hamanoさんの感想
2012年1月27日
炭素14年代測定法の精緻化により、弥生時代は従来の考え方より500年早く始まることが分かってきた。その意味は、単に始まりが早いことにとどまらず、水田耕作が広がるスピードがかなり遅く、日本列島には異なるタイプの生業をベースとするいくつかの文化が広がっていたことが想定されるのだという。これまでの歴史観がくつがえされていくストーリーは、門外漢でもワクワクした。 よくよく考えると日本が同じ文化の下に置かれたのは、旧石器時代を除くと、明治以降に限られるという指摘も意外な点だった。その多様性が本格化した時代として弥生時代は位置づけられるべきだとする(p214)。ある文化と別の文化の間には「ボカシ」というべき、中間地帯を想定する考え方も興味深い。このあたり、中世・近世史の立場からも一考してみたい点である。 歴史人口学の立場からは、弥生時代の人口増加率を推計したp.200以降の章も気になる章だった。
藤尾慎一郎 1959年、福岡市生まれ。広島大学文学部史学科卒業。九州大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。現在、国立歴史民俗博物館教授。専門は日本考古学。▼単著に、『縄文論争』(講談社選書メチエ)、『弥生変革期の考古学』(同成社)、『〈新〉弥生時代 五〇〇年早かった水田稲作』『弥生文化像の新構築』(ともに吉川弘文館)、『弥生時代の歴史』(講談社現代新書)などがある。 「2021年 『日本の先史時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」