- Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
- / ISBN・EAN: 9784593534746
作品紹介・あらすじ
1899年、新世紀を目前にしたテキサスの田舎町。11歳のキャルパーニアは、変わり者のおじいちゃんの「共同研究者」となり、実験や観察をかさねるうち、しだいに科学のおもしろさにひかれていきますが…。ニューベリー賞オナー作。
感想・レビュー・書評
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ダーウィンと出会った夏 - ほるぷ出版 こどもの本のほるぷ出版
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1899年のテキサスの田舎町が舞台です。
主人公のキャルパーニアは7人兄弟の真ん中で、唯一の女の子です。
家族から"変わり者"とされているおじいちゃんと仲良くなり、博物学や科学に興味を惹かれていきます…
当時の時代背景を描きつつも、現代の若者にも通じる部分がたくさんある物語でした。
「自分らしく生きるとは?」という現代でも誰もが考える重要な問題に、11歳の女の子が悩み、自分なりの答えを出そうともがく姿は、きっと共通する部分を感じることでしょう。
特に当時は「男の仕事」「女の仕事」という、男女の役割が明確に決まっており、キャルパーニアの母も、一人娘に"よき妻・よき母"になってほしいという強い期待を持っています。
一方のキャルパーニア自身は、家事なんか大嫌い、補虫網や顕微鏡を持って自然を観察することに魅力を感じる女の子。
周囲の期待と自分のやりたいことのあいだの溝に、とまどい悩んだ経験のある方は、きっとキャルパーニアにエールを送りたくなります。
ですが、キャルパーニアがいつもくよくよ悩んでいたかというと、全然そんなことはありません!
元気いっぱいで、兄3人・弟3人にはさまれて、少々じゃじゃ馬なくらいに走りまわっています。
特に兄弟のあいだの会話は、ユーモアがきいていて楽しいです。
弟たちにとってはよきお姉さんですし、兄のガールフレンドにやきもちを焼いてみたりするところはキュート。(その結果がどうあれ…)
おじいちゃんと二人で研究に励み、科学的に考えて記録をつけ、博物学者の卵として奮闘するところもほほえましいです。
博物学っていいなぁ、という興味も高まりました。
ぜひ中高生におすすめしたい1冊です。 -
タイトルに惹かれて。
いつも実験ばかりしていて怖いイメージのおじいちゃん。そんなおじいちゃんへの質問を切っ掛けに、キャルパーニアの日常が好奇心に満ちたものへと変化していく。
『おじいちゃんは、ダーウィンの本を貸してくれた。違った生き方もできるんだということを示してくれた』
今まで見ていたけど見えていなかったものが沢山あることに気付く。自然科学、生物学、天文学、…と、今まで知らなかったことを知って、知りたいことやりたいことがどんどん増えていく。
おじいちゃんとの実験や標本採集に夢中になっていくキャルパーニアを見ていると、楽しいし嬉しい。
子どもの好奇心や集中力、吸収力ってすごい!
一部の大人からは変わり者扱いで不評だけど、子どもと一緒に体験して見守り、自然に導いてくれるおじいちゃんが素敵でした。
ただ、母親の「こうあるべき」の考え方が窮屈すぎて読んでるだけで息苦しかった…。
子どもの成長過程で、そばにいる大人の影響って大きいなぁと思いました。
シリーズ第二弾があるので二人のその後を追いたい思います。
それにダーウィンの「種の起源」からの引用の文章も興味深くて、読んでみたくなりました。
『ふだんの暮らしのなかであたりまえにやっていることだから、だれも立ち止まって考えてみたり、疑ってみたりしないの?』
『好奇心こそ、世界を科学的に理解するための必要条件』 -
1899年のアメリカ(テキサス州)が舞台の物語。
女性たちは「良き妻」「良き母」となることを求められ、また自らも望んで生きている社会の中で、主人公のキャルパーニアはその状況に不満を抱きます。
綿花産業を興したものの隠居し、自然科学に傾倒する変わり者の祖父とともに、自然の採集や観察に熱中するキャルパーニア。
いわゆる「花嫁修業」を積ませようとする母や、「女」として生きることを当然と考える兄弟たちに自分自身の生き方を決められているように感じ、自分の夢を追い求めることが本当に正しいことなのかと悩みながらも過ごす、キャルパーニアの葛藤が描かれます。
と言っても暗い物語ではなく、大家族の兄弟同士の交流や、19世紀末のアメリカ南部の生活などもリアルに描かれ、少女の成長小説として、また身近な物事に対して疑問を抱き、批判的に思考しながら観察することの意義も主人公の成長を通して考えることができる作品です。
個人的な印象としては、「女性を束縛する世間に対して抵抗しようとする主人公」を応援するような視点で描かれる、どちらかというと女性(あるいは女子中高生)を主たる読者として想定している作品なのかな、とも感じました。
もちろん、男性(男子中高生)が読んでも楽しめる作品ではあると思いますが、どうしても主人公の「不満」や「怒り」は同性の方が共感できるのではないか、と思います。 -
間もなく20世紀を迎えようという年の夏、キャルパーニアは庭にいるバッタに見たことのない色と大きさのものがいることを見付け、変わり者の祖父にそのことを相談する。それが彼女と科学との出会いだった。
百年以上前のアメリカ南部の田舎町に住む少女が、ダーウィンの著書と自然科学を観察研究する祖父に出会い科学の面白さに目ざめる物語。
時代が時代のため女の子が科学に興味を持つこと自体周りに認めてもらえず、苦手意識に溢れた料理や手芸など良妻賢母となることを強いられる。3人の兄と3人の弟に挟まれ、女に生まれたということで違う扱いを受けることにも不満と違和感を抱く。
根底にはそんな時代が持つ差別的要素がありますが、(このこと以外にも黒人差別などにも触れている)物語自体は明るく前向きに展開されます。それはキャルパーニアの性格に負うところが大きいでしょう。
失敗しても叱られても落ち込みさえすれど尾を引かない。興味を持ったことにはとことん突き進む。そんな彼女がこれからの新世紀を突き進んでいき、やりたいことはやりたいと強く思うことで叶うものになるという予兆を刻んで物語は幕を閉じます。 -
1899年アメリカ。男兄弟に挟まれたキャルパーニアは、現役を引退し、標本採集やウィスキーの蒸留に情熱を傾ける祖父と仲良くなります。
兄弟で唯一ダーウィンの進化論など科学に興味を示すキャルパーニアは、祖父と一緒に採集に出かけ、科学の基礎を教えてもらいます。
そして、二人は新種の植物を見つけるのですが・・・。
大好きな兄の恋、次々に恋に目覚めていく兄弟や友人、娘を社交界デビューさせたい母など、科学に傾倒していくキャルパーニアとは温度差の違う世界も描かれています。
祖父と長い時間を過ごすことに難色を示す母からは、女の義務として無理矢理家事を教えようとされたり、本人も女である自分がずっと勉学を続けることができるのだろうか、と悩むことにもなります。
科学への啓蒙であり、家族愛の話でもあり、女性差別も含んでいます。
大きな労苦を必要としながら、一瞬でその結果を無にされてしまう料理のことなど、当時の女性の苦労がしのばれます。 -
文章も構成もすっきりしていて分かりやすく、
何より面白いので、
読み始めからすぐに物語の中に入れる。
ただ、この作品はラストが素晴らしい!
希望に溢れていて、
読み終わったその日は、
一日中幸せな気持ちで過ごせるぐらい。
ラストの場面がこうでなかったら、
ここまで心に残らなかったように思う。
やっぱり自分は幸せな結末が好きだなぁと実感。 -
1899年、新世紀を目前にしたテキサスの田舎町。11歳のキャルパーニアは、変わり者のおじいちゃんの「共同研究者」となり、実験や観察をかさねるうち、しだいに科学のおもしろさにひかれていきますが……。
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南北戦争後のアメリカの裕福な家庭の女の子が、女性として決められた生き方を生きるのではなく、自分らしく生きたいと願う気持ちが素直にユーモアを交えて書かれている。
唯一の理解者は、絶対的家長でありながら家族から変わり者と見られているおじいちゃん。最初はぎこちない二人のやり取りが徐々に距離を縮めていくのが読んでいて微笑ましい。
しかし、この時代から随分と経った現代も、根本的に女性の置かれた立場というのは変わっていないのだなぁ、とガックリしてしまう。