- Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758441278
感想・レビュー・書評
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本への愛おしさが増す一冊。
危機に陥った小さな出版社の起死回生物語。
読メ登場で文句無しに惹き込まれる世界、良かった。
一つの目標に向かって一致団結する姿、編集者魂、作家魂、活版魂…本に携わる人の本に捧げる魂の熱がジンジン伝わってくる。
世に送り出されるまでに幾人もの手に渡って、それぞれの想いが、幾人もの言葉がその都度詰め込まれていくその過程もたまらない。
そしてその過程を追う度に本への愛おしさが増す。
最後は見事に目頭熱く、文字も霞んだ。
物語のこの締めくくり方、この読メの絡ませ方、これはニクい。心に残るなぁ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
零細出版社イシマル書房の大奮闘を描いた作品。ジャンルはお仕事小説か。
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ラノベ仕立てで読みやすく、出版社の業務の一端がわかりやすく書かれていた点はよかった。
ただ営業にせよ取材にせよ、軽く楽しい場面が多く、ラノベであってもお気楽さが目に付きすぎる気がします。中高生向きとはいえ、もう少し実態に即した描写が欲しかった。
印象的だったのは、作中で岩さんが口にする「小説とは~」のセリフ。
実際に角川春樹さんが作者の平岡さんに語ったこばとであることを、あとがきで知りました。平岡さんの座右の銘になっているのだろうと妙に納得してしまいました。
現在、目に付いた平岡さんの作品を読んでいっているところです。いろいろなタイプの作物が平岡さんの手によって生み出されているのがわかって、ますます楽しみになりました。 -
出版業界の痛さを描写しつつ、ある種のサクセスストーリーに仕上げてる。エンターテイナーとしては構成に感心した。同時に、今の出版業界がいかにどん詰まりか?これは有り得ないシンデレラストーリーとわかるだけに、もうこういう有り得ない話でないと救われないとは如何に絶望的か痛い。
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「生きのびる」がテーマ。活版印刷や書店の実情、現代の出版社の不況、本の持つパワー、校閲など、本が直面する問題を多角的にとらえながら、幻の作家の歴史小説の文章は読ませるものがあるように見え、クラウドファンディングやSNSといったトレンドも出てくる。何より本が好きだという著者の姿勢に泣きそうになる。読みやすい文体なのであなどってうかうか読んでいると足元を救われる。パズルのようによくできた話。ただいい意味で作りが軽いというか、本当に重厚な話を読みたい人には向かないかも。表紙の印象ほど軽い話ではなくてそのギャップにおどろく。
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神保町が舞台になっていて、つい手に取ってしまった。内容は絶体絶命の零細出版社が生き残りをかけて本を出版するというもの。「本を読まんのはその人が孤独でない証拠や」という太宰の言葉の引用が印象的だった。私は下手に友人をもつよりも本を読みたいけれど。ま、とりあえずボンディ行ってこよ~。
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一気読みしてしまった。作中にある「日本人は孤独でなくなったから本を読まなくなった」という言葉はストンと腑に落ちた。私は孤独癖があるから本を読み続けてるのかも。
ところで本書は零細出版社の社運かけた本作りを描いていますが、あまり細かい編集に関わる描写が出てきません。よりマクロな視点でダイナミックに書いています。その分スピード感はあって、終盤はもう一気に進みます。一通り走りきった後の余韻もいい。なかなかいい作品です。 -
七千万円を用意しなければ身売りになる出版社に採用された絢子。起死回生のために社員だけじゃなく書店員、他社社員までも奮闘する。
今の時代書籍の売り上げだけで経営するのは書店も出版社も大変、作家も専業で食べていけるのはほんの一部の人間だけ。とにかく「生き延びること」で文化を守る。
親会社IT社の人間がものすごーくわかりやすく嫌われキャラね。最後は唐突に都合のいい話、て感じもするけど小説の中だけでもハッピーエンドで嬉しい。