海鳥の眠るホテル (『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
3.21
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本棚登録 : 142
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800201867

作品紹介・あらすじ

恋人との関係に終止符を打ち、美術モデルのアルバイト先で出会った新垣と新たな関係を築こうとする千佳。新垣と行った廃墟で、何者かの気配を感じ-。認知症を患った妻・君枝の介護に専念すべくデザイナーの職を辞した靖史。君枝から目が離せなくなった靖史は…。人里離れた廃墟と化したホテルに棲む、記憶を失った男。ある朝、ホテルに一眼レフカメラを持った女性を見つけ、撮影を続ける彼女の後を追う。三人の記憶と現実が交差してひとつのファインダーに収まったとき、世界は、見事な反転を見せる。寂寥とした筆致が沁みわたる、ホラー・サスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • ひっそりと佇む廃墟ホテルをメインに繰り広げられる、少し恐ろしくて静かな物語。カメラマン志望の女性、若年性認知症を発症した妻とその夫、廃墟ホテルに棲む謎の男、それぞれの人物の物語が徐々に繋がりながら、やがて明らかになる秘密。寂しくて悲しくて、だけどどこかしら穏やかな雰囲気も残るホラーミステリです。
    廃墟となったホテルに隠された秘密や、謎の男の断片的な記憶。意味ありげな伏線は数々ありましたが。そうかあ、こう繋がってくるかあ。個人的には、アルツハイマー認知症にかかった彼女の物語がなんともいえずつらかったです。これは誰にでも起こりうるのかもしれない病だけれど、なによりも残酷な病なのかもしれません。しかしそれを受け入れようとする夫の姿がまた切ないなあ。

  • なるほどね

  • 山奥の廃ホテルに寝泊まりし、迷い込んでくる若者に怯える男。美術学校でヌードモデルをしている女。認知症を発症した妻を世話する男性。それぞれの人生には実は接点があり、明らかになっていく。

    ていうか、あらすじ書きにくいわ。ミステリなんですかねこれ。ホラーと言うか、純文学というジャンルで読み始めたほうが良いし、読み終わってからもその印象は変わっていない。あとがきには「見事なサスペンス」と書かれているのも、首をかしげる。

    とまあ、純文学として読んだとして、結構早々に嫌な予感がするのは、視点をあっちこっちに移動すること。その上、その視点が飛んでいく先が、リアルな時間軸に乗っているものではないわけで、「ぼんやりした作品だった」というレビューが多くなるのも頷ける。

    なんとなく途中で、作者はひた隠しにしているが、こういうストーリーになるんだろうな、というとおりにストーリーは進んでいくため、それなりに読みやすい。

    が、面白いと言われたらどうかな?岡崎京子の「エンドオブワールド」の出来損ないという感じの話であり、典型的な☆2の作品であろう。

    宝島社もちょっとハズレ多いな。

  • カメラマンを目指す女性、若年性アルツハイマーの女性、廃墟ホテルに起居する日雇い男性。
    それぞれがバラバラのストーリーで、少しずつ摘み食いしながら並行する。イライラしながら我慢して読む。
    各スレッドが少しずつクロスする。
    カメラマンはアルツハイマー病の女性に父親を奪われ、日雇い男性はカメラマンに恋慕して襲う。カメラマンは幽霊になっていた。
    種明かしすると大したことじゃない。イライラもあまり解消しない。だからどうした?というカンジ。

  • 『完全なる首長竜の日』よりは読みやすくわかりやすかったかな。3つの視点からお話が進み最後に収束する構図は見事。最初の方はわかりにくいところもあったけどその疑問は話が続いていくにつれ解決していくかな。まさかあんな結末だとは思わなかったよ…。2012/668

  • 恋人と別れ美術モデルのアルバイト先で出会った
    新垣と新たな関係を築こうとする千佳。
    アルツハイマー病を患った妻の介護に
    専念すべく職を辞した靖史。
    廃墟と化したホテルに棲む記憶を失った男。
    三人の記憶と現実が交差する…

    完全なる首長竜~が気に入ったので
    読んでみたのですが、それぞれの登場人物が
    繋がっても「ええー!」という驚きというより
    「あ、そうなんだ…」と思うだけで
    しかもただ重くて悲しいだけだったという…

    あらすじに三人の記憶と現実が交差して
    ひとつのファインダーに収まった時
    見事な反転を見せる!とか書いてあるので
    期待しすぎてしまった…
    全体に登場人物が抱える事情がしんどくて…

    ただ、不思議な空気感というか雰囲気がある
    作家さんだな~と思います。
    昔の情景をゆっくりと物悲しく古い映画で
    流すようなシーンを描くのがうまいというか…
    廃墟が好きなので舞台が廃墟になったホテル
    なのも好みだったのかも。

  • 3人の登場人物の別々のお話が徐々に収斂していき最後には…。読み始めてすぐ、このミス大賞を受賞した「完全なる首長竜の日」と同じ臭いがして嫌な予感を覚えたのですが、アレよりはマシな出来ではありました。ただ、救いようのない結末には脱力です。

  • 裸婦モデルの千佳、アルツハイマーの妻を介護する靖史、廃墟に住むホームレスの3人のそれぞれの視点から語られる物語と、次第に明らかになっていく3人の関係に何とも言えない切なさが残りました。女性陣がみんな不憫です。

  • 登場人物の一人称で語られるので
    場面がコロコロ変わる
    こういうタイプの作品が好きなら
    まあ、面白いと言えるかもしれない

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著者プロフィール

1971年東京生まれ。小説家・劇作家。2010年『完全なる首長竜の日』(宝島社)で第9回「このミステリーがすごい!大賞」を、『忍び外伝』(朝日新聞出版)で第2回朝日時代小説大賞を受賞しデビュー。2013年『忍び秘伝』(文庫化タイトル『塞ノ巫女』)で第15回大藪春彦賞候補。近年は作品の英訳版が発売され、中国のSF雑誌にも掲載されるなど、海外での評価も高い。『機巧のイヴ』シリーズ(新潮社)、『見返り検校』(新潮社)、『僕たちのアラル』(KADOKAWA)、『ツキノネ』(祥伝社)、『ねなしぐさ 平賀源内の殺人』(宝島社)など、著書多数。

「2020年 『ドライドックNo.8 乾船渠八號』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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