給食アンサンブル (飛ぶ教室の本)

著者 :
  • 光村図書出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784813800781

感想・レビュー・書評

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  • 6人の中学生の日常と悩みを、給食の献立を通して描いていく。

    1話目は、東京のお嬢様学校から転校してきて、新しい中学校に馴染むのを拒む美貴の物語(七夕ゼリー)。続けて、自分が子どもっぽいことに悩む桃(マーボー豆腐)、友人の姉に恋する満(黒糖パン)、お調子者で人気者の雅人(ABCスープ)、孤独な優等生の清野(ミルメーク)、そして姉御肌で給食が大好きな梢(卒業メニュー)と、彼らの悩みや日常がそれぞれの視点で描かれていく。

    私が心に残ったのは、1話目の美貴の話と、優等生の清野の話だ。
    私はお嬢様学校に在学したことはないが、自分が大好きだった場所から他へ移動した時、新しい場所に馴染めずに変に自分を閉じてしまう気持ちはとてもよくわかった。そして、結局はその意固地な気持ちが自分をますます今いる場所から遠ざけてしまうということ。そのことがわかっていても、なかなか前に進めない気持ち。
    読んでいる時はどうして美貴に共感するのかな?と思ったが、今書いてみて初めて、自分もそれを経験してきたことに気づく。そこを乗り越えられた美貴は、当時の私よりも遥かに柔軟性に富み、素直だ。
    途中、女子グループ特有のジメジメとした話かなと思いきや、ここに登場する女の子たちは心根が優しい子たちばかりのようで、爽やかに読み切れる。ただ、実際の中学生女子はもう少し面倒くさいことになるパターンもたくさんあるだろうなと思った。

    清野の話では逆に、俯瞰した立場で清野に寄り添う見方をした。
    勉強が好きで、物事を真面目に受け取りがちな清野が、クラスメイトの中で浮いてしまうのはよく分かる。実際真面目な子にこういう子は多い気がする。本当かどうかは知らないが、「IQが10違うと話が合わない。」という話を思い出した。清野は、地元の公立中学よりも私立中などに行った方が価値観の合う仲間を見つけられそうだなと思った。しかしそんな清野が、勉強はからっきしの雅人や梢と仲良くなっていくさまは面白いし単純に嬉しい。清野を「面白い」と思える雅人の感性も素直だ。価値観が似た集合体は楽であるかもしれないが、価値観が全く違う者が集まる集合体では、そこでしか出会えない出会いや化学反応があるのかもしれない。

    オムニバス形式なので、1話ずつドキドキしながらページを繰ったが、最後の方は少し単調になってしまったかもしれない。個人的には、過去に給食調理員をしていたこともあり、職業柄給食にどう絡めていくのかなぁと興味津々で見守っていたが、読み終えてみて、さほど給食が重要にも感じられなかったので少し物足りなかった。
    とはいえ、各話給食の献立が個々人にとってのエポックメイキングになっているのは確かなのだが。
    自分だったら、どの献立でどんなストーリーにするかなーなどと考えてみるのも楽しいかもしれない。(そもそも給食の献立を絡めてお話を作るって、結構難しいのかもしれない。)

  • 中学生6人の、給食を軸にそれぞれの悩みを描く短編集。それぞれのキャラクターが魅力的でうまくつながってる。読み終わってとても満足感のある1冊でした。
    そしてなにより表紙のイラストがステキ!大好きです。

  • 給食でつながる中学1年生たちの連作短編集。
    1話1話、一人一人に感情の盛り上がりのポイントがある。
    読みやすくても丁寧に気持ちが書かれている。

  • 中学生のリアルを素直に描いてる。
    大きな事件はないけれど、日々の揺れ動く心を丁寧に追っていて、自然と応援したくなる。

  • 6人の中学生男女の 給食メニューに関わる 心の揺れ動き。キュンときます♪

  •  家庭の事情で私立のお嬢様学校から騒がしい公立の中学校に転校してきた美貴は、前の学校に戻りたくてしかたがなかった。
     親しくしてくれるクラスメイトたちからは孤立しないように気をつけていたが、本心を知られてしまって険悪になってしまった。

     
     仲直りや自分を見つめ直すのに、給食のメニューがきっかけになります。6人の中学生の一生懸命な毎日の物語。

  • 卒業メニューの、クレープを4当分して食べる描写がとても素敵。うるっときます。

  • 飛ぶ教室掲載作品をまとめたもの

    給食にまつわる中学生の話

    七夕ゼリー 美貴
    マーボー豆腐 桃
    黒糖パン 道橋滿
    ABCスープ 足立雅人
    ミルメーク 清野
    卒業メニュー 梢

  • 青少年には共感できるところがあるのでは。給食にまつわる連作短編集。

  • 思春期の子の心情がよく描かれている。中受用に6年生の息子に読ませたら面白かった、とのこと。私はミルメークが良かった。息子はゼリーが良かった、とのこと。読みやすく瑞々しい。

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著者プロフィール

1983年、群馬県桐生市生まれ。東京大学教養学部卒業。『サナギの見る夢』(講談社)で第49回講談社児童文学新人賞佳作を受賞。『ミステリアス・セブンス―封印の七不思議』(岩崎書店)で第7回ジュニア冒険小説大賞を受賞。『カエルの歌姫』(講談社)で第45回日本児童文学者協会新人賞受賞。その他の作品に、『シンデレラウミウシの彼女』『スペシャルQトなぼくら』(講談社)、『給食アンサンブル』(光村図書出版)、『七不思議探偵アマデウス!」(静山社)、「ミッチの道ばたコレクション」シリーズ(偕成社)「なのだのノダちゃん」シリーズ(小峰書店)ほか多数。


「2023年 『YA!ジェンダーフリーアンソロジー TRUE Colors』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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