土の文明史

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784806713999

作品紹介・あらすじ

文明が衰退する原因は気候変動か、戦争か、疫病か?古代文明から20世紀のアメリカまで、土から歴史を見ることで社会に大変動を引き起こす土と人類の関係を解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • ・気候変動が今後どのような影響を人類に及ぼすかという疑問から手に取った一冊であったが、私にはいささか難しいすぎ、また自分の知りたかった部分の記述は意外と少なく流し読みになった。

    ・しかし学びは幾つかあった。土地が支えられる以上に養うべき人間が増えた時、社会的政治的紛争が繰り返され、社会を衰退させた。
    ・肥沃な谷床での農業によって人口が増え、それがある点に達すると傾斜地での耕作に頼るようになる。植物が切り払われ、継続的に耕起することでむき出しの土壌が雨と流水にさらされるようになると、急速な斜面の土壌侵食が起きる。その後の数世紀で農業はますます集約化しそのために養分不足や土壌の喪失が発生すると収量が低下して人口を支えるには不十分となり、文明全体が破綻へと向かう。

    ・人口統計学によると2050年までは世界人口は増え続け、人口が増えると経済活動は活発になるという。経済活動は環境への影響のみを考えるとマイナスに働く。
    ・つまり環境難民は今後もっと増加するだろう。世界は人口を減らすための方策を分からないように取るだろう。そうなった時の今後の自分の身の振り方を考えなければいけないと思わされた一冊であった。

  • 2023.02.17 社内読書部で紹介を受ける。農業に向く土は有限。耕して流されて減る。砂漠はその結果。化学により窒素を土に還元することができるようになった。ハーバーボッシュ法。肥料にも火薬にもなる。

  • 原題は「Dirt:The Erosion of civilization」=「泥:文明の浸食」。その名の通り、文明がいかに表土を侵食し、貴重な資源を食いつぶしてきたかという歴史である。人類が農耕を始め、鋤を使って土を耕起するようになってから表土の流出が始まった。それは、ローマ帝国やマヤ文明を滅ぼし、今もアフリカの飢餓を招き、アメリカや中国を衰退させようとしている。それに拍車をかけたのが、石油から生み出した肥料を土に施して収量を増やす「緑の革命」だった。しかし、遺伝子操作と農業化学による収穫増は、もはや限界に来ている。有限の資源である土を、いかに保全し持続させてゆくか。そこに人類の未来がかかっている。

  • ミミズの力、過放牧による土壌侵食で農業崩壊

  •  土壌を大切にしなければ、文明は崩壊するということがこの本では伝えています。私は、ジャレドダイヤモンド氏の著書を読むなかで、土の大切さに気づき、より詳しく知りたいと考え、「土の文明史」を読むことにしました。ただ、中盤の内容がほとんど繰り返しになっており、冗長でそこまで面白くはありませんでした。
     しかしながら、土壌やミミズの説明。表土を大切にするためには、自然農法が効果的であること。現在の二酸化炭素の三分の一は土を掘り起こすことで発生している。現行農法は必ずしも正解ではないこと。など、参考になる視点は多くありました。
     私はこの本を通して、自然農法により興味を持つことができたので感謝しています。

  • 土壌流出が農業をする限りは宿命的についてまわる問題であり、過去の文明に大きなダメージを与えてきたことを明らかにしてくれる。

    しかしながら冗長かつ散漫な書きぶりもあって、今日の文明にとってもどれくらいの深刻度の問題となっているかが今ひとつ見えてこない。著者は緑の革命の成果などに否定的なのだが、いまだ農業生産は右肩上がりに増え続けているしねえ。

  • 非常に面白いテーマだが、古代帝国から近代国家まで、土壌の侵食が進んだ経緯や斜面耕作地や限界地まで切り詰めて行った流れが繰り返し同じであり、読み物として退屈させる内容だった。
    シュメールやローマ、帝国時代の欧米など、根本を辿れば侵食で土壌喪失したことが文明崩壊や人口破綻の原因となった印象を受ける。
    共通して言えるのは侵食の進行はある程度時間を伴うため、どの社会も目先の利益を優先させてしまう点。 これからの人口を養うための取り組みとして、小規模で有機・不耕作のシステムを提唱している

  • 【書誌情報】
    土の文明史――ローマ帝国、マヤ文明を滅ぼし、米国、中国を衰退させる土の話
    デイビッド・モントゴメリー[著]
    片岡夏実[訳]
    2,800円+税 
    四六判上製 368頁 
    2010年4月発行 
    ISBN:978-4-8067-1399-9
    NDC:613.5

     土が文明の寿命を決定する! 文明が衰退する原因は気候変動か、戦争か、疫病か? 古代文明から20世紀のアメリカまで、土から歴史を見ることで社会に大変動を引き起こす土と人類の関係を解き明かす。
    http://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN978-4-8067-1399-9.html

    【目次】
    第1章 泥に書かれた歴史 
    文明の未来を握る泥
    土――軽視される天然資源
    文明の寿命を決めるもの
    文明の歴史が取るパターン
    ますます重要になる土壌管理


    第2章 地球の皮膚 
    ダーウィンのミミズ
    土壌を作るミミズの消化能力
    土壌侵食と土壌生成のバランス
    生態系において土が果たす役割
    土壌が作られるいくつかのプロセス
    土壌生成の要素
    土壌浸食に影響を与えるもの
    土層の区別ABC
    主要な穀物生産地域となる土の条件
    予測困難な土壌生成と土壌侵食の速度


    第3章 生命の川 
    くり返し起きた大規模な氷河作用
    人種を作り出した気候変動
    氷河が溶けて、新しい生活様式が始まった
    オアシス仮説vs文化進化論
    最初の半農耕民
    行き場のない人々が農耕を発展させた
    定住化と町
    農業と畜産の進行
    農業社会がもたらした人口の爆発的な増加
    革命的な農システム
    都市の誕生、階級の発生
    灌漑の罠
    シュメールのように衰退しなかったエジプトの農業
    ダム建設がナイル川にもたらした悲劇
    中国の農業
    壊滅的な侵食はどのように引き起こされるか
    農耕文明の発展、そして衰退のルート


    第4章 帝国の墓場 
    反復されてきたティカルの物語
    プラトンとアリストテレスの警告
    鋤が侵食のスピードを加速させた
    はっきりとわかるほどの侵食速度
    ローマ社会が土壌侵食を加速させてしまった理由
    鉄の使用
    侵食に対するローマ人の挑戦
    農学者たちの出現
    輪作、肥料、耕すこと
    ローマの農場管理は成功したか
    みずからを使い果たしたローマ
    穀倉地帯だった北アフリカ
    土壌の生産性の低下は一般的なものだったか
    避けられなかった土壌の劣化
    マーシュの発見と警鐘
    農業社会の原因は気候変動ではなかった
    フェニキア文明を滅ぼした過放牧
    イスラエル人が残した土
    アメリカ大陸において崩壊した文明
    焼き畑式農業と肥料不足によって生産性を落としたマヤ
    人口増加と森林伐採
    メキシコの土が語ること
    薪と耕作適地の喪失
    農業慣行が社会を衰退させるとは限らない


    第5章 食い物にされる植民地 
    土壌の質と人口の基本サイクル
    新石器時代の遺物から読み取れるサイクル
    景観に影響を与えたのは気候ではなく人だった
    1000年かかったローマ帝国崩壊からの回復
    河川工学と洪水調節の技術を復活させたダ・ビンチ
    中世村落共同体の土地利用と所有の形態
    「共有地の悲劇」ではなく
    ヨーロッパ農業システムの臨界、黒死病
    土地所有の不定性が土地の改良を妨げた
    土地への欲求が宗教改革を後押しした
    農業実験、土壌改良の理論の広がり
    ヨーマンの農業革命
    土壌管理の秘訣は、肥沃土を維持し、侵食を防ぐこと
    土を知ることは何を植えるかを知ることである
    土地の性格に合わせて、改良の方法を探る
    農地の私有化、社会の工業化、飢饉
    耕作地を求めて植民地化を押し進める
    森林の伐採と急流との関係を解明した道路技師
    フランスの森林伐採
    侵食が地形を作る
    人口抑制の理論的かつ現実的な裏づけ
    ジャガイモ疫病がもたらした大変動
    社会制度と食糧分配の不公正が飢饉の原因
    食糧を輸入し、人間を輸出したヨーロッパ
    食糧と土地をめぐる争い
    ヨーロッパ農法がグアテマラの土壌を奪う


    第6章 西へ向かう鍬 
    アマゾン川で発見したこと
    アルミニウムと鉄の鉱石の自然生成
    ジャングルでも見られる土壌悪化のサイクル
    ニューイングランドでは集約的栽培が土壌を急速に枯渇させた
    喫煙の流行と奴隷労働
    並外れて魅力的だったタバコという商品
    土地の消耗、開拓の拡大
    ニューイングランドでの土壌改良の試み
    ヨーロッパの視点から見る、アメリカ農業の愚かさ
    アメリカ農業方式への批判意識
    等高線耕作の流行
    肥料の重要性が認識される
    止まらない土地の浪費
    ラフィンの爆発的な成功
    嵐に流される土
    土の有害な農法を取らせてしまう社会
    奴隷制度をめぐる北部と南部の争い
    拡大か、崩壊か
    泥から読み取れる侵食の証拠
    終わることのない南部の荒廃
    テラ・プレタの教訓


    第7章 砂塵の平原 
    土地、労働力、資本
    労働力の増大
    土地ブームに浮かれた農民たち
    土壌を守る義務
    国家的な問題となった土壌侵食
    侵食被害を止めるインセンティブがない
    暴風が飛ばす砂塵の害
    農地拡大の終焉
    アメリカはどれだけの泥をなくしたのか
    50年で表土を裸にした綿花栽培
    機械化の進展と農業の大規模化
    企業経営の工場式農業の支配
    20世紀の農耕方法の失敗
    アメリカ農業の神話
    消え続ける自営農場
    工業化された農業、商品化された土
    侵食防止への無策が表土を奪った
    風食被害
    社会主義経済でも存在した土壌浸食という問題
    砂の海と化したカルムイク
    世界的な土壌侵食
    NASAが撮影した緑の五角形
    土地の回復は可能である
    環境難民という巨大な問題
    不安定な穀物価格
    温暖化が農業システムに及ぼす影響
    都市が農地を呑み込んでいく
    持続不可能な土地利用
    あと一世紀で表土がなくなる?
    改善された農業慣行
    土を守るためのコスト
    社会的かつ長期的な利益を守る


    第8章 ダーティ・ビジネス 
    持続可能な旧来の農業システムの一例
    過度の耕作という問題は先送りにされる
    中国の驚くべき習慣
    土壌化学の大いなる発展
    窒素とリンの強い影響力
    グアノという肥料の分析
    鳥の糞で土壌を蘇らせる
    化学肥料を作りだす
    ヒルガードの警告
    画期的な土壌形成の報告
    ヒルガードvsホイットニー
    戦略資源としてのリン
    農業生産、肥料に関するホイットニーの見解
    まだ解決していない飢餓問題
    ハーボッシュ法の価値
    アンモニア生産量の増大
    化学肥料の重要性の高まり
    緑の革命とは何だったのか
    石油に依存する農業の始まり
    飢餓がなくならない理由
    健康な土壌は健康な植物を育てる
    ハワードとフォークナーが到達した結論
    集約的農業に希望を見たハワード
    フォークナーの偉大な実験
    バイオテクノロジーの可能性
    ジャクソンの考える農業システム
    有機農業は無視できない
    持続可能な農法である有機農業
    慣行農法に対する有機農法の優位
    現代の農業はどうあるべきか
    不耕起農法の成長
    有毒廃棄物の不合理なリサイクル
    土をどのように扱うべきか


    第9章 成功した島、失敗した島 
    イースター島の緩やかな崩壊
    巨石像の謎
    衰退の原因
    鳥の絶滅
    マンガイア島の資源争奪戦
    ティコピアの文化的適応
    マンガイア島とティコピア島の違い
    アイスランドの森林伐採と侵食
    アイスランドの砂漠化
    ハイチの絶望的な表土喪失
    限られた農地の奪い合いがハイチを損なった
    キューバの食糧危機
    キューバの驚くべき農業革命
    キューバの転換が象徴しているもの


    第10章 文明の寿命 
    地球はどれだけ人を養えるか
    土壌保全の利益とコストの構造
    経済理論の中の農業
    社会が持続する条件
    食糧供給のシナリオ
    食糧生産の増加は可能か
    求められる新しい農業哲学
    農業を現実に適応させる
    都市農業の可能性
    生態系・生命系として土壌を考える
    飢餓問題への対処法
    土という財産


    引用・参考文献
    索引

  • 他のレビュワーも触れている通り『文明崩壊』でそのエッセンスは要約されているので、趣味の読書の範囲においてはそちらを薦める。

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著者プロフィール

ワシントン大学地形学教授。
地形の発達、および地質学的プロセスが生態系と人間社会に及ぼす影響の研究で、
国際的に認められた地質学者である。
天才賞と呼ばれるマッカーサーフェローに2008 年に選ばれる。
ポピュラーサイエンス関連でKing of Fish: The Thousand ─ year Run of Salmon(未訳2003 年)、
『土の文明史─ローマ帝国、マヤ文明を滅ぼし、米国、中国を衰退させる土の話』(築地書館 2010 年)、
『土と内臓─微生物がつくる世界』(アン・ビクレーと共著 築地書館 2016 年)、
『岩は嘘をつかない─地質学が読み解くノアの洪水と地球の歴史』(白揚社 2015 年)の3冊の著作がある。
また、ダム撤去を追った『ダムネーション』(2014 年)などのドキュメンタリー映画ほか、
テレビ、ラジオ番組にも出演している。
執筆と研究以外の時間は、バンド「ビッグ・ダート」でギターを担当する。

「2018年 『土・牛・微生物』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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