フィンランドを知るための44章 エリア・スタディーズ (エリア・スタディーズ 69)
- 明石書店 (2008年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (369ページ)
- / ISBN・EAN: 9784750328157
作品紹介・あらすじ
工業技術、PISA学力テストで世界有数の水準にまで到達した北欧の国、サンタクロースとトナカイの国、フィンランド。大国ソ連との戦争やわが国日本との交流など、その歴史・政治・教育・文化・風俗、そして現在の姿をつぶさに紹介する。
感想・レビュー・書評
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表とかグラフみたいな視覚的情報がすくなく、やや読みづらい
中盤からは歴史というよりは文化的な話なので、文化なら他の書籍を読んだほうがわかりやすいと思う詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
図書館で借りた。
北欧の一国、フィンランド。しかし北欧の中では「あそこは別だから…」と特殊な扱いをされがちな国。そんなフィンランドを詳しく知るための1冊。定番のエリア・スタディーズシリーズ。
「まえがき」が「総説」と冠されており、本編に入るまでに50頁弱を費やすのが非常に特徴的だった。著者の性格?こだわり?が出ているようだ。
フィンランドという国は新しい。ほんの100年の歴史だ。だが濃密であり、スウェーデンとロシアに挟まれた、まさに地政学的な歴史がしっかりと記されている。
オーランド諸島やサーミといった少数派に言及されているのは、このシリーズらしい良いポイント。また、フィンランド語と合わせてスウェーデン語も国語とされているのがフィンランドの特徴でもある。
シリーズの他の本と比べると、歴史や政治行政の割合が多かった印象。食べ物などは特徴が少ないことで、結果としてそうなっているのかもしれないが、白夜の中での生活など、「フィンランド人の生活」が欲しいかなと欲張りたくなりました。 -
歴史、経済、政治、文化、そして個人に至るまで、フィンランドに纏わるトピックを網羅的に扱っていて、旅行前にインプットするための教材として格好。複数筆者の視点が把握できるのも視点が縛られずに良い。
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日本から飛行機で10時間半余り・・・「森と湖の国フィンランド」は、日本の国土とほぼ同じですが、人口は北海道よりも少ない国です。工業技術や学力テストが世界有数の基準でもあります。歴史や社会、文化、そして日本との関わりなど様々な角度から紹介されています。
フィンランドを理解するならこの1冊! -
デンマーク、エクアドルと読み継いできたこのシリーズ、今回はフィンランド。
13世紀からこの地方は「大公国」としてスウェーデンに統治されており、スウェーデン-ロシア間の紛争の結果1809年からロシア領に。
初めて国という形になり、独立を果たしたのはやっと1917年の事だから、この国は実はまだ100年経っていないのである。
独立後まもなくの第二次大戦中、ソ連が越境侵入し、戦争したがフィンランドが敗北。これはフィンランドが「占領された」形ではなく、領土の一部をソ連に割譲することで折り合いをつけたようだ。
しかし隣にあまり紳士的でない「強国」が常になにやら企んでいるわけだから、冷戦下のフィンランドは大国ソ連との関係に気を遣いながらも、巧みに自らの自治と自由を守り通した、とされる。この辺の事情は敗戦後の日本とちょっと似ているようでちょっと違う。
ソ連崩壊時に大不況に見舞われたが、そこから一気に復活し、社会制度も経済的にもトップレベルの国に成長してのける。これが凄い。フィンランドは土地は広大だが人口は520万人程度で、実は北海道の人口より若干少ないくらいなのだ。
それなのに、特に音楽家などの芸術、科学、テクノロジー分野で国際的に著名な才能を大量に輩出している。そういえばLinuxの生みの親、トーバルズもフィンランド人である。作曲家も優れた人材がたくさんいる。
どうも文化的基盤が並じゃないようだ。福祉の他にも、フィンランドの教育は世界的に注目されている。
日本は徐々に見習うべきだと思うのだが、フィンランドでは検定教科書は廃止し、学習指導要領も地方分権を強く打ち出している。部活動などと言うものは学校のすることではないから、やってない。そして生徒個人の意欲、学習進度に応じて個々に進路が選択されてゆく。
日本人は良くも悪くも「みんな一緒」主義であり、根本的に地方分権がちゃんと成立していない。いつまでも「国内」単位で均一にそろえようとする。集団主義で、傑出した個人の飛躍を好まない傾向も強い。だから日本の文化は「多様性」に欠け、なかなか優れた芸術家やユニークな企業が育ってこない。
フィンランドは他民族社会とまでは言えないが、日本のアイヌに対して北欧には、北部山地の先住遊牧民族、「サーミ」が存在する。彼らの言語や文化は保証されており、どうやら日本におけるアイヌの処遇とは比べものにならないほど、尊重されている。サーミを除くと、フィンランド人は大半がフィンランド語を話すが、ほんの少し、スウェーデン語を話す人びともいる。フィンランドでは両方が公用語として認められている。
オーランド諸島は特別な自治区となっており、テレビ・ラジオも切手も独自につくられている。
苦難の歴史から生まれたフィンランドは民族ロマン主義をアイデンティティのよりどころとしながらも、このような「多様性」を絶えず認めている。そこが日本人との根本的な違いである。多くの日本人はまだ「日本は単一民族」だと思っており、アイヌを無視し続け、渡来して住んでいる白人やアジア人やその2世を「外人」として、いつまでも部外者扱いする。この狭苦しい「同一性」意識、「外部」を決して認めない国民性こそは、子供たちの陰湿きわまりない「いじめ」の原因でもある。
フィンランドの現代音楽は、しばしば調性音楽に向かう傾向がめだつが、それも「多様性」の表れなのかもしれない。ドイツあたりの前衛主義者が背負っている重い「歴史」を、フィンランドの音楽家は抱えていない。彼らはおのれの感性に従って、確かな「音楽性」に支えられながら、自由に多彩な技法を選択することができるのだ。
福祉、教育、音楽に優れ、政治も透明なフィンランドは、デンマークと共に、今や私がもっとも行ってみたい国のひとつである。
私が日本を捨てる日がもし来るなら、出来ることなら北欧に住みたいような気がする。
日本が、少しずつでも北欧的な福祉国家へと近づいていくことを望んでいる。 -
フィンランドは12世紀ごろから実質的にスウェーデンの統治下に置かれている。
ロシアから独立した。
森林以外に主だった天然資源がないから人材育成に注力した。
国家も国費で研究開発を支援している。TEKES(フィンランド技術庁)
1993年にフィンランド通産省がまとめた国家産業戦略ではITを中核とする産業クラスター戦略を明確にした。
フィンランドにはsisu (フィンランド魂)という言葉がある。かつては厳寒の中で勇敢に戦った兵士の形容に使われたが、今日のsisu はいかに知恵と知識で頭を使うかだ。
21世紀の知識社会でも国際競争力を維持するためのsisu の挑戦が続く。 -
歴史、政治、文化などフィンランドを色んな角度から紹介。読みやすいです。
複数の方が寄稿しているのでそれぞれの視点が垣間見え、面白いなと思いました。