イシマル書房編集部 (ハルキ文庫 ひ 8-2)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 225
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758441278

感想・レビュー・書評

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  • 本への愛おしさが増す一冊。

    危機に陥った小さな出版社の起死回生物語。

    読メ登場で文句無しに惹き込まれる世界、良かった。

    一つの目標に向かって一致団結する姿、編集者魂、作家魂、活版魂…本に携わる人の本に捧げる魂の熱がジンジン伝わってくる。

    世に送り出されるまでに幾人もの手に渡って、それぞれの想いが、幾人もの言葉がその都度詰め込まれていくその過程もたまらない。

    そしてその過程を追う度に本への愛おしさが増す。

    最後は見事に目頭熱く、文字も霞んだ。

    物語のこの締めくくり方、この読メの絡ませ方、これはニクい。心に残るなぁ。

  •  零細出版社イシマル書房の大奮闘を描いた作品。ジャンルはお仕事小説か。

          * * * * *    

     ラノベ仕立てで読みやすく、出版社の業務の一端がわかりやすく書かれていた点はよかった。
     ただ営業にせよ取材にせよ、軽く楽しい場面が多く、ラノベであってもお気楽さが目に付きすぎる気がします。中高生向きとはいえ、もう少し実態に即した描写が欲しかった。

     印象的だったのは、作中で岩さんが口にする「小説とは~」のセリフ。
     実際に角川春樹さんが作者の平岡さんに語ったこばとであることを、あとがきで知りました。平岡さんの座右の銘になっているのだろうと妙に納得してしまいました。

     現在、目に付いた平岡さんの作品を読んでいっているところです。いろいろなタイプの作物が平岡さんの手によって生み出されているのがわかって、ますます楽しみになりました。

  • 売却危機に陥った弱小出版社が一丸となって取り組む起死回生ストーリー。
    主人公の絢子はまだインターン生で、起死回生の出版プロジェクトの中心はスカウトされた元敏腕編集者。
    絢子とこの敏腕編集者が読書SNSで繋がっているとか、絢子が読書関連で飛び抜けた才能を持っていたり、もっと話を膨らませることができたんじゃないかという伏線は転がっているんだけど、活かしきれてないかな。
    挽回プロジェクトには作品を提供する作家だけでなく、題材に共鳴した書店も協力。
    本好きは面白いと思う。

  • 出版業界の痛さを描写しつつ、ある種のサクセスストーリーに仕上げてる。エンターテイナーとしては構成に感心した。同時に、今の出版業界がいかにどん詰まりか?これは有り得ないシンデレラストーリーとわかるだけに、もうこういう有り得ない話でないと救われないとは如何に絶望的か痛い。

  • 「生きのびる」がテーマ。活版印刷や書店の実情、現代の出版社の不況、本の持つパワー、校閲など、本が直面する問題を多角的にとらえながら、幻の作家の歴史小説の文章は読ませるものがあるように見え、クラウドファンディングやSNSといったトレンドも出てくる。何より本が好きだという著者の姿勢に泣きそうになる。読みやすい文体なのであなどってうかうか読んでいると足元を救われる。パズルのようによくできた話。ただいい意味で作りが軽いというか、本当に重厚な話を読みたい人には向かないかも。表紙の印象ほど軽い話ではなくてそのギャップにおどろく。

  • 神保町が舞台になっていて、つい手に取ってしまった。内容は絶体絶命の零細出版社が生き残りをかけて本を出版するというもの。「本を読まんのはその人が孤独でない証拠や」という太宰の言葉の引用が印象的だった。私は下手に友人をもつよりも本を読みたいけれど。ま、とりあえずボンディ行ってこよ~。

  • 一気読みしてしまった。作中にある「日本人は孤独でなくなったから本を読まなくなった」という言葉はストンと腑に落ちた。私は孤独癖があるから本を読み続けてるのかも。
    ところで本書は零細出版社の社運かけた本作りを描いていますが、あまり細かい編集に関わる描写が出てきません。よりマクロな視点でダイナミックに書いています。その分スピード感はあって、終盤はもう一気に進みます。一通り走りきった後の余韻もいい。なかなかいい作品です。

  • 本と本屋さんと活版印刷、私の大好きなワード!
    『 … 小説はストーリーよりも、人間を書くことが先決なんだね』
    たしかに、登場人物を丁寧に大切に書かれた小説は魅力的だと思った。この本だと、とくに岩田さんですね。

    でも、美代さんと石丸さんの関係や美代さんの温泉のシーンが描かれた意味が分からなかった。
    これがなかったら、心から大好きな本になってたと思う

  • 七千万円を用意しなければ身売りになる出版社に採用された絢子。起死回生のために社員だけじゃなく書店員、他社社員までも奮闘する。
    今の時代書籍の売り上げだけで経営するのは書店も出版社も大変、作家も専業で食べていけるのはほんの一部の人間だけ。とにかく「生き延びること」で文化を守る。
    親会社IT社の人間がものすごーくわかりやすく嫌われキャラね。最後は唐突に都合のいい話、て感じもするけど小説の中だけでもハッピーエンドで嬉しい。

  • う〜〜〜ん惜しい!
    1冊完結じゃなくて2、3冊のボリュームで読みたかった内容。
    1冊完結が故にものすごい駆け足。
    問題が起きてもその数行先には解決、奮い立たされるであろうシーンも助走が短いので7割ぐらいの燃え上がりキャラの設定も活かせず仕舞い。
    これはどこぞでディレクターズカット版みたいな長さの完全版が読みたいと思うほど面白かったです。

    違和感を感じたとこ、冒頭の女性キャラ同士での露天風呂でのシーン。あの描写がねちっこく感じられてどうも女性キャラが思ってることとは思えなかった。それともあれがリアルなんやろか?
    ちょいちょいおっさん目線的な女性描写が気になりました。

    ほんにサクっと読める軽めの読書には最適。

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著者プロフィール

平岡陽明
1977年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2013年『松田さんの181日』(文藝春秋)で第93回オール讀物新人賞を受賞し、デビュー。19年刊行の『ロス男』で第41回吉川英治文学新人賞候補。22年刊行の『素数とバレーボール』は、「本の雑誌」が選んだ「2022年度エンターテインメントベスト10」第3位。他の著書に『ライオンズ。1958。』『イシマル書房編集部』『道をたずねる』『ぼくもだよ。神楽坂の奇跡の木曜日』がある。

「2023年 『眠る邪馬台国 夢見る探偵 高宮アスカ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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