- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622076537
感想・レビュー・書評
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アマゾンの奥地で現実に知性は野性に完敗し、負け惜しみでも理想論でもなく、幸福とは物質的な豊かさではなく、自分という存在に満足できるかだと教えられる。
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人口約400人のアマゾン奥地の少数民族ピダハンの文化、生活、言語を紹介する学術的エッセイであり、民族誌でもある本。
この本が特に注目されているのは、彼らが使用するピダハン語が、他の先住民の言語とも構造が隔絶しており、また、外部の言語を扱える人間がいない言語だったため。著者は事前に学んだ言語学調査法を使い、現地でゼロからピダハン語を採集し、何年も彼らと一緒に暮らし、分析し、学んでいく。
著者が最初に気づいたピダハン語の大きな特徴が言語学で言う「交換的言語使用」、いわゆるあいさつ言葉が無いこと。ピダハンの文化では、言葉で人間関係を維持したり、対話の相手を認めたり、和ませたりすることはせず、代わりに親切な行為などで形で表される。ピダハン語には、他にも多くの言語に見られる要素が欠けている。例えば比較級が無い。色も無い。「赤」を言い表す場合は「あれは血みたいだ」とか、「緑」の場合は「まだ熟していない」と言った説明的な表現をすることになる。また、ピダハンは数を数えたり、計算をすることもない。
そもそもピダハン語には数がない。当初著者は、他の原始的部族がやるように、ピダハンも1、2、たくさんといった数え方をするものと考えるが、「2」を表すと思っていた単語を、一匹の魚を示すのにも使っていることに気づき、彼らには相対的な量しかないらしいことに思い至る。その後著者は、何人もの心理学者と協力し、さまざまな実験を行い、ピダハンには数がなく、計算の体系もないと結論付けて公表した。
さらに著者は、こうしたピダハン文化の不思議な特徴、ピダハンの価値観を理解する鍵となる「イビピーオ」という単語に出会うことになる。イビピーオは英語その他の言語には対応する語が見つからないことばで、人や物が消えたり、現れたりする場合に使われることが判明し、著者はその概念を経験識閾と名付けた。これは知覚の範囲にちょうど入ってくる、またはそこから出ていくという行為のこと、つまり経験の境界線上にあるということで、著者の大きな発見というのは、彼らが話すことがらは、自分で実際に目撃したか、目撃した人間から聞いたことに限定することだった。
ピダハン語には単純な現在形、過去形、未来形はあっても、発話時と直接関係がない完了形や埋め込み文は存在しない。
そしてピダハンには歴史や創世神話、口承の民話がない。神も無い。ピダハンは精霊は日常的に見て信じているが、それは目に見えない存在ではなく、自然の中に実在するものの形、つまりジャガーや木を精霊と呼んでいる。
ピダハンは発達心理学で言う、形式的操作が出来ていない民族と考えた方がいいのかもしれない。形式的操作ができないため、抽象化された数や色、左右などの概念が無く、またラカンが言う大文字の「他者」である言語も存在しないのではないだろうか?こうした観点から考えると、ピダハン語とその文化の研究はヨーロッパ文明を分析するのに非常に有効な鍵になりそうに思える。 -
言語学を専攻して一番身にしみるのは、いかに自分の価値観を押し付けてものを考えているかということ。ピダハンが優れているとか劣っているということではなく、お互いの違いの中から何を得るかが求められる。
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ピダハンは素晴らしい!
この本は、キリスト教の伝道師であり言語学者の30年にわたるピダハンの人たちの研究についてかかれている。
言語学の視点で書いてある部分が多く多少読みづらい点はあるけれど、素晴らしいピダハンの文化がよくわかる。
ピダハンはブラジル・アマゾンの奥地に点在する少数民族。
ピダハン語には直接体験の原則がある。
話し手は実際に体験した事しか話さないという事。
例えば、伝聞による昔話や神話などは存在しない。
本人が体験した事でないと信じないのである。
ピダハンには村の長・族長のような人物はいない。
誰かが村を取りまとめるという事は必要ない。
ピダハンの子どもは乳離れした時から大人と同じ様に自分で食べていかなくてはならない。
ピダハンは狩りや漁をしたらすぐに食べきってしまう。
毎日は食べない。
ピダハンは夜にまとまった睡眠を取らない。
ピダハンは外の世界の知識や習慣を取り入れない。
ピダハンはピダハンの暮らしを気に入っているし、それ以外の世界には興味が無い。
ピダハンは将来に備えない。今を生きている。
他にも素晴らしい点がたくさんある。
私はピダハンになりたい。 -
東部市民センター
言語学 民俗学 民族学 -
言語のところは興味なかったから飛ばして読んだ。面白かった。
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著者はアマゾンへキリスト教の伝道のためわたり、現地語で聖書を翻訳するために言葉の研究を進める。物事の捉え方、概念、価値観、暮らし方がことごとく西洋のものと違い、当然のように言葉を構成する単語や文法も違う。違いすぎて混乱し、意味を掴んで納得するプロセスがユーモラスな体験談とともに描かれている。自分が今信じていること、良いと思うことは何を根拠にしているのか、考え直したくなる。世界は広い。
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面白かった。学術的なこともそんなには多くない。
言語と文化などについて、考えさせられた。
世界で一番幸せな、絶滅危惧種の人々。 -
ダニエル・エヴェレットは26歳の時にブラジルの先住民ピダハンのもとへ行き、「30年以上にわたってピダハンと共に暮らし、学んだ」。目的は言語学研究にあったが、彼は伝道師として赴いた。ピダハンでは麻疹(はしか)が流行したため、1950年代から伝道師を受け入れるようになった。
http://sessendo.blogspot.jp/2015/03/l.html