冒険歌手 珍・世界最悪の旅

著者 :
  • 山と渓谷社
4.07
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635886246

感想・レビュー・書評

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  • 早稲田大学探検隊OBの華々しい活躍を見るに、別世界の話だなあと思いながら旅行記を楽しんでいたのですが、その別世界に普通の人がガッツだけで飛び込んだらどうなるかを描いた本です。タイトルと写真だけでは伝わりきれない、この本の独特の魅力を表す言葉が見つからないのですが、圧巻は旅が終わってからの後日談ですね!
    本文内では、魅力はあれど、わりと人間らしく描かれていた探検隊3人ですが、少し距離を置いてみれば皆さんネジが2本も3本も外れていた素敵な方々なんだなあとわかります。
    元々ネジが外れていたのか、前人未到行き当たりばったりの冒険がネジを外れさせたのか。太平洋も人生も波乱万丈にさせてしまった3人の生き様がたまらなく楽しい1冊でした。
    元気になります!

  • 開いて3ページ目には探検隊の一員になっていて、気がつくともう出航。日本で生活する身には想像を絶する話がこれでもかこれでもかと出てくる。一気読みしたけれど脳みそがいろんな場所に飛びすぎてまだ戻ってきてません。再刊で追加されたエピソードがその混乱を加速させます。あと、世の中どうにかなるんだなと思いました。

  • 家族にも友人にも、そして仕事にも恵まれた環境にあったシンガーソングライターが”人生がひっくり返るような苦労をしてみるのだ!”との思いから応募したのが”日本ニューギニア探検隊2001”
    ヨットの経験も登山の経験もない初心者以前のレベルの著者が応募したのは「ヨットで太平洋を渡り、ニューギニア島の川をボートで遡上し、オセアニア最高峰カルステンツ北壁の新ルートをロック・クライミングで世界初開拓する!」という本格的なもの。
    その珍道中(!?)を描いた”冒険界の奇書”。再刊に合わせて書いた「その後」がまた凄すぎる

  • 元マクロソフト成毛さんが主宰する書評サイトHONZで紹介された『冒険歌手』<http://honz.jp/articles/-/42044>
    これ以上そそる書評に出会ったことがないほどに魅かれる書評。大好きな辺境作家高野秀行さんが解説を書いているというところもさらにそそる。この書評を読んだ後即座にAmazonサイトで購入。

    著者はそれまで冒険とは程遠いアマチュアの山登り程度しかしたことがない、そこそこの成功をしているシンガーソングライター。今まで何の苦労もなく人生を過ごしたことが最大の弱点だと思いこんだ著者が、たまたま本屋で手に取った『山と渓谷』に掲載された募集広告。パプアニューギニアまで小型ヨットで太平洋を縦断し、マンベラモ川をゴムボートで上り、オセアニア最高峰カールステンツの未踏の北壁ルートを初踏破するという内容に「ピーンときて」応募することからいきなり彼女の冒険は始まる。全くの素人の一般女性である著者は、なぜか隊長の目に適い、冒険隊の一人として同行することに。面接の際になぜか「遺書を書きます」と言い放ったというが、本当に命の危険は何度もあっただろう。素人の自分が足を引っ張るのではないかという引け目もずっとあったのではないだろうか。

    本書はその冒険記録なのだが、船酔いでゲロを吐き、ヨットの中でペットボトルで作った尿瓶に小便をし、大便はヨットの後ろからお尻を突き出して海に向けてする、という下事情を女性にも関わらず著者はなんの恥じらいもなく書く。ボートではワニがいる川の中に下半身を突っ込んでそのまま小便を垂れ流す。こういうことを当たり前のように書く。ニューギニアに行っても無茶を繰り返し、入国許可期限を切らすことなど当たり前、元人食い族に会っても大して驚かないようになっている。現地でのガイドの交渉は、高野秀行さんのノンフィクションでもよく見られるようなぼったくりとサボタージュの連続だ。そこで見せる隊長の交渉術がしびれる。かなり危ないことをやっているはずなのに、そんな風に伝わってこないところがまたいい。

    冒険隊は日本出発当初、藤原隊長、ユースケ、コーちゃんの4人だったがコーちゃんはニューギニア到着の前に脱落し、ユースケもニューギニアで当初目標とは違う山を登った上、いきがかりでタスマニア・デビルの探索にふける嫌気が差し途中帰国。つまり帰りは変人偉人である藤原隊長と二人で帰国することになる。外洋航海のヨットでは誰かが常に起きて番をしておかないといけないので、行きに輪をかけてさらに過酷としかいいようがない。元々燃料計が壊れた小型ヨットではいつも座礁の危険を感じながらの航海。隊長との間も怒られてばかりで何ともつらい状況。それでも最後は二人の間に信頼関係でも恋愛関係でもない何かが芽生えているような気がする。

    峠さんは、BS朝日の「鉄道・絶景の旅」の主題歌とナレーションを担当し、カーペンターのものまね、森永製薬の「も・り・な・が」のタイトルコールもやっているらしい。

    冒険後の彼女の人生も何だかとんでもない。特に結婚の下りがもはや理解できない暴走ぶり。元隊員ユースケとの対談で告白しているのだけれど、どうつっこんでいいのか躊躇いぶりが伝わってくる。明確な理由もなく踏み出して後に戻れずに誰にも相談する気配もなく冒険への参加したところから全く理解を越えていたのだが、結婚の下りを読むと、もはやこの人は何らかの誰にも理解できない欠陥をもっているのではないのかと思ってしまう。いやそれは、欠陥と一方的に否定的な言葉で表現をするべきではないものなのかもしれないのだが。

    本の中にも収められているが、高野秀行さんの解説がWEB上で読める。ネタバレがあるので気を付けてほしいが、荒唐無稽感が伝わるんではなかろうか。藤原隊長とユースケのその後も想像を超える驚き。
    http://honz.jp/articles/-/42074

    面白い。お薦め。怪しいけど騙されたと思って読んでほしい。

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    HONZの内藤さんによるインタビューエントリも面白い。本当に映画化してくれないもんだろうか。(2015年12月12日更新)
    http://honz.jp/articles/-/42174

  • タイトル、そして表紙、ここ数年で見た書籍の中ではトップランクに入る怪しさ。

    どうやら峠恵子という名の女性歌手が、ヨットでニューギニア島を目指し、さらに到着後オセアニア最高峰の北壁を初登攀するという話だが、登山もヨットも素人同然らしい。なんだか怪しいというより胡散臭い感じが…

    行きのヨットで経験する強烈な船酔いや不便なトイレ事情、日本を出国する前に早くも隊員1名がリタイアしてしまうというピンチ。そしてニューギニアに着いてからも、ポーターに騙されたり役人にワイロを要求されたり、目的の山にはなかなか登れず、挙句の果てにはもう1名隊員が離脱してしまうなど、スリリングな展開にいつの間にか引き込まれてしまった。

    歌手として成功し仕事仲間にも恵まれていた彼女が、苦労を知らずに育ってきた自分に対し危機感を感じた事が、この旅に挑んだきっかけだったらしい。
    常に隊長から罵声を浴びて、彼女にとっては大変厳しい旅路だったと思うが、逞しくヨットを操縦して日本に帰ってくるシーンには思わず感動してしまった。

    実は離脱した隊員の一人というのが、ノンフィクション作家の角幡唯介氏で巻末の対談にも登場している。冒険から帰国後の後日談も掲載されていて、非常に楽しめる一冊だった。

  • 本編ももちろんの事、対談部分であきらかになる1年余りの冒険から帰ったあとの出来事がもう波瀾万丈すぎ。
    冒険の書であり愛(憎)の物語か。
    BS旅番組ナレーションを「この人が」と想いながら聴くのもよろし。この本が奇書というよりこの作者が奇人(褒めてます)でしょう。

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峠恵子の作品

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