- Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
- / ISBN・EAN: 9784596774767
感想・レビュー・書評
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ドン・ウィンズロウ『陽炎の市』ハーパーBOOKS。
『業火の市』に続く、ダニー・ライアン三部作の第2弾。
確か『業火の市』の巻末にはこの第2弾の冒頭が『虚飾の市』というタイトルで収録されていたが、『陽炎の市』というタイトルに変更されたようだ。
ドン・ウィンズロウらしいハードでストレートなギャング小説。圧倒的な面白さ。
一人の女性を巡るマフィア同士の抗争に巻き込まれたダニー・ライアンが仲間と共に自由を求め、逃亡し、家族のために全うな人生を送ろうともがき苦しむ。やっと掴んだと思った幸せな時は砂漠の陽炎の如く消えていくが、それでもダニーは諦めずに安息の時を追い求める。
プロローグ。1991年4月、カリフォルニア州アンザ・ボレゴ砂漠。仲間と共に捕まったダニー・ライアン最後のシーンが描かれる。この物語の結末はこんなに悲しいものなのか。結末は変わることはないのだろうか。
1988年12月、ロードアイランド州。アメリカ東海岸で起きたイタリア系マフィアとの血塗られた抗争に破れたアイランド系マフィアのダニー・ライアンは残された仲間と共に西へと逃亡する。
ダニーたちが持ち逃げしたヘロインを奪還しようとイタリア系マフィアとFBIが執拗に追跡し、次第に追い詰められていく。
危機を感じたダニーはラスベガスの郊外に住む母親のマデリン・マッケイに助けを求め、母親の家に身を潜める。しかし、そこに麻薬取締局の捜査官が訪れ、ダニーに取引を持ち掛ける。
その取引とはメキシコの麻薬カルテルに痛手を与えるために、彼らの隠し金を強奪する代わりにFBIの追跡を止めさせ、仲間と共に新しい人生を与えるというものだった。
仲間と共に麻薬カルテルの隠し金を強奪したダニーたちだったが……
またも巻末には来年の夏に刊行予定の三部作の最終幕『荒廃の市』からの一部抜粋が特別先行公開されている。
『荒廃の市』の内容に触れてしまうと完全なネタバレになるので触れないが、全く予想外の驚愕の展開が描かれていることだけ述べておこう。
来年の夏が楽しみだ。
定価1,440円
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「業火の市(CITY ON FIRE)」での抗争に敗れて西へ向かったダニー・ライアンの物語の第2弾(「陽炎の市(CITY OF DREAMS)。西には”Dreams”があったが陽炎のように....。
映画的で(ハリウッドが舞台の1つ)、スピード感にあふれており、さすがのウインズロウ&田口俊樹の世界でした。ダニーの部下のアルターボーイズ、ネッド・イーガン、親友マック、母親マデリーン、ハリウッド女優ダイアン....。「犬の力」...シリーズのように上下巻ではないので、もう楽しみが終わってしまう...と思ってしまいました。
来夏刊行予定の「荒廃の市(CITY IN RUINS)」が待ち遠しいですが、ウインズロウのラストとなるのなら刊行はまだまだ先でも良いなあとも思います。 -
ウィンズロウが最後の作品として世界にプレゼントしてくれる三部作は第二作。第三作は執筆中とのことなので、一年に一作、書いては出版するというけっこうリアルタイムかつ歴史的作業なのかと想像する。翻訳者も出版社スタッフも綱渡りな作業だろうが、内容的にも、作家ウインズロウのラストワークとしても、あまりに重要な歴史的三部作に携わる多くの方のGood Jobに敬意を表しつつ、大切に本書を手に取る。
旅行業をしていると本に費やす時間が実は途切れ途切れで得られにくいのだが、8月に入ってようやく連続休暇が得られたので、二日くらいで一気に読ませて頂いた本作。分厚い作品だが、『業火の市』で故郷を追われた主人公ダニー・ライアンとその一行がウエストコーストに辿り着く状況と、そこでもまた張りつめる緊張と生死を賭けた日々に瞬く間にのめり込んでしまう。
テンポが速いせいか、ぐいぐい読み進む。とはいうものの、登場人物の多さが読みにくさに繋がるので巻頭の人物表を百万回くらいめくりなおさねばならないのは前作と同様。何せ人間関係図は、この物語にとって大変重要なものだし、それぞれの人間関係の矢印は、いつでも裏返ったり引っくり返ったりし得る信用のならないものだからだ。スリリングで緊張感いっぱいの登場人物表。
タイトルの「陽炎」は原語では”Dreams”。ちなみに具体化するとそれはハリウッド・ドリームだ。銀幕の世界。主演女優の魅力。札びらが舞う世界。夢という名の鉱脈が眠る土地。
売れっ子映画女優の作品撮影に燃えあがるサンディエゴ。ダニーたちが辿り着いた太平洋の岸辺にある世界。メキシコの闇カルテルやFBIの権力闘争、そしてロードアイランド州プロヴィデンスに遺してきた敗北の過去。勝者イタリアン・マフィアの追撃の恐怖。ダニーは空っぽであるかに見える。組織はばらばらに解体したかに見える。しかしダニーが持ち去ったマネー(大半は海に投棄したとは言え)への追撃網は緩まない。緊張した逃走ドラマのさなかで、ダニーたちは身を隠す。新天地カリフォルニア。
売れっ子女優ダイアン・カーソンの描き方が独特でウィンズロウらしい。そして映画製作現場の活気も、そこに寄せられる札束の気配も、男たち・女たちの欲望も。ダニーの母親はクールでリッチで悪女だが、それでも母親であり、ダニーの守護神でもある。ダニーの腹心のアルター・ボーイズは歩く凶器みたいなもので、スリリングな存在だ。いや、すべての腹心、部下たちが同じようなものかもしれない。何しろ彼らはギャング組織。影を踏んで歩く組織なのだ。
そしてこの三部作はギリシャ神話に基づいた物語だと言う。ウィンズロウ人生最後のチャレンジ。運命の渦に巻き込まれ錐もみ状態になったダニーの運命は未だこの作品まででは半ばまでしか語られていない。全く幸福とは別次元に転がっているかに見える主人公ダニーと彼に近づく者たちの不幸が際立つ。ダニーの彷徨の人生は、煌びやかに輝くと思うと、次の瞬間には闇に閉ざされる。血の匂い。硝煙の匂い。ドラッグの夢。命の儚さ。いつも摑みきれなかった愛。
本作もまた読後の興奮冷めやらぬところは前作同様。本当にドラマティックなクライマックスを予感させる最終作(本シリーズだけではなく、残念ながらウィンズロウの最終作)まで一年。今日のところは終わっちゃいない。気長に待つとしよう。 -
相変わらず別格。
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最高。
平穏を望みながらも、結局は巻き込まれていくダニー。ぶつくさ言わないだけで、根本はニール・ケアリーぽい。
昔からウィンズロウの「食べ物と生活の描写」がめちゃくちゃ好きなのだが、今回は1歳半の育児を「終わりがない」と書いてたところが好き。
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前作に続いて今回も500ページを超える大作。舞台は東海岸から西海岸に移して素晴らしいストーリーテリングを展開。一気に三日間で読了。次回作で作家活動に終止符を打つということらしいが、期待したい。
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〈ダニー・ライアン〉3部作の2作目。抗争に負けたダニーは逃亡し、そこでFBIから取引を持ちかけられて自由を手にする。身を隠し、静かに生活していたなかで出会う1人の女性。そこからまた色々と動き出していく。今作は派手なアクションなどは少ないけれど、それでもその奥にある怒りや後悔、憎しみなどたくさんの感情が流れているのを感じることができる。ダニーの周辺がざわざわし始め、この先がどうなるのか。完結してほしくないけれど早く読みたい。
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すごく読ませるし面白いけど、待ってたモノとちょっと違った。
おまけに巻末についてる次回作の冒頭は何なんだ!!
すっかり表舞台の話になっちゃうの??
いやあ、ヒリヒリしたギャング同士の戦争が読めるもんだと思ってたからね。
メキシコのカルテルがいつハリウッドに乗り込んで来るのかと思ったら全然だったな。。。
かと思ったら変なヒッピーからは一発でつながるし、こんなん笑わせる気か!
まあ3巻も出たら買うだろうけど。 -
3.5