世界少子化考 子供が増えれば幸せなのか

  • 毎日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620327389

作品紹介・あらすじ

少子化が進む韓国、中国。少子化と無縁なイスラエル、支援の充実で少子化を防ぐヨーロッパ諸国…。記者たちの徹底ルポで世界の少子化の現状と日本の行く末を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 日本ではなく各国の少子化対策を取り上げている本。取り組みが比較的うまくいっている国も取り上げているがそもそも少子化が是か非という根本的な点にまで及んでいる。
    イスラエルの人で初めはこのくらいの人数で良かったけどもっと子どもを持ちたくなったという様なコメントがあったが本書の指摘通り国の経済力もあるが皆で見るコミュニティの力が大きいと思われる。
    中国の一人っ子政策は結局終了したが歪が少子化に拍車をかけているのは否めない。国家の指針が数十年後に影響を及ぼすところは普通に怖い。

  • 韓国は就職不安 お金
    中国は結婚のお金、教育費
    フランスは産む自由を拡大するために
    国力の強化の理論がリプロダクティブライツの論理。

    子供はどうか生きるかを学ぶことが必要。実務的な内容は必要が出てからでも良い。学び続ける習慣と新しいことを学ぶ抵抗感がないことが大切。

    先が見えない時代で周りと同じことをしている危険性。そういう意味で自由を認めていく必要がある。

    ハンガリーはお金で支援。
    フィンランドは女性進出が進むが出生率は低下。

    格差が少ないと子どもへ競争意識から良い機会を提供しようとの投資が増える。

    日本の少子化の要因は未婚化が9割、少子化は1割。

    子育ては親の責任か、社会の責任か。

  • 各国の少子化対策を中立にまとめていて非常にわかりやすい。
    各国の子育てに関するリアルな生活、文化や背景なども書かれていた。
    大変な良書です。

  • 世界各国の少子化に対する視点を知ることができる。
    少子化とは本当にダメなことなのかを問う。

  • 世界7ヵ国(日本の分析も含めれば8ヵ国)の少子化の現状や対策等を書いた本でその国の社会的な背景や政策が比較できて面白い。
    韓国や中国はその生きづらさから子どもを産み控えることが定着している。一部の日本の若者のように地方でのんびり生きることを目指すというのもまだあまり浸透していない模様(本書における韓国の地方自治体の事例や中国では寝そべり族という言葉があるものの)。

    しかし「少子化」という言葉もGDPと同じく、あまりにも国家主義的すぎるのでいい加減使うのをやめるべきだと個人的にはずっと思っている。最後のpopulation mattersの活動は興味深い。ディープエコロジーよりも結構マイルドな印象で、ディープエコロジーが思想だけでなく、現実的な活動になった感じがある。人口減、生きづらさが進む東アジアの国だからこそこうした考えと結びついて人口減をポジティブに考えるべきだと思うが、欧州と比較すると国家主義、家父長制の強さから一部の個人レベルはともかく、なかなか社会的には広がってない。

  • 韓国
    大卒の就職率は6割、大学はSKY出身者がステータス。TOEIC800点以上、文系なら900点以上、国家試験に通ることが必須。日本以上の競争社会。
    大統領の権限が強いが再任はなく任期5年。短期的な成果を求める。
    日韓では就職するまでが子育て。欧米より長い。

    中国
    一人っ子政策が生んだ男女人口比のひずみ。大学入学には科挙に似た高考が必要。学習塾を規制した。一人っ子政策は少子化を早めた。出産適齢期の女性の減少。
    政治はエリート政治=民主主義の利害調整メカニズムはない。全体としては正しい選択ができる。迅速性がある。利害調整は矛盾の解消は問題t。

    フランス
    支援と個人の選択の保障が原動力。単身のまま子供を持つ選択ができる。連帯市民協約(パクス)と呼ばれる事実婚制度はもともとは同性間のための制度だった。

    イスラエル
    合計特殊出生率は3.01。助け合う大家族制度。子供が多いほど家屋は幸せ、モラルが高いとされる。経済発展と楽観思考で人口増。人口増が好景気を生む。好循環が生まれている。もともとユダヤ教では子供を増やすことは神の命令。
    日本では母親に子育ての重圧がかかるが、イスラエルでは親族や社会で子育てをする。

    ハンガリー
    国家予算の5%を少子化対策につぎ込む。非自由民主主義(ロシアやシンガポールと同じ道)。出産ローンは3人目を生むと返済免除。子供が多いほど生涯免税。

    世界では少子化ではない。人口増は環境悪を生む。

    フィンランド
    近年は出生率が減少。男女格差が少なくなると出生率が上がるはずだが。子供を欲しがらない人が多い。文化や価値観の変化。
    チャイルドフリー協会=子供を持たずに人生を生きようとする人々の教会。
    家族は運命共同体ではなく、自己実現を目座す個人の集まり。運命共同体としていざという時の支えは必要ない。

    イギリス
    人口減による労働力不足は最新技術で補う。

    日本の高度成長期の人口ボーナスは1.3%しかない。残りは生産性の向上によるもの。
    人口減少でもGDPは減らない。日本の人口は世界ではまだまだ多い。
    代わりにペット産業が子育て本能を満たしている。

  • 東2法経図・6F開架:334.3A/Ma31s//K

  • ■書名

    書名:世界少子化考 子供が増えれば幸せなのか
    著者:毎日新聞取材班 (著)

    ■感想

    TOPPOINTで読了。
    少子化問題について考察した一冊です。

    この本でも言及されていますが、結局、「少子化が問題だ!」って物凄く短絡的
    な発想だと思います。
    確かに問題な面も多くあるのですが、どの視点で見るかで問題なのか、そうでないのか?
    という部分が多々あります。
    時代や世界情勢、日本国内の状況、価値観の変化など様々な要素が絡み合って
    少子化が起きているわけです。
    この要因が全て「悪」であれば少子化も「悪」となりますが、要因が全部「悪」
    で無いのであれば、少子化が単純に「悪」とはならないはずです。

    別に少子化に限った話ではないですが、全ての事項において「そうなった原因は何で
    その原因はそもそも何で起きているのか?」を考えないと、根本的な解決にはなら
    ならないでしょうね。

    そもそも、少子化を問題とする人たちって、少子化解消して何がしたいのか
    よくわからないし。
    何のために少子化を解消したいのか?
    これも大事な視点です。

    問題が複雑に絡み合ってるからい一筋縄ではいかない問題で、恐らく全員が納得する
    答えは無いが正しくて、そこを強引に引っ張っていける政治家が必要というのが
    今の日本なんだと思います。
    まあ、そんな人いないんだけど。

    いつまで暗い時代が続くのやら。

  • 少子化を人口政策的な観点から見ると、「子供が増えれば幸せなのか」というそもそもの問いが抜け落ちてしまうのかもしれない。世界各地の事情を知る読み物としても面白いが、当事者たちへの取材を読みながら、「子どもを産み育てることにまつわる幸せとは…」という問いに立ち返れたように思う。

    子どもを産み育てるのが難しい状況を、「個人の自由が阻害されている」と捉えなおし、少子化対策を「個人の自由の保障」だと定義しても良いのかもしれない。労働力不足や社会保障制度の維持、市場の縮小、税収減…など少子化により想定される問題は山積み…。でも、子どもの数を増やすことが唯一の解ではないというのは念頭に置こうと思った。少子化により環境負荷が低くなるなどのメリットもあるというのは目から鱗。国による違いを見ながら、家族領域に政府がどこまで立ち入っても良いと思うかの許容度もまた異なるのだろうと思った。

    ・理想化されがちなフィンランドでも出生率が下がってきていて、その背景に「チャイルドフリー」という思想がある。
    ・ハンガリーの子育て世帯への積極的な住宅政策がかえって住居費水準を上げてしまうというのは、日本のパワーカップルが不動産高騰の一因と言われているのに似ているなぁ。
    ・卵子凍結は…どこまで公費で認められるのか見解がわかれそう。
    ・イスラエルのように家族や親族のネットワークで支え合う…というのに日本は戻れなさそう。
    ・中韓の状況は日本に似ていると思ったが、競争社会に全員が巻き込まれているのか?マイルドヤンキー的な存在は?

    取材班の入社年次を見ると、もしかしたらご本人たちも子育て世代なのかもしれない。熱量を感じた。どの国の話も興味深いが、世界各国に拠点がある中でなぜこの7か国を選んだのか、編集会議の議論も聞いてみたいと思った。

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著者プロフィール

2018年夏、毎日新聞東京本社編集編成局社会部の遊軍担当だった奥山はるな、堀智行、デスクを担当した篠原成行の3人を中心に構成。メンバーは、いずれも外国人や子ども、教育を取り巻く問題に関心があり、それぞれ取材を続けてきた。本書のベースとなり、毎日新聞の紙面で掲載しているキャンペーン報道「にほんでいきる」は、取材班が執筆した。

「2020年 『にほんでいきる 外国からきた子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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