イスラム飲酒紀行

著者 :
  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594064365

感想・レビュー・書評

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  • 旅行中だろうと、飛行機の中だろうと、アルコール禁止のイスラムの国だろうと、とにかく酒が飲みたい。

    酒飲みのそんな心の叫びを体現した一冊です。
    酒の美味しさって味&酔えることに加えて、大なり小なりある後ろめたさにあると思うのです。
    その背徳スパイスが、禁酒のイスラーム圏ならより効いてくるわけです。
    しかも、禁酒のはずなのになぜか手に入るイスラムの地酒とならば、なおさらのこと。

    酒をテーマにしてて、実際、イスラムの国々で酒を探すことに内容のほとんどが費やされていますが、本そのものはちゃんとした旅行記です。
    むしろ酒を通じて、イスラム文化にうまいこと切り込んでいることが面白い。
    とにかくイスラムって、公と私をきちんと分けているのです。
    だから人前でのアルコールはご法度でも、仲間うちなら平気。
    ちゃんと美味しいお酒や肴もある。
    人のいるところにお酒がある、ってことを見事に表しています。

    私、この本を読んでいる間、立ち飲み屋へいく頻度が妙に増えました。
    お酒と旅とイスラムが好きな人に読んでほしい一冊。

  • イスラム教国内で酒を飲もうと言う紀行集。一日たりともアルコールを欠かせないと言う作者の執念が面白い。イスラム教国内では基本的にアルコールはドラッグと同じように禁止されていると思っていたのだが、読んでみると意外と簡単にアルコールを入手しているのに驚かされた。あとがきで指摘されているようにイスラム国家では他の宗教は全く禁止されているイメージを持っていたが、飲酒が禁止とされていない宗教も国内に存在している。そういう人達の為のアルコールは必要だろう。独裁的なイメージを持ちがちだが、その部分で勉強にもなった。最初面白かったけど、最後のほうは飽きてしまった。ちょっとワンパターンかな。

  • 前から知っていたことだが禁酒なんて国民が守るわけがない。全国民当たりの飲酒量で上位を占めるのはメキシコでもロシアでも無くイスラム圏が占めている。
    興味深い紀行文だ。

  • 休肝日がないと豪語する探検家の著者が、わざわざ禁酒のイスラム諸国に酒を飲みに行く。
    生の庶民的生活あり、危険な場所あり、ぼったくりあり。後から笑える系の紀行エッセイ。
    意外と歴史や文化の知識が鏤められているんだが、呑むと忘れちゃうんだ(笑)

    弛い国、厳格な国(でも酒はある)。
    時には夫婦で。
    元々は酒飲みではなかったが、例のアヘン紀行で中毒になり、禁断症状に耐えるためにアルコールに頼り、結果ほぼアル中に、、、、

    カタール、パキスタン、アフガニスタン、チュニジア、イラン、マレーシア、トルコ、シリア、ソマリランド、バングラデシュ

  • とにかく飲んで飲んで飲んで飲みまくる本。笑
    飲酒が禁止されているイスラムの国々のはずが、ほぼ間違いなくお酒に出会えるところが面白い。
    お酒のために危ない橋を渡りながらも、その場でしか出会えない人との刺激的な出会いや逸話があったりして、お酒というものを通して現地の人々の生活や価値観などが見られてとても興味深かった。

  • フィールドワーカー高野秀行氏が、酒が禁止されているはずのイスラム圏で、地酒を求めてさまよい歩く旅日記。

    お酒に興味がないので読み始めはそれほど興味を惹かれなかったけど、お酒欲しさに普通の人に発見しにくい現地のアンダーグラウンドな文化を見つけていく様子は、ちょっと面白かった。

    でも『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』があまりにも素晴らしかったので、こちらはあまり高い評価はできない。

    高野氏の本は、人の生活や文化は「理念」みたいな画一的なもんではなくて、もっと雑多で一貫性もあんまりなくて、猥雑で勝手な物なのだと気づかせてくれる。どこか松沢呉一氏の仕事と共通している部分があるようにも感じる。

  • 親戚に酒乱の人がいたので基本的に酒飲みな人は好きになれないのだが、この本の著者も年中、酒のことばかり考えていてイライラする。
    しかし、そんな酒飲みな人は世界中にいて酒を酌み交わしその町の人からガードを下げて語り合える。
    のんべえ達を通してイスラムの文化を知ることができる本。
    イスラムは酒に厳しいはずなのに。

  • 2016年8月3日読了

  • イスラム国家で酒が飲めないかと思うとさに非ず~§1紛争地帯で酒を求めて-2007年森カメラマンと凶獣を探しにパキスタン経由でアフガニスタンに行く予定が,搭乗客が少なくてパキ航が欠航となり,一流ホテルでも酒を出さない。大学生に訊くと医者の診断書で酒を手に入れられる。パーミットプレイスには男が殺到している。アフガニスタンのカラオケ・バーではお持ち帰りの中国人女性がいて,ビールを飲んで25ドルから12ドルに負けさせた。-§2酔っ払い砂漠のオアシス-妻を連れてチュニジアに来て,常温で呑むとしたらロゼワイン。ビールを飲んでも爽快感がないのは,のべつ呑んでいるからだと気付く。砂漠のオアシス・バーで水とナツメヤシをミックスした酒を飲んだ翌朝,腹痛オンパレードで,オアシスバーがラクダの足洗い場であったからと判明する。-§3秘密警察と酒とチョウザメ-2009年2月,麻薬同様酒が禁止されているイランに行くが,白昼へべれけの酔っ払いに遭遇。密売人はスーフィーで,ホメイニを批判する。どぶろくとウォッカ。チョウザメは強精食だった。-§4モザイク国家でも飲めない!?-モザイク国家マレーシアで2005年7月。ババ・ニョニャ(中国とマレーのハーフ)を訪ねるが手に入らず,ポルトガル租界の現地バーに突入。酒は何でもある-§5イスタンブールのゴールデン街-モスクの近くはないと踏んでいたが,アタチュルク行きつけの中間営業だけの宮廷料理屋は問題がないし,ネヴィザーデという飲み屋街は人がざわざわしていて,普通にビールを飲み,客引きが負けずに声を挙げる。-§6ムスリムの造る幻の銘酒を求めて-シリア南部に葡萄酒を造るドルーズ派がいるというが,どこの酒屋も不機嫌(その理由は結局不明)で,レバノン北部の不味いワインを飲んでいたが,アンマンへタクシー移動中に立ち寄ると,イケメンの靴の修理屋のお兄ちゃんが差し出したワインは絶品だった。-§7認められない国で認められない酒を飲む-ソマリランドは平和で何故独立国家として承認されないのか分からない。カートという葉っぱを囓っているとアルコールは要らないが,スプライトのボトルにジンが入れられて売られているが,カートと違って,性欲が消えることはない。-§8ハッピーランドの大いなる謎-バングラデシュの東側にはミャンマーに近い人が住んでいて,仏教徒だから酒を飲むが,蒸留三度のアラクだ。敬虔な仏教徒は呑まない-~ムメンベを探せの時代は可愛い大学生だったのに,生意気にも,周辺を威圧するほどの酒好きになってしまって,書き出しが「私は酒飲みである。休肝日はまだない。」でいやらしい。ま,仕方ない。1966年生まれというと今年49歳。「ゴールデン・トライアングルの核心部で取材中,うっかりアヘン中毒になってしまい,それから脱出するため,つまり禁断症状を耐えるために酒をのべつまくなしに飲むようになった。」(p77)という事情があるから仕方ないね

  • これまで良く実態を知らなかったイスラムの国々の文化についてうかがい知ることができた。
    お酒が飲みたくなる。

著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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