- Amazon.co.jp ・本 (700ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791768479
感想・レビュー・書評
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世界中で色んな人に読んで貰いたいと思う内容だけに、もう少し無駄部分を省いて、繰り返しを無くして、うまくまとめた内容にしてほしかった・・ 4章から7章はとくにそう思う
現代を生きる人が生物学的に進化してるのかという考察は非常に興味深くて面白い。本書では否定されているが、今後もこのテーマを扱った研究に触れたいと思った
世代ごとの知能指数変化をサンプリングした結果のフリン効果については不知の内容で勉強になった
上下巻合わせてページが膨大なだけに、多数の文献・論文から引用があり、読んだことがある著作などが出てくると嬉しかったりする詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
歴史
社会 -
暴力を引き起こす原動力となる5つの要因「プレデーション(捕食)」「ドミナンス(支配・優位性確保)」「リベンジ(復讐)」「サディズム」「イデオロギー(宗教含む)」が、平和をもたらす4つの要因「共感」「セルフコントロール(自己制御)」「道徳」「理性」によって抑制され、世界はかつてない平和な時代だという。この法則が正しいのなら、5つの暴力要因の強烈さと、4つの平和要因がなんとも脆弱で、薄氷を踏むような状況であることに不安を感じる。
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下巻もボリューム満点で読み応えあり。一気に読んでしまうのは勿体無く、それぞれの項目について、じっくり考えながら読まざるを得ない、実に示唆の跳んだ、中身の濃密な著作です。「暴力」をテーマに人間の本性に基づく分析を下巻で徹底的に突き詰めながら、上巻における、その本性が展開してきた歴史を俯瞰し、そして人間が求める「幸福」に一歩ずつ進んでいることを丁寧に証明してでいきます。現代の古典と呼ぶにふさわしい名著だと思います。
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上巻で人類の殺人・暴力が一環して減少していることをデータで示し、下巻では人間の内的要因を進化心理学者として説明している。脳の機能、心理という観点からの説明なので、厳密な因果関係の説明は困難であり、著者の希望的観測もあるが、膨大な文献、資料を結び付けた説明は説得力があったし、知的刺激を大いに受けた。
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現在までに、多くの種類の暴力が減ってきた。なぜそれが実現したか。下巻は心理学・認知科学的な考察。
我々は人類史上最も幸せな時代を生きている。心構えとしても大事だし、実際に統計でそれを示すというのは実に野心的だがデータに説得力がある。 -
面白かった。人類の歴史を通じて、暴力が減少しているというのは非常に興味深い指摘である。ただやっぱり統計の妥当性は本当なの?という点が気になってしまう。全然レベルの違うものを同じ土俵に載せている気がしてならない、というか…。
心理学の知見を歴史学に持ち込めるか、という点も議論があって面白い。日本の歴史学ではほとんどそういう傾向はないけれど…近いものとして、認知考古学があるけれど…。以前神経経済学の本を読んでこれはすごいことだ、と思ったが、歴史にもそういう流れが今後入ってくるかもしれない。そうなったときに、既存の手法をもっている歴史学者は徐々に駆逐されていく…のかもしれない。 -
上下合わせて1300ページを超える並外れたボリュームの本書。これだけの紙数を割いて、今日、我々が暮らす時代は、人類が地上に出現して以来、最も平和な時代であることを主張する。
テロ、紛争、無差別殺人といった悲劇的なニュースで毎日が溢れている現代であるが、それでも我々は最も平和な時代に生きていることを示すため、膨大な量の統計データとともに人類の歴史を振り返る。
暴力性の後退が6つの大きなトレンドに分類して考察されている。
1.狩猟採集から統治機構を持つ農耕社会への移行に伴う「平和化のプロセス」
2.中世後半からみられた中央集権的統治と商業基盤の確立による「文明化のプロセス」
3.ヨーロッパ啓蒙主義によって奴隷制や拷問・迷信などを克服した「人道主義革命」
4.第二次第戦後に超大国・先進国同士が戦争しなくなった「長い平和」
5.冷戦終結後に紛争・内戦・独裁政権による弾圧が低下した「新しい平和」
6.1948年世界人権宣言以降に少数民族や女性に対する暴力が嫌悪されるようになった「権利革命」
著者は特に3つめの「人道主義革命」に注目する。この時代に暴力を見る目を大きく変わったのだ。残虐行為を「あって当然」から「ありえない」へと変容させた人道主義革命。それを駆動した要因が書籍。グーテンベルクによる活版印刷の発明を経て、17~18世紀に出版物は爆発的に増加し、それに伴い識字率も飛躍的に向上。読書により、さまざまな人や場所、多様な文化やアイデアに触れ、人びとの感情や信念に人道主義的要素を吹き込むことにつながっていくのだ。
暴力が減少していく一方で、人間の理性の力と抽象的推論能力は向上していく。2つの力の組み合わせによって、私たちは自己の経験に囚われることなく、広い視野を持ち、暴力回避という選択肢を選ぶことができるようになっているのだ。自身の経験にのみ基づくことが他者との摩擦を増大させ、その後の暴力の呼び水となることは想像に難くない。
今後も平和が続くと予測するものではないが、そうなるのだろうと期待を抱かせる大著であった。 -
ハーバード大学心理学教授として認知心理学を研究する著者が、人類の長年の歴史において実は暴力は減少しているということを解き明かし、何が人間を暴力に掻き立てるのか、逆に人間の暴力を抑制するものは何かという点を多用な学問領域の知見を活用して明確にした一冊。ようやく下巻も読了。
上巻では、人間の暴力を様々な観点から分類した後で、そのそれぞれの暴力形態が主に長期間の歴史的時間軸で見ると減少していることを定量的なデータにおいて示される。続く下巻では、人間を暴力に掻き立てるイデオロギー、ドミナンス、サディズムなどの「内なる悪魔」と、人間の暴力を抑制する共感やセルフコントロールなどの「善なる天使」が、脳科学や心理学の最新の知見・研究結果などに基づき示される。
本書の卓越したポイントは、何が暴力の減少に相関していて、何が相関していないのかを、イメージではなく一定の論拠と共に示したことにある。暴力の増加・減少に相関するのは、ホッブズが示すところのリヴァイアサンのような独占的に暴力をコントロールする国家の存在、穏やかな通商、女性化、輪の拡大、理性のエスカレーターが挙げられる。一方で、一見相関しているように見えるがそうでないものとして、兵器と軍縮、資源支配と力、経済的な豊かさ、宗教などが挙げられる。各要素の相関関係を明確にしつつ、その全てで必ずしも因果関係があるかはわからないにせよ、今後も暴力をさらに減少させ平和な社会を作るために必要な要素や我々がすべきことへの示唆は十分引き出せる。
現代においてもテクノロジーへの嫌悪なども含めた反近代派は、一見テロや内戦に溢れた現代がいかに暴力に溢れた時代であるかという誤ったイメージを拠り所とした主張を行うが、そうしたイメージではなく、しっかりと歴史を見据えた判断をすることの重要性を本書は明らかにしてくれる。