家族の哲学

著者 :
  • 毎日新聞出版
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620323220

作品紹介・あらすじ

生まれた家族がよかっただの悪かっただの、いったい何を言ってるのか。住まいや国のあり方を問い続ける、『独立国家のつくりかた』の俊英が辿り着いた、"家の族"であることの意味。生き延びるための家族小説。

感想・レビュー・書評

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  • 恭平は躁鬱病の鬱状態にいる。体中に染みこむ「無意味」という感覚、自己否定の声。
    奥さんのフ―は命の恩人。二人の子どもは命の淵から引っ張り出してくれる風神・雷神。
    家族は恭平にとっての救命隊員。
    家族は種の存続のためにあるわけではない。

    ---------------------------------------

    死にたい気持ちになっている現在、幼い頃や高校生の時に入院した記憶、自身の両親との関係、色んな想いが恭平の頭のなかを駆け巡り続ける。とてもとても辛そうで、本当に死んでしまったほうが楽なのでは、とすら思えた。
    ありきたりな表現だけど、明けない夜はない。鬱状態から抜け出す日が来る。

    常に優しく、けれど決して同調しないフーさんの態度が素敵だった。自分もこういう人でありたい。

    この話は坂口さんの実体験を元にしているのかな。
    世界のすべてから否定されているような絶望感から一転、家族に幸福の笑顔を向ける恭平。世界を肯定し、世界から肯定されたみたいだった。
    プラスマイナスゼロだとしても振り幅がすごい。躁鬱病ってつらいな。

  • 好き

  • 作者が自分とは全く異なる妻に慄きながら、鬱状態から這い出ようとひたすらもがく様は痛々しかった。一見普通の妻の強い精神、夫に対するまっすぐな信頼、無邪気な子どもとのなにげない行動で少しづつ変化していく作者。あんなにも才能ある人のもう一つの負の一面。夫婦とは本当に両者のバランスなのだ。

  • 体験と考え方がひたすら書いてあるけど、難しすぎるというか、正直興味がない。なにか発見があるかもしれないと思ってがんばって読んでたけど、途中で飽きた。

  • 2019年4月14日に紹介されました!

  • 文学

  • 躁鬱病を患う著者とその家族の物語。
    動じることなく受け入れてくれる妻の存在があるからこそ、書斎に籠り、鬱状態になる事ができるんだと思った。子供二人の存在も、鬱から抜け出すきっかけとなるアプローチをしている。

  • 聞き流す。それは無視することではない。
    聞き流す。それは意味ではなく、音楽として受けるということだ。
    聞き流すという行為には、積極性がまったくない。判断せず、決断せず、ただ受け入れるのみだ。

    P.214

  • 初めてこの著者の本を読んだ。家族という共同体について悶々と考えていた時に読んでしまったもんで、震えた。心の奥底にあった感情を思い出したような感覚だった。ビックリしたな。自分にとって大切な一冊。

  • 繰り返し死の衝動に襲われる男。

    辛い、と人が言いだすとき、親身になって助ける必要はない。〜聞き流す。それは無視することではない。

    聞き流す。それは意味ではなく、音楽として受けとるということだ。聞き流すという行為には、積極性がまったくない。判断せず、決断せず、ただ受け入れるのみだ。

  • エッセイととらえるべきか、小説ととらえるべきか。
    何が足りないかわからないが、好きな作品というには紙一重な感じ。

  • 「独立国家の作り方」から3冊目の坂口本。今までで一番明瞭な語り口でスピーディに読み終えた。鬱症状で死にそうな筆者をフーの無関心な優しさとアオとゲンの存在が救う。躁鬱は才能だと豪語する坂口だが、彼のその自由な生き様は家族がいてこそのものだと感じさせる。少なくとも、死にそうな時に死なせてくれない人がいるのは心強いものだと。生々しい性描写も、子供の頃の嫌な思い出も、すべてリアルな家族の肖像。目をそらしてはならない本だ。

  • よくわかりません!!
    躁鬱や解離性や双極性障害などの
    著者の日常や家族とのかかわりが書かれてあるの
    だと思いますが。理解できないので、なんとも感想を
    述べるのは非常に難しいのですが。
    私個人的にはあまり共感はできませんでした。

  • p57
    毎年季節がめぐってくるとかならず咲く野花のようにひっそりとしていたが、ちゃんと地に足をつけて生きている。

    p181
    調子が悪いときはゆっくり寝ること。
    物事は、引き延ばせるだけ引き延ばして、また調子が戻ってから、再考し、決断すること。

    p213
    変化は他社の変化を呼び起こしてしまう。しかし、人間は変化ほど面倒くさいものはないと心底思っている。
    絶望は絶望と見せかけて、体を停止させ、その間に、新しいからだの動きを知覚した細胞たちが、ひっそりと身を隠しながら、訓練をし、改良を重ねるという時間なのだ。整備中なのだ。パソコンで言えばインストール中だ。インストール中にキーボードをぱちぱち打ち込む人間がどこにいる?

    p214
    辛い、と人が言いだすとき、親身になって助ける必要はない。ここにいるフーが一番参考になるかもしれない。この女はすべてを聞き流している。聞き流す、それは無視することではない。

    p241
    それが自分なのだし、それ以外にはありえないし、それだからこその機能があるはずだと思えている。

  • 形のないまま読み始め、読み終わっても形がない。自慰的といえば、それまでかもしれない。死と隣り合わせの苦しみの中にあるようなのに、私には幸福にみえる。意味や目的なしには何もしてはいけないような気になることがあるが、ただする。いいと書いてくれてありがたい。新しい人間、新しい家族というのはなんだか胡散臭いけれど、今までとは違うよくわからないものが出てくるのは確かだ。

  • これまでの著書が氏のアイデアや実践している事を示すような内容だったのに対し今回は家族小説的な内容。家族との関わりの中で起こる双極性障害の谷と山の体験が描写されている

  • 著者自ら鬱状態の絶望を客観的に記すルポのような小説。鬱の苦しみにもがき苦しむ著者とそれを支える家族の姿。鬱状態の自分と躁状態の自分を第三者的に捉える章は揺れ動く命の行き先を案じ、緊張感が漲ってくる。永遠に生と死を模索するのが人生なのだろう。

  • 「生まれた家族がよかっただの悪かっただの、いったい何を言ってるのか」
    住まいや国のあり方を問い続ける、『独立国家のつくりかた』の俊英が辿り着いた、〈家の族〉であることの意味。生き延びるための家族小説。

  • さっきもつぶやいたがツイートで流れてきたので気になって本屋で手に取ってみたら「生き延びるための家族小説」とあったので、あ~これは読んでおかないとと思い購入。
    すごい内容だった。
    ここまで自分をさらけ出せるのってたいしたもんだと思う。
    そして「書く」という行為に対する作者の姿勢に少し共感したのでありました。
    だが、しかし。
    俺の抱えている家族というか現状の問題を解決するものではなかった。
    作者はパートナーに恵まれた感がものすごくある。
    俺も家族と向き合わないとなと思いつつ10年近く経ってしまっているが、もう諦めたところもあるしな。
    それ以上に問題がひとつあるし。
    明日までに解決するか否か。
    俺も作者の叔父さんの様に蒸発してしまうかもしれん。
    っといつもの読書感想とは違った方向に行ってしまったな。

    さて坂口さんはこれを読むのだろうと予測してるが、僕は生き延びれますかね?

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著者プロフィール

1978年、熊本県生まれ。料理家、作家、建築家、音楽家、画家。2001年、
早稲田大学理工学部建築学科卒業。2004年、路上生活者の住居を収めた写真
集『0円ハウス』を刊行。2008年、それを元にした『TOKYO 0円ハウス 0円生
活』で文筆家デビュー。2014年『徘徊タクシー』で三島由紀夫賞候補、『幻
年時代』で第35回熊日出版文化賞、2016年『家族の哲学』で第57回熊日文学
賞を受賞。著書に『cook』『自分の薬をつくる』『お金の学校』『ゼロから
始める都市型狩猟採集生活』『現実宿り』『よみぐすり』など。

「2022年 『中学生のためのテストの段取り講座』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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