警官の紋章 (ハルキ文庫 さ 9-4)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (435ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758434751

感想・レビュー・書評

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  • 道警シリーズ第3弾
    洞爺湖サミットと言う北海道史に残る時代背景。
    第1、第2シリーズで、解決したと思っていた事件には大きな闇が存在していた。それが明らかになって行く過程、そして今回も佐伯、津久井、小島、新宮達の正義感を見せてもらえる。

  • 佐々木譲さん、北海道シリーズ3冊目。警察官であった父親の仇を同じ警察官の子が伐つことを決意する。サミット結団式を利用し、警察官僚を撃ち殺す計画。一方、それを阻止し、官僚の悪事を晴らそうとする佐伯、津久井、小島。彼らのニヒルな性格はとても好感度が高い。しかし、日比野しかり、全体的にキャラ立ちは明確ではなかったかな。なので、少し話が複雑化したのでは?と思う。今回の事件で、北海道警の最悪な1週間が未だ継続しそうで、続きが気になるところ。最後のクレーンの場面がメインであり複雑すぎるシーンで残念だった。

  •  『道警大通署』シリーズ3作目。再読。

          * * * * *

     郡司事件の裏に潜む道警腐敗の深淵がいよいよ明らかになります。

     キャリア官僚を筆頭に出世欲に取り付かれた人間の醜さがこれでもかと描かれていました。フィクションだと信じたいですが、そう信じきれない現実(高級官僚たちの甚だしい不正)があるのも確かです。

     社会派作家の本領がにじみ出た、歯ごたえのある作品だったと思います。

     ただ、宮木や勝野のその後、何より元道警本部長の五十嵐を公判に持ち込む手続きなども含め、「郡司事件3部作」の事後処理まで読ませてくれたら文句なしの☆5つでした。

  • 「シリーズ物」の順番読みの鉄則を破るのもいいもんだ・・ただでさえ、複雑な過去とのしがらみ、人間関係を押しまくる読書。たいていは眠くなるのだが、佐々木物は何時もそうならない。「警察の紋章」が突きつける「警官としての正義」と闘う、対峙するものを見極めたく。

    半ばを過ぎると、アドレナリンが高まり、ぐんぐんその時、その現場」に向かって収斂されて行くのを感じる。
    当作品で最もスポットが当たった若き彼は殆ど声も姿もなく、彼の「持っているであろう熱情」が膨らんでいくのを眺めているに過ぎない読者。関係者の中でも現場にいるもの、上昇したモノ、離脱したモノ、それぞれにある想いと情熱がどう向き合っていくが。。クレーンが降りてくる辺りから吹き上げる焔が白く燃える。

  • 道警シリーズ3作目。警官の失踪、VIPの警護、過去のおとり捜査が同時進行。佐伯・津久井・小島が奔走します。それぞれの事件を通して、警官の紋章を着けた者の「正義」とは何かを突きつけられます。2年前の「郡司事件」の周辺状況との繋がりもまだ明らかにされていません。それだけに道警を揺るがした事件の大きさと根深さがわかります。階層組織の中での価値観のバイアスのかかり方が興味深いです。

  •  笑う警官(「歌う警官」改題)に始まる道警シリーズも三作目となる。常に道警内部の黒い霧に立ち向かう正義派の警察官たちが、まるで不良職員のように片隅の部署に追いやられながらも、それぞれが信念で動き、真相を明るみに出しつつ、結果的に警察機構の浄化機能を果たしてしまう。そんな快作の背景を作り出しているものは、佐々木譲が常々描いてきた『黒頭巾血風録』、『駿女』などに代表される、巨大な権力構造としての悪に対し、戦いを挑んでゆく小さな正義の個たちの姿である。彼らの素顔、そして必ずしもすんなりとは勧善懲悪の解決法を見ない非情なリアリズムが見えるからこそ、佐々木譲の小説は現代的かつ、風土に根ざしたものがあるのだろう。

     北海道北見署の一人の警察官が、過去の事件の真相を聞いたことから、復讐の一途な思いで札幌に向かうことから、本書のダイナミックな疾走感はスタートする。一方で、サミット開催に向けて日本中の警察組織が道内に集結しつつある。2008年の世界的イベントを題材に、これまでの二作を引き継いだ道警の奥の暗闘に決着をつける展開が本書の読みどころである。

     二作目を超えたスケール感、緊迫感が漂うのは、洞爺湖サミットという日本中(北海道中?)を沸かせた独特の同期性ゆえだろう。少なくとも当時、洞爺湖近辺に車を走らせることの多かったぼくは、藪の中に潜んでいる沢山の制服警官の姿や、無線機から発される擦過音のようなノイズを車窓越しに見聞きしたこともあり、普段なら平穏極まりない北海道の大自然の只中に日本中から都道府県警が集合していることの異様な気配に神経がぴりぴりしたものだ。

     逃げた警官を追う者と、過去の二冊の犯罪の裏に潜む巨悪を追う者が、札幌でクロスする。さらに逃げた警官は、過去の事件の真相がトリガーとなった信念を持つ若者として好感が持てる。逃げた警官は銃器を持ち、標的に迫る。阻止しようとするシリーズレギュラー陣たち。映像的でスリリングな展開の冒険小説が久々目の前にあるという感覚が、何よりも嬉しくなる一冊であった。

  • なし

  • 面白かった

  • 「道警シリーズ」でお馴染みの面々が登場する第3弾。
    ファイル対象となっている津久井卓、同じくファイル対象の佐伯宏一、そして小島百合。
    洞爺湖サミットを間近に控え、特別警備結団式に出席するSP対象者を狙っている者がいるとの情報があり、その応援に借り出される小島。
    東京から乗り込んできたSP二人と共に、警護対象である大臣の身を守ることになる。
    拳銃を所持し制服のまま勤務時間中に失踪した警官・日々野の捜索を命じられた津久井は、内部監察のベテラン・長谷川と共に捜査を開始する。
    日々野の失踪の原因が父親の死ではないかと推測した二人は、日々野の足取りを追いながら情報をひとつずつ当たっていく。
    一方佐伯は、北海道に出張してきていた愛知県警の刑事から「郡司事件」には裏があると知らされる。
    自分の知っていた事件の概要ははたして事実だったのか。
    疑問を感じた佐伯は、部下の新宮に知らせずにひとり終わったはずの事件を調べ始める。
    三者三様の立場でそれぞれの仕事をこなしながら、最後にはすべての糸がひとつに終結していく展開はさすが。
    やっと「笑う警官」に始まった事件が終わる。
    シリーズ第1弾からの読者にとっては、絶対に読み逃しできない物語になっている。
    このシリーズ、妙なべたつき感がなく大仰な正義感を振りかざすこともないところが気に入っている。

  • 「笑う警官」「警察庁から来た男」に続く第3弾。
    まず、「笑う警官」読んで酷評した件、すみませんでした(汗)あの時の「これはないわ~」な感想、取り消します。先の2冊読んでのモヤモヤ感、この本でかなりすっきりしました。(でもやっぱり石岡の死の真相の説明を求む。最初からここがどうにも気に入らなかった)日比野(息子)の処遇については…ま、このくらいは救いがあっていいか。フィクションだしね!

著者プロフィール

1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。90年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を、2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞、16年に日本ミステリー文学大賞を受賞。他に『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

「2022年 『闇の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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