ユートピアの崩壊 ナウル共和国―世界一裕福な島国が最貧国に転落するまで

  • 新泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787710178

感想・レビュー・書評

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  • 「現代において物々交換が復活するのは、社会がどん底に陥ったときである」
    それがナウルの現状だ。

    リン鉱石という資源ひとつで世界一裕福な国になったナウル共和国。
    そのナウルが政治の失敗や人間の弱い部分などより最貧国に転落した。


    そんな絶望の物語である反面、最後にはかすかな変化が見えた。


    政治の失敗だとかテクニカルな部分も重要な話だが、
    絶望の中にもかすかな光は見えてくるもんなんだなっていうことを感じて最後は少しスッキリできた。

  • ナウル共和国の盛衰をルポ風にまとめてあります。
    ドキュメンタリー作品のついで、みたいな感じで作られたようなので、
    写真等視覚に訴える部分は良かったと思いますが、
    もう少し深い考察が欲しかったかな。

  • 世界で三番目に小さい人口一万たらずの国。リン鉱石の採掘で莫大な富を得た後に資源の枯渇や需要供給のバランスが崩れて、借金大国に。
    小さくても独立国であるから、国連の一票を持つ国に対して大国の思惑が絡まってくる。いろいろなことを考えさせられる。

  • ナウル
    人口約1万人
    太平洋に浮かぶミクロネシアの国 
    バチカン市国やモナコ共和国と並ぶ小さな国

    アホウドリの糞が化石化した,リン鉱石の輸出で,1970年代には世界でもトップクラスの富裕国となる
    面積約20平方kmの島にベンツやランボルギーニが輸入された...

    しかし20世紀末にリン鉱石は枯渇
    豊だったころの外国への投資もそのほとんどが失敗
    現在は世界の中でも最貧国の一つに数えられる

    私たちはこの国から何か教訓を得ることができるだろうか…

  • 小さな島にリン鉱石がみつかったことから
    急速に豊かになり、
    国も国民も欲望に任せてとことん浪費。

    ほとんど金融の知識もない国が
    寄ってきた金融詐欺師に騙されて巨額の海外投資をし、
    元本をすべて失う。

    数十年でリンが尽きてしまい、
    借金で国が運営できなくなる結末を迎える。

    あげくには、パスポートを無審査で発行したり、
    マネーロンダリングの温床になったり
    各種犯罪のよすがを提供することになってしまった。

    『いったん物質的に満たされると、自らの文化を疎かにし、過去の教訓を忘れ去り、自らの住環境を顧みない。こうした人間の性こそがナウルの歴史でしょう。ナウル人であろうが、西洋人であろうが、中国人であろうが、この点においては、われわれ全員が同じなのではないでしょうか』

    このように本書は結んである。

    「リン鉱石」を「石油」に置き換えたら、
    ナウルの変遷は近視眼的な人類の今後を暗示していると思われてならない。

  • ナウル共和国。バチカン市国、モナコ公国に続き、世界最小の共和国ということで名前は知っていた。南洋の穏やかな国のイメージをもっていた。
    その歴史がこんなショッキングなものとは。

    良質なリン鉱石が採れたばかりに、島全土で乱開発が進み、1人あたりGNPが日本が1万ドル弱、米国1万4千ドル程度だった1980年代初頭に、ナウルは2万ドルを誇るまでになった。

    漁業による自給自足の経済から、突然、リン鉱石の輸出により何もしなくてもベーシックインカムで金が勝手に口座に振り込まれるように。
    だから、働いて稼ぐことを知らない。

    一周30分で回れる狭い国土に不要だと思える高級外車を買い漁り、食事は外食しか行わなくなり、海外にショッピングに出向き散財した。

    リン鉱石が枯渇し、国に唯一あった国立銀行も破綻して預金の引き出しも出来なくなった今では、
    働いて稼ぐ経験をしたことがない彼らは、生きていくには漁業による自給自足の生活に逆戻りするしかない。かつての遠い祖先が行っていたように。

    富は失っても、いまだにダントツで世界一の肥満国(2008年のWHOの調査によると、国民の79%が肥満)であり、多くの国民が糖尿病で苦しむ。

  • 本書の筋や主張は読んでもらったらわかると思うが、へーっておもったことの一つは日本が様々な国に経済援助をしていることの理由の一つは捕鯨の、国連での議会での承認を得るためなんだ、ってこと。

  • (チラ見!)

  • 1970,80年代頃に世界一の一人あたりGDPを享受したオセアニアの島国が、政府高官が自分の食事のために釣りをしなければならなくなるほどの最貧国に転落するまでのルポ。

    渡り鳥の中継地点にあったナウル共和国は、渡り鳥の分が蓄積し、グアノというリン鉱石(肥料になる)が大量に蓄積されていた。(同じくグアノが蓄積していた南米の地域でも街が一気に出来て、一気に寂れて、ということがあったようだ。「空気を変える錬金術」参照のこと。)

    リン鉱石の輸出で超大金持ちに。大学留学無料、病気になったらオーストラリアの病院に無料で入院、家のトイレ掃除も国が家政婦を手配してくれる、くそ小さい島なのに一家に何台も車、その車もちょっと故障したら人にあげてしまう、オーストラリアドルをティッシュペーパーに、、、というように、最盛期には成金、バブルという言葉も生やさしいような状態だったらしい。

    リン鉱石を売ってできたお金を元手に、海外投資ラッシュ。メルボルンの再高層ビルをたてたり、病院を買収したり、オセアニア最大の航空会社を所有したりしていたようだが、コンサルや金融屋さんがたかり、スイスやバミューダ海峡あたりの銀行やらを通して元本さえもあた方もなく消えたらしい。

    リン鉱石がそこをついてきてからは、マネーロンダリングしやすいようにして汚いカネが流れてくるようにしたり、密造パスポートを売ったり、オーストラリアが国外退去させたい難民を受け入れる代わりに財政支援を取り寄せたり、まぁ、超ブラック国家に。。。

    しかも何もしなくても大金持ちになる経験をしてしまって体動かす習慣がなくなってしまったがために、なんと世界一の肥満率を誇っているようで、島唯一のお医者さんでさえも糖尿病だという。ちなみに肥満率は78.5%。あの超肥満大国USAでさえ30~35%というから驚きだ。

    資源に依存して苦労せずに金が入ってきても碌なことにはならんね

  •  ナウル共和国という島国が繁栄し崩壊へ至る過程とその状況、人々の生活が丁寧に描かれていた。自分の日々の生活を振り返る必要性を感じた書籍である。
     特に文化が失われることの危険性を改めて実感した。リン鉱石資源の輸出により、経済的に繁栄したのだが、急速に文化が衰退した。職への関心、食生活の変化。それによる糖尿病。ナウル共和国と同じ健康状況がドバイにも表れている指摘は驚くべきものだった。
     日本が同じような状況にはならないと思われるとの記載があった。日本が同じような変化を起こさないように、また自分自身がそうならないように文化を大切に生活したいと感じた。

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