書くための文章読本 (インターナショナル新書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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本棚登録 : 280
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797680461

作品紹介・あらすじ

これまでになかった画期的な「文末論」と、単調になりがちな文末を豊かにする実践的技巧を示した、本当に役に立つ、まったく新しい文章読本!
日本語の文章で力点が置かれるのは圧倒的に文末。なぜなら文が終わるところなので、もっとも記憶に残りやすい。そこに情報の核を据えるので、文章におけるパンチの効かせどころだと著者は説く。
ところが日本語では最後に動詞がくるので、付け足しがしにくく、その大切な文末が弱い。さらに日本語の文末は「です」「だ」などの連続になって単調になるという弱点もある。これらをどう解決するか。
『日本語のレトリック』『メタファー思考』などのベストセラーがある言語学者が向田邦子、筒井康隆、井上ひさしなどの名文を引いて丁寧に構造を分析し、解説。
長年文章の技巧を研究してきた著者の分析は的確で、語り口は軽妙でわかりやすい。よりうまく、美しく、伝わる文章が書けるようになる画期的な1冊。
また名文がふんだんに引用されているため、日本語の美しさや豊かさ、作家のテクニックを堪能しながら読み進めることができ、実践的でありながら、読書の楽しさも味わえる。

【目次より抜粋】
第一章 終わり良ければすべて良し
第一節 「す」と「る」を書き分ける
デス調とデアル調の変換/「す」と「る」を書き交ぜる/「て」の謎を解く
第二節 「た」の処理法――過去をどう表すか
小説はいつも「た」で終わるか/過去の過去形
第三節 主体性から見た文章技法
主体性と視点/現象文と出会う/一人称の語り手

第二章 踊る文末
第一節 キャラ立てする
役割語とは/助動詞のお目当て
第二節 文法のレトリック
動詞を鍛える/止めを生かす/否定の出番ですよ
第三節 表現のレトリック
感嘆と祈願/もっと対話を――「そう」と「いや」/倒置法と追加法
第四節 引用のレトリック
さまざまな意匠/間接引用の世界/「と」の乱舞

【著者略歴】 言語学者。1951年、京都府生まれ。大阪市立大学文学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。佛教大学教授、大阪市立大学教授名誉教授。専門はレトリック、英語学。
豊かな言語表現の技法を研究。著書に『メタファー思考』(講談社現代新書)、『日本語のレトリック』(岩波ジュニア新書)など多数。編著に編集主幹を務めた『英語多義ネットワーク辞典』(小学館)
『プログレッシブ英和中辞典』(第五版、小学館)など。

感想・レビュー・書評

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  • 以前、他の本の感想でも書いた記憶がありますが、文章を書く際に迷うのが、「だ・である調」か、「です・ます調」か、という点。
    前者では、淡白な表現になりがちで、後者では、「です」で終わることの多いこと多いこと。

    文字通り、日本語について回るこの文末の表現は、歴史的観点から見ても、多くのライターを悩ませ、「文豪」と呼ばれるスペシャリストは、エレガントにこれを解決してきました。

    この本では、そんな文末に着目し、単調になりがちな結びの部分を、有名作家たちがどう解決しているかを、構造から読み解く作りとなっており、ただ名文を眺めて感慨に浸るのではなく、使いこなせるようにすることを目指しています。
    そのため、内容としては新書でありながらも、かなりハードな部類。

    読んでみると、学生時代に習ったこともありながらも、いざ自分が使うとなると、なかなか乗りこなせない、暴れ馬のような表現技巧の数々。

    まるでみじん切りのように、文章を分解していく流れは、ことごとく脳の栄養分を消費し、思わず、糖分が欲しくなる…。
    それほどまでに、今まで意識して文末表現を使っていなかったことを痛感させられました。

    どうしても書き出しに意識が向きすぎて、あとは勢いに任せてざっと書き上げる自分。
    そんな私にとって、この本はブレーキをかけてくれるきっかけになったように思います。

    (このレビューを書く際に、意図的に「です・ます」で終わらないように意識してみましたが、なかなかに難しいですね。)

  • 「文末変えなきゃ(使命感)」

    をこじらせた結果が、今の自分の文体なわけで。
    デス・マス調とダ・デアル調の混合や体言止め、三点リーダーや、「~て。」「~で。」で文を切ったりと、まあ野放図にやってるわけですが、この『書くための文章読本』の文末の分析と具体的な表現技法の紹介は、文章を書くことが好きな人にとっては、読んで損の無い本だと思います。

    内容については結構ハード。第1章の助詞と文末の関係性。あるいは文章の意味合いと文末の関係性をカメラや主体性に例えて、解説するあたりは割とすんなりついて行けましたが、2章後半の引用文に関しての分析はなかなかに頭がこんがらがりました。

    でも一方で、専門的なところの理解度はともかくとして、実践例であったり、本の中で引用されている具体例は、何となく分かる気もします。たぶんこのあたりは文章読み慣れている人、書き慣れている人ならば、感覚的には理解できるのではないかな。
    エッセイ的な書き方はもちろんですが、小説の書き方にも共通する考え方が述べられていて、あらゆる書き手の人にとって、参考になる部分がある一冊だと思います。

    文法的な解説や、様々な表現技法の紹介も面白いのだけど、引用で使われる各作品の文章のチョイスも良かったと思います。そうした名文たちと、詳しい解説に触れることで改めて日本語と、文章表現の面白さを感じた一冊でした。

    • nejidonさん
      とし長さん、こんばんは(^^♪
      先ほどは安房直子さんの作品登録に「いいね」を押して、驚かれたことでしょうね。
      とても好きな作家さんなので...
      とし長さん、こんばんは(^^♪
      先ほどは安房直子さんの作品登録に「いいね」を押して、驚かれたことでしょうね。
      とても好きな作家さんなので、登録してくださるだけで嬉しいのです(*'▽')
      そんなわけで、またやるかもしれませんから、気を抜けませんよ・笑
      ところでこの本、文末を変えるというと「だ・である」「です・ます」の2種類のことでしょうか。
      一度スタイルを決めてしまうと変えるのはなかなか難しいような。
      私が気を付けているのは「思います」というのは決して使わないこと。
      あとは、文末に変化を持たせること、かな。
      文章術の本は読んだことがないので何とも言えないのですが、斎藤美奈子さんの推薦なら読んでみたいですね。
      2020/09/05
    • 沙都さん
      nejidonさんコメントありがとうございます。

      安房直子さんの作品、読み終わりましたが素晴らしかったです。

      この本で紹介されて...
      nejidonさんコメントありがとうございます。

      安房直子さんの作品、読み終わりましたが素晴らしかったです。

      この本で紹介されている文末は「だ・である調」「です・ます調」が基本の軸で、その他に倒置法であったり、読み手へ呼びかけ(~ですね、など)、疑問形だったり(~だろうか、など)が、色々な名作家の文章を通して紹介されている感じでした。

      nejidonさんのようにすでに文章のスタイルを確立されている方は、もし読まれるとしたら参考程度に読まれるのがいいかもしれないと思います。

      自分も正直、ここから文章が劇的に変わるか、というと、そうでもない気もしています。でも技法やレトリックを知っていること、感覚的にでも自分の文章の傾向を理解出来るようにしておくことに意味があるように感じましたし、だからこそ、この本の文章術の紹介や分析は面白かったです。
      2020/09/06
  • 日本語で書かれる文章にあって、文末が単調になるという著者の問題提起には同感できる。そして、単調な文章は、読者の眠気を誘発するという指摘に首肯せざるをえない。
    この文末単調問題をさまざまなレトリックを駆使し、回避することで、さらには文章に力を与えることにもなると著者は述べている。もちろんレトリックとして提示される手法は、一通りではない。これらを駆使できれば、書かれた文章には力が宿るだろう。日本語が持つ語順に由来して起こる文末単調問題という宿痾には、気づいてはいたけれども、これまで対策を考えたことはなかった。本書を読んで理解した。文章を書くときに、都度、「気をつける」程度の精神論的対応しかできていなかったのだと。
    文章はもちろんその内容が重要だが、表現が豊かであるということは、結果として内容にも影響を及ぼすだろう。一流作家になる小説を読めば、そのことはよく分かる。そして、本書はその領域に我々を一歩近づける一助となってくれるにちがいない。

  • 文章を書く際に悩ましいのが『文末問題』。単調になりがちな文末を解消するための技法やテクニックを文学小説を引用しながら紹介している本。ネチネチと文末技法を追っていく熱量がすごい本です。

    最初の方は難しくて挫折しそうでしたが、ちょっと読み飛ばしつつ読み進めていくと発見があったりして面白くなってきました。引用程度ですが文豪の文末表現を味わえるのもなんだか楽しい。

    自分もnoteで文章を書く時には文末表現を多少コントロールしていましたが、ちょっと意識しているくらいです。改めて文末技法について言語化されたものを目の当たりにすると、日本語ってほんとに奥が深いし、無意識に日本語を駆使している日本人もすごい民族だなと感心しました。

    勉強になったのは、文章に律動感や躍動感を与える方法。
    「デス・マス調とダ・デアル調をうまく調整する」、「過去・完了の「た」に現在形をうまく配合する」のがポイントですが、これによって文章の【主体性】を高まり、まるで書き手あるいは語り手が 現場に立ってその場の空気感も含めて実況中継をしているようになります。

    文章の【主体性】という概念を知ったので、これから小説をよむのが楽しみ!機会があれば自分の文章にも取り入れていきたいです。

  • 文章を書く時に、日本語の語尾は単一になりがちです。拙い読書の記録、感想を書いている私自身常日頃感じているところです。(ほら、です です している・・)
    そんな悩みを、さまざまな文例も紹介しながら解消してくださる素敵な本なのです。読んだだけで文章が良くなるわけではありませんが、私自身もっと自由に言葉を使ったり、規則を飛び越えたりしてもいいんだということを学べましたよ。
    語尾の一文字に、いろんな意味があり、日本語の奥深さを感じることができました。

  • 単調になりがちな日本語の文末にバリエーションを持たせるための具体的な解決策が提示されている。

    ・動詞五段活用の終止形をアクセントに使う。文尾の「る」を避けたいなら、ラ行以外の動詞、デス・マス調の「す」を重ねたくないなら、サ行以外の動詞を現在形で使う。
    ・補助動詞を上手に使う。「思う」を「思い出す」や「思い浮かぶ」「思い込む」と変化させる。
    ・現場中継的あるいは実況放送的に表現の主体性を高める場面で非過去形を用いる。
    などなど。

    著者の引用する文章は、さまざまなジャンルにわたっており、用例研究はさぞ大変だっただろうなと想像する。「文章を書くのが上手くなりたかったら名文を読みなさい」で終わらずに、名文の名文たるゆえんを文末に着目して解説し、具体的なテクニックとして整理して示してくださっているので、自分でもすぐに真似できそう。もちろん上手く使いこなすためには練習が必要だけれど、何に気をつけて練習すれば良いのかが示されているのが有り難い。文章力を上げるために、きっと役に立つ本だと思う。

  • 開始:2022/10/26
    終了:2022/10/28

    感想
    この人の本はいつもそうなのだが、読むと日本語が頭の中でバラける。小説、解説、歌詞。あらゆる文章の末に目が行き、書くのも読むのも四苦八苦。

  • 最近ブログやTwitterを始めたことで直面した問題が「文末」です。どうしても「です・ます・ました」で終わってしまって単調になりがちでした。

    本書はそんな文末問題を解決してくれる1冊。
    たくさんの名文を引用しながら、文末の変化の付け方や技法を解説してくれます。

    これから本を読むときは文末にも着目して、どんな工夫がされているのか見つけたいです。

    …本書に習ってこの感想も文末に気をつけて書いているつもりですが、慣れていないからでしょうか、やっぱり難しいですね。

  •  多様な文末表現の重要性とその具体的な手法の解説を中心に据えた、あるようでなかった文章読本。

     内容的にはあまり目新しいものはなかったが、文例が豊富で楽しく読める。そして何より本書の文章の文末自体が「踊って」おり、その効果を読み手として実感できる。

     高尚だが読んでも血肉にならないような文章読本よりは、このぐらい身近に感じられるもののほうがいいのかも。

  • 文末を、すすすす、るるるる、たたたた、など単調にしない。
    「が」は万能の接続詞、使い過ぎに注意。
    「と」で引用は使い勝手がいい。直接引用にも間接引用にも使える。

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著者プロフィール

大阪市立大学名誉教授 佛教大学教授

「2014年 『大学生のための 英語の新マナビー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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