チョコレートコスモス

著者 :
  • 毎日新聞社
3.77
  • (438)
  • (523)
  • (678)
  • (59)
  • (12)
本棚登録 : 3231
感想 : 574
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (516ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620107004

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 題名からは想像できませんが、これは演劇のお話です。
    しかも第0回のような、始まりの前の始まりの物語。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    演劇一家に生まれた東響子は、自然と演劇の世界へ足を踏み入れ、キャリアを積んできた。
    求められるままに演じてきた響子だったが、本当にそれでいいのかという壁に、今まさにぶち当たっている。

    一方、とある演劇集団にひょっこりと顔を出し入団を希望した謎の少女・佐々木飛鳥。
    彼女の演技にほんろうされる周囲…はたして彼女は天才か、それとも…。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    読み終えて、「ガラスの仮面」を小説にできるのは、恩田陸さんしかいない…!と思いました。
    東響子は姫川亜弓、佐々木飛鳥は北島マヤ、芹澤は月影千草のようでした。

    演劇という表現を文章でこんなにも鮮やかに書けるものなのだなとびっくりしました。
    恩田陸さんの「蜂蜜と遠雷」は未読ですが、「チョコレートコスモス」を読んだことで、ピアニストの世界をえがいた(らしい)「蜂蜜と遠雷」が話題になっているのも、大納得です。

    このように恩田陸さんの表現力は太鼓判!ではありますが、「チョコレートコスモス」を☆3つにしたのには3つの理由があります。

    ・タイトルの「チョコレートコスモス」の意味は文中に出てくるものの、物語との親和性がいまひとつに感じられたこと。
    ・登場人物が多く、バラバラに各登場人物たちが出てくるため、誰が主人公かわかりにくく、全員が絡み合うまでにかなりのページ数がかかること。
    ・このお話自体が長いプロローグのような感じで、この先の長編もありうる空気感のまま、読者の手にゆだねられてしまうこと。

    しかしそれでもなお、演劇シーンの読み応えは抜群!
    「ガラスの仮面」を先に読んでいたことで、その文章から場面を想像しやすく、もっと先が読んでみたくなるお話でした。

  • 芝居のオーディションを通じて、役者たちの葛藤や、演技力のすごさを描いたストーリー。演劇や舞台が好きな人にはたまらなく魅力的だと思う。

    演劇を始めたばかりなのに、台本や人の演じる姿を見て、すぐさま自分なりの解釈をして、自然に演じ、見ている者を釘付けにしてしまう飛鳥と、役者一家の中で育ち、若くして才能も人気もありながら、自分も出たいと思っていた監督のオーディションに、周りの役者は呼ばれたのに、自分は対象になってないことで、悶々とする響子。
    最終的には、二人がオーディションで共演し、共に役を演じ、高みを目指したいと改めて決意する。

    役者になるような人には自意識の強い人が多いであろうに、オーディションなどである意味、優劣が明確になったり、観客の評判などで客観的に自分の評価を目にせざるを得なかったり、かなり覚悟のいる厳しい世界なんだと改めて感じた。
    全力で取り組む分、達成感も大きいんだろうけど。

  • 旗揚げもしていない無名の学生劇団に、ひとりの少女が入団した。
    舞台経験などひとつもない彼女だったが、
    その天才的な演技は、次第に周囲を圧倒してゆく。

    天才というのは圧倒的だ。
    説明や理屈なくただただ圧倒的。

    面白かったぁ。

    オーディションの先にある毎日の生の舞台には
    どんなことが待っているんだろう。

    どんなことが起こるんだろうと思うと
    この続きを読んでみたいなぁ。

    「ガラスの仮面」のオマージュだそうです。
    ほんとに何十年も前に読んだ「ガラスの仮面」を思い出した。
    そうだよぉ、友達に借りたんだぁ。
    月影先生が怖くてさぁ。すぐに白目になるからさ(笑)
    北島マヤね、そうそう、面白かった。
    まだ、終わってないんだよねぇ。

  • 蜜蜂と遠雷のお芝居版という感じ。
    舞台や演劇のベース知識がもっとあればのめり込んだ気がする。
    お芝居の申し子、響子と飛鳥。あるオーディションでふたりは芝居の極地にたどり着く。

    人は誰しも何かに秀でた才能-それがスポーツなのか芸術なのかタレント性なのかわからないけど-を持ってて、それがぴったりはまる環境にいれたかどうかなんじゃないかって思う。天才や才能と凡人の努力との違いってこの本のラストにあったような境地に気づけるかどうかなのかな、と思った。
    努力で比肩はできるけどエネルギーは必要。

  • 脚本家の神谷、学生劇団員の巽、売れっ子女優の響子、それぞれ芝居に熱中する3人に違う形で居合わせる、特殊な才能を発揮する佐々木飛鳥。
    思いつかない演出を自然にやってのけ、演じる人にのめり込むその才能は周りを驚かせる。
    いくら秀でた才能を持つ人でも、悩みや克服すべきところを抱えており、日々考え、精進していることを思い知った。
    逆に言えば、その努力を惜しまない人ほど、その世界で力を発揮できるのだ。生まれもった才能をいかに磨くかでその人の力量が左右される。

  • 演劇に携わった事がある身としては、本当にこんな世界にたどり着けたら凄いと思った。
    内容は舞台構成、セリフなど、イメージしづらい箇所が多々あるが、キャラクターの情熱や想いの強さ、汗、いろんなものが一度に襲いかかってくる話。
    読み終わった今もドキドキしている。が、きっと今後の印象にはあまり残らないだろうなぁ…
    読了感だけとても良い!

  • 実際の舞台俳優さんでもこういう境地に達する人がいるんだろうか、、。
    佐々木飛鳥が出来すぎていて完全にはのめり込めず、常に物語の世界から一歩引いて読んでいる感覚だった。
    後半のオーディションのシーン、女優それぞれの演技スタイルの違いと魅力を細かく表現できるのはすごい。

  • 飛鳥のように、自我がなくただ知りたいという興味と追求から演じる天才。p.230-231のなぜ自分は他人ではないのか。なぜ他人にはなれないのか。なぜ一人の人は一つの一貫した人格であり続けるのか。人とは違う視点で生きてきた彼女の今後の成長が気になる終わり方でした。

  • 舞台や演劇に縁のない私でも、息遣いが感じられるような作品でした。

  • 実写化希望

著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

恩田陸の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×