脱出記: シベリアからインドまで歩いた男たち (ヴィレッジブックス N ラ 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (449ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784789732017

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  • シベリアの収容所から7人で脱走し、1年あまりをかけて4人がインドに到達。
    シベリアからゴビ砂漠へ抜け、さらに、途中で、モンゴルの遊牧民、チベット人から歓待(宿、食料)を受けてたどりついている。また、雪男2人(2メートル位)を目撃している。
    ☆ひたすら、すごいというか、信じられない。

  • 著者が実際に体験したノンフィクションの冒険ものほど面白いものはない。と椎名誠氏が同書のあとがきに書いてあるとおり、本当に面白かった。この面白さは、ただ単に笑う面白さではなく、ハラハラドキドキしながらも、著者が生還している安心さもあるから読めるという面白さ。
    極限まで追い詰められた人間の強さ、他人に対する愛情。そういったものが人に感動を与える。
    今は平和な時代でも、一部の世界ではまだまだこういうことがあるのかと思うと、正直残念な気持ちだ。

  • 副題は「男たち」となっているけれど、7人の男性と、途中で加わった1人の少女による、シベリアからインドまでの徒歩でのサバイバル記。途中で3人の仲間を亡くしたものの、残りの4人は一年かけて英領インドまで辿りついた。
    ポーランド騎兵(第二次大戦ではまだ馬に乗った兵士が戦っていたのでした)だった筆者ラウイッツが冒頭で語る尋問と拷問のひどさには言葉もない。同じ人間に仕事として他人の尊厳を奪わせ、苦痛を与えることを可能とするのはどういう理屈なのか。
    その反面、「不幸な人」(強制収容所からの脱走者)のために夜に外に食べ物を出しておくという遊牧民や密かに脱走を支援する大佐夫人、旅の途中で彼らをもてなす人々の存在、どんな状況でもユーモアを忘れない人が周囲に喜びを与えたり、ぎりぎりの状況で男達が少女を慈しむ様子には、人の善意の果てしなさをも感じる。
    イギリス軍に保護された後で彼らは一ヶ月ほど心身喪失状態になったそうだ。やはりサバイバルというのは極限状態で、身も心もすり減らすのだ。

    坦々と語られる壮絶な体験記では何ともなかったのに、以下の文章で落涙。筆者による「終わりに」から引用。

    『何よりも大事なことは、自由は酸素と同じように大切だと、心底から感じることであり、自由はいったん失われたら、それを取り戻すのが困難だという事実を、本書を読んで思い出していただけたならこれにまさる喜びはない。』

    追記)この本については物的証拠がないとか、著者が同時期に従軍していた記録があるとか、作り話であるという説もあるそうです。

  • ただ圧倒

  • 民主主義は暫し云われる様に至上のシステムではない、だが対立軸の社会主義の現実は足元にも及ばない。机上論の政治体制の下、凍土の苛酷な収容所の状況が克明に描かれる。そこから逃げ延びる人間の強い意思に感服。

  • 事実は小説より奇なり。

    第二次大戦さなかのポーランドでロシア語が堪能というだけでスパイ嫌疑をかけられ、シベリアでの25年の労働という判決を受けた筆者が、仲間とともに真冬のシベリアの囚人収容所を脱出し、ゴビ砂漠・ヒマラヤを越えてインドにたどりつくまでの話。

  • もう15年以上も前、まだ学生のころに、ピースランという小さな活動をサポートしたことがある。二人のランナーが、8月6日に広島をスタートし、9日までに長崎へ向けて走る。彼らは、足をぼろぼろにしながら、走り続けた。疲れきって倒れ込んでも、また立ち上がってまた走りはじめる。何度も、何度も。彼らがそこまでできる理由が何となく頭では理解できても、心から腹落ちしたわけじゃなかった。ただわけもなく自分に少し苛立ちながら、そうせずにはいられない気持ちで声援を送り続けていた。



    強制収容所を脱走してから、極寒のシベリア、不毛のゴビ砂漠、そしてヒマラヤを越え、インドまで6500キロを歩ききる。自由と生死を懸けた壮絶な“戦い”。その不屈の心には驚嘆しかない。
    戦争や独裁の下でいとも簡単に奪われてしまう、人としての尊厳や自由。自分より大きな力を前にしたとき、心まで屈することなくいられるだろうか。

    希望を信じてそこへ向かう強い意志には、力がある。その力に周囲は惹きつけられる。仲間や出会う人たちの知恵や支えや強さが、さらに一つの大きな流れになる。そしてその流れはもうとめることはできない。



    数年後、ピースランは24時間耐久走にその形態を変えていた。1周1キロのコースを24時間で何キロまでいけるか走り続ける。チームで交替しながらでもいい。僕はそれに、5人チームの一走者として参加した。マラソンはもちろん、日常的に運動さえしていない体。10キロも走ると足が一気に重くなる。休憩してもすぐにまた順番が回ってくる。次第に足は思う通りに動かなくなる。それでも、自分のパートで少しでも距離を稼ごうと必死になった。 ただ途中で足を止めてしまうことだけはしたくなくて、仲間や声援を力にしながら、とにかく最後まで走りきった。
    たいした記録があったわけじゃない。でもこの小さな戦いで、僕は少しだけ、未来を信じる根拠のない自信というものを身につけた気がする。

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