史上最悪のインフルエンザーー忘れられたパンデミック【新装版】

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622074526

作品紹介・あらすじ

著者クロスビーは本書で、世界情勢と流行拡大の関連のようなマクロな事象から一兵卒の病床の様子まで、1918年のパンデミックの記録を丹念に掘り起こしている。改めて史上最悪のインフルエンザの記憶をたどり、社会あるいは個人レベルの危機管理の問題点を洗い直すうえで必備の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • スペインかぜの記録。コロナ禍のはるか以前に書かれたものだがマスクをかけていないものへの風当たりのつよさや予防効果(実際、マスクの着用率が下がるとスペインかぜも流行し、着用率があがると感染率は下がった)とか、マスクへの投機でも受けようとするもののため高騰したことなど、今回の騒動と重なるところも多い。

    ・肺炎で死亡したものの肺から多数検出された桿菌が原因菌であるとの誤認もあった。現在でもインフルエンザ桿菌として名を残している。当時でもインフルエンザは細菌よりも小さい物質によって起こるのではないかと考えられていたが、インフルエンザ桿菌の出す毒素によるものだという説が唱えられていた。

    ・死者は2000万とも5000万とも言われ、諸説あるようだが、コロナによる死者300万とはやはり桁違い。

    ・インフルエンザのパンデミックは30-40年の周期でくりかえされてきた。ブタなどの宿主のなかにじっと潜みながら、次のパンデミックの機会を伺っているのだろう。

  • 本を読むには、読者一人ひとりにとって読み頃という時期があると考えているが、本書を手に取ったのは、正にコロナを意識しているためであった。

    スパニッシュ・インフルエンザと呼ばれたインフルエンザが第一次世界大戦の最中に世界中を席巻し、多大な被害を出したという程度の知識はあったが、本書の原題に"FORGOTTEN PANDEMIC"とあるように、それはなぜか、他の伝染病とは異なり、世の中にあまり記憶に止められることなくきてしまった。

    本書は、主としてアメリカにフォーカスを当てて、その発生から終息に至る状況を、マクロの統計、都市の対策とその効果の程、本来最も健康である青年層に大きな被害が出たこと、戦場や戦線に向かう輸送船における厳しい状況等を、非常にビィビィッドに紹介してくれる。

    今般のコロナに対したところから本書を読むと、100年前にも同じような反応や失敗があったと頷かれるようなことが随所に出てきており、大変参考になる。

    本筋ではないかもしれないが、敗戦国ドイツに対する取扱いを巡る最後の最後の段階で、ウィルソン大統領がインフルエンザの影響で体調面に問題があったことは、ヤルタ会談の際のルーズベルト大統領の件と同じような話であり、歴史に大きな影響を及ぼす可能性があることに感慨を覚えた。

    今の時代に、正に読んでほしい一冊である。

  • 政治、経済面からの対応の遅れ。
    人びとの不合理な行動。
    科学の誤謬。

    100年以上前でも同じことを繰り返している我ら。カミュが『ペスト』でいうように今度のコロナを「忘れないこと」が大切なのだ。

  • 1918年のスペイン風邪とはよく耳にするが、不思議なことに実態を説明した本は極めて少ない。そういった意味で本書は非常に貴重である。
    インフルエンザの致死率は2%程度とそれほど高いとは言えないが、感染者が多いためにその犠牲者の数は膨大なものとなる。どう考えたとしても、対処方法が非常に難しい。

  • 三葛館医学 493.87||CR

    和医大図書館ではココ → http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=53055

  • [ 内容 ]
    少なく見積もっても2500万人以上の死者を出したといわれる、1918‐1919年のインフルエンザ(通称「スペインかぜ」)。
    本書は社会・政治・医学史にまたがるこの史上最大規模の疫禍の全貌を初めて明らかにした感染症学・疫病史研究の必読書であり、アメリカでは1976年から現在まで版を重ね続けている。
    この中で著者は、世界情勢と流行拡大の関連のようなマクロな事象から一兵卒の病床の様子まで、当時の記録を丹念に掘り起こす。
    特に大都市での流行(第六章、第七章に詳説)が「グランギニョール的カオス」に至る様は、読者のこの病への畏怖を新たにさせずにはいられない。
    しかしインフルエンザの真の恐ろしさは、罹患者数の莫大さによって実はけっして少なくない死者数が覆い隠され、「みんなが罹り誰も死なない」病として軽んじられることにあると著者は警告する。
    もしウイルスが例年以上に感染力や毒性の激烈なものへと悪性化したら?実際、インフルエンザのパンデミック(汎世界的大流行)は大震災に似て、人類の歴史上数十年の間隔を置いて繰り返しているという。
    来るべきパンデミックに備え、改めて史上最悪のインフルエンザの記憶をたどり、社会あるいは個人レベルの危機管理の問題点を洗い直すために本書は欠かせない。

    [ 目次 ]
    第1部 スパニッシュ・インフルエンザ序論(大いなる影)
    第2部 スパニッシュ・インフルエンザ第一波―1918年春・夏(インフルエンザウイルスの進撃;3か所同時感染爆発―アフリカ、ヨーロッパ、そしてアメリカ)
    第3部 第二波および第三波(注目しはじめたアメリカ;スパニッシュ・インフルエンザ、合衆国全土を席巻 ほか)
    第4部 測定、研究、結論、そして混乱(統計、定義、憶測;サモアとアラスカ ほか)
    第5部 結び(人の記憶というもの―その奇妙さについて)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 第1部 スパニッシュ・インフルエンザ序論
    第2部 スパニッシュ・インフルエンザ第一波
    第3部 第二波および第三波
    第4部 測定、研究、結論、そして混乱
    第5部 結び

  • 再読。2013年に読んでいるみたいだけど、分厚い本で、当時は持て余している。新型コロナで世界中が右往左往している中で読み返したら、印象は全然違った。

    ちょうど百年前、1918年に始まり、世界を席巻したスペイン風邪のパンデミック。全世界での犠牲者は最低2100万人。パンデミックはどのくらい続き、どのように終わったのか。参考になるだろうと思うが、TV報道でスペイン風邪のパンデミックに触れたのを見たことがない。

    「スパニッシュ・インフルエンザ」のアメリカで流行が始まったのは1918年夏。翌年春先まで一番ひどい時期が続き、その後は散発的に感染者数が増える第二波、第三波が来るが、1920年には大方落ち着いたようだ。とすると最悪の第一波は約半年、落ち着くまでに2年という感じなのだろうか? 
    今回の新型コロナの流行が始まって一年。死者の数はずっと高止まりし、この冬の第二波、第三波は第一波より被害が大きい。医療は比べものにならないくらい進歩しているはずなのに、この違いはどこから来るのだろう? スペイン風邪と新型コロナの病原性の違い? 人口密度や人の移動が当時よりずっと大きいから?

    アメリカの事情に限定されていて、世界の事情がよくわからない。あとがきによると、日本では当時の人口5500万人のうち、2350万が罹患し、38万5000人の犠牲者を出したという。
    パンデミックが収まった理由もよくわからない。ワクチン? 社会的免疫? ウイルスの弱毒化? 調べようがないのだろうか?

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