のこやしという全て折り込み済の初助の芸に賭ける想い。
    早々にラブラブになった寒也と要のどこかほのぼのとした恋愛と絡めながら、そこから浮き上がってくるのは師匠初助の芸に賭ける情念、業深い壮絶な人生。芸の道とはかくも凄まじいものなのかと。
    人情噺めいた寒也と要の愛情物語。対照的に男を踏み台にすることなど何とも思っていないのに、男も女も惹きつけてやまず、その暗い情念を引き寄せてしまう初助の孤独。
    ちゃんとBLなのだけど、どこかBLを超越した作品。萌えとかキュンとかトキメキは皆無なのに、ただただすごいな~と感心させられる。
    この作品が名作と呼ばれるのは、落語の世界を通して奥深い人の世の人情や悲哀を余すところなく描き出したからだと思う。初助師匠の高座聞いてみたかった。

  • 師匠である山九亭初助が亡くなった――山九亭感謝こと森野要が回想する、師匠への想いと落語家・山九亭金目になってからの半生、そして……。

    BL小説にして芸道小説。ゲームはやったことあってもBL小説なんか読んだことがないもので、なんつうかこう普通に恥ずかしかったですね! どーん。まあ落語ネタじゃなかったら読まなかったな… だからいい機会だなーと思いました。年下攻めっていいね。
    芸道、とは書いたけれどやはり要と寒也の関係、想いや、師匠・初助とのこと、男を喰って生きた過去、など恋愛面の方を強く思い出しますね。いや、初助は芸に生きて芸と共に死んだし、落語分が無いわけじゃないけどもう少しこう落語!話芸!に特化してたら嬉しかったです。とちょっぴり不満を垂れつつも、自分もひさびさに落語小説進めたくなってうずうずしました。今は続編?の「花扇」読書中。

著者プロフィール

6月9日生まれ、双子座。雑誌「小説イマージュ」(白夜書房)1996年5月号に「一枚の遺書」を発表して、新人賞と第12回月間イマージュクラブ賞に選出され作家デビュー。以後、女性向け小説を中心に様々なジャンルで活躍中。主な著作は『スワンドール奇譚』シリーズ(エンターブレイン)など。

「2015年 『恋愛事件捜査係 担当官は恋愛オンチ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

剛しいらの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×