- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784822249212
作品紹介・あらすじ
「これからがデジタル革命の後半戦。飛躍的に能力を拡大していくコンピュータに人間はますます仕事を奪われる」
ーーMITスローン・スクール、デジタル・ビジネス・センターの研究者2人が2011年に自費出版しアメリカ国内外で
大きな反響を呼んだ。
「テクノロジー失業」の襲来!MIT(マサチューセッツ工科大学/研究チーム)による恐るべき最新レポート。
感想・レビュー・書評
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2013年の出版なので少し古く、かつそこからの未来想定を含む内容なので、「答え合わせ」ができるのだが、何よりAIに関する考察がやや物足りない。面白かったのは、下記のような発想。
ー 産業革命の初期までは、立派に雇用されていた職が、20世紀の初めにほぼ消滅すると言う事態が起きた。役馬だ。325万頭が労役に使われていたが、鉄道に変わられたり、蒸気機関にとって変わられた。馬に賃金が支払われていた。
馬が大量鶴首された。馬は、労働者ではなく、よりアナログな機械として考えるべきでは無いのか。失業者の損失は、生活保護コストや消費の減少にあるが、馬にはそれらが無い。冷酷な言い方をするなら、過剰な馬は美味しい馬肉として、飼育コストを換金する事さえできる。
CEOの報酬と平均的社員の報酬を比べると、1990年には70倍だったが、2005年には300倍だという。このデータはやはり古いが、しかし、ここで考えるべきは、将来、CEOだけが人間でロボットやAIがワーカーになる場合、この差は極限まで広がり、CEOは残りの失業者への生活保護を支払いながら、しかし、他のCEOが提供する商品を、失業者以上に獲得するモチベーションを制度設計として保たねばならない事だ。
ー 今まで誰も思いつかないことを想像することはコンピューターにはできない。創造的なビジネスのアイディアを出す経営者や、感動的な歌を作る作曲家は、コンピューターには置き換えることができない。肉体労働も置き変わらない。
今や、居酒屋でロボットが客の注文に答えて料理を運んでいる。歌やイラストもAIが作る。本著の見立ては既に古い。本源的な人間の価値について、問い直すべきだが、答えが出ない。人間が作ったという「情報」があれば、錯視だとしても成立してしまう気がするからだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
約10年前に書かれた本ということを前提に。
発展による未来予想系の本だが、予想と現実が違うことがよくわかる。
正確な未来は予想できないが、近い形では実現していく。
その中で自分はどうするか。
そんなことを考えた。 -
機械との競争によって失業者が世に溢れるディストピアを描く…訳ではなく、意外にも筆者はデジタル社会の将来に楽観的。ただし、的確な政策が講じられれば…と説く。
トランプ政権の4年間でこの理想とは反対に進んでしまったように思える。 -
この手の本では比較的以前(原著は2011年)に書かれた本だが、人工知能の発達による影響について、比較的冷静かつバランスのとれた見解が書かれているように感じた。
「機械との競争」というタイトルとは裏腹ではあるが、機械と競争することは勝ち目がないし生産的でもない。19世紀に蒸気機関と力作業で対戦したジョン・ヘンリーのように。
むしろ、人工知能の発達した時代において最高の成果を挙げているのは、コンピューターとパートナーシップを構築したチームだ。チェスの試合でディープブルーがカスパロフを破ってから20年が経過したが、現在のトーナメントではコンピューターと協働する「フリースタイル」の参加が認められる大会が数多くあり、チェスの技量よりもマシンの計算能力よりも、人工知能を活用する「プロセス」の良し悪しが勝敗を左右する結果となっているようである。
とはいえ、人工知能を活用する「プロセス」を構築できる能力というのは、やはり高度な知的能力を要求されるものであるだろう。そのため、人工知能の発達によって人類は全体として豊かになれるものの、本書もこれからの社会における格差拡大の可能性は否定していない。
それをできる限り抑制するための低減として、「教育への投資」、「起業家精神の育成と起業家支援の体制」、「通信・輸送インフラや基礎研究への投資」、「新しい産業への法規制の緩和と税制の再構築」といったことを進めていくべきであると筆者は提言している。
現在でもまだ人工知能による経済や社会への影響についてのさまざまな議論があるが、「機械との競争」という考え方の枠組みを脱して、機械とパートナーシップを築く経済のあり方や人材の育成について考えていくべきというスタートポイントを改めて認識させてくれる本だったと思う。
出版から時間がたっているが読み返してみる意義がある本ではないかと思う。 -
装丁が面白い。色あせたように見える黄色い紙を使用。紙が厚くページ数が少ない。内容は見た目ほどのインパクトはなかった。
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タイトルよりもかなり真っ当なミクロ経済の本。
経済書では感じた事のない「ゾクゾクする」興奮と恐ろしさ。
として、神林長平が「戦闘妖精雪風」で描いたビジョンが、どれほど先見的なものだったのかがよく分かる。
(1)テクノロジーが雇用と経済に与える影響
<blockquote>人間の手が導かなくとも杼が布地を織り上げ、ばちが堅琴をかき鳴らすなら、親方はもう職人がいらなくなるだろう。
-アリストテレス
</blockquote>
アメリカではリーマン・ショック以降の大不況期を経て景気回復基調にある。
しかし景気回復しつつも雇用は回復しなかった。
つまり、アメリカの雇用はリーマン・ショック以前から構造的脆弱性を持っていた。
本書ではこれを「機械との競争に雇用が負けている」と評している。
(2)チェス盤の残り半分にさしかかった技術と人間
<blockquote>高度に進化した技術は、どれも魔法と見分けがつかない
-アーサー・C・クラーク</blockquote>
「ムーアの法則」
最も安価な集積回路のトランジスタの数は十二ヶ月ごとに倍になる。
これは倍々ゲーム、すなわち指数関数的増加である。
指数関数的増加の特徴
・人間が直感的にその増加を把握出来ない。
例)
<blockquote>「チェス盤の法則」
チェス盤を発明した男が王様に献上したところ、王様は大層喜び、望みの褒美をつかわすと言った。
男は「米粒」を所望した。
チェス盤の最初のマス目に一粒、二番目のマス目に倍の二粒、三番目のマス目に倍の四粒。
王様はたやすいご用だとうけあった。
だが実際には米粒の数は最終的には2の64乗マイナス1粒となり、積み上げればエベレストの数よりも高くなった。
王様は男の首を刎ねた。</blockquote>
・指数関数的増加は人間には直感的に理解出来ない。
・最初はありふれた直線的増加に見える
・時間の経過とともに、チェス盤でいえば、残り半分に差し掛かった時に、人間を狼狽させる増加をする。
・現代のコンピューターの能力は指数関数的に増加してきた。
・米商務省経済分析曲が設備投資の対象に「情報技術」を入れた1958年を元年とする
・そして、倍増ペースをムーアの法則にもとずいて18ヶ月とする。
・32回倍増した年は2006年である。
1958年:コンピューターは単純な整数の計算しか出来なかった。
2006年:Googleの自動運転車は大陸を横断し、IBMのワトソンは、クイズ番組で優勝した。
・経済規模を拡大し、雇用を創出してきたのは「汎用技術」である。
・「汎用技術」は特定の分野だけではなく、経済全般に渡って浸透し、プロセスを改善する。
・「蒸気機関」、「電気」、「コンピューター」、「インターネット」
・従来、コンピューターでは難しいとされてきた能力、「パターン認知」、「高度なコミュニケーション」のスキルを、急速にコンピューターが奪いつつある。
・従来の「スペシャリスト」とされてきた職業。「弁護士」、「会計士」、「医師」は、まもなくコンピューターアルゴリズムの等比級数的進化で侵食されていくだろう。
・「コンピューター」は次世代の職とされた「知的労働者」を淘汰しつつあるが、「肉体労働」はなかなか淘汰出来ない。
・人間の肉体に類する汎用的物理ロボットはまだ登場が難しく、そして実際には肉体労働の多くが高度なパターン認識、空間認識と一体化しているためだ。
(3)創造的破壊。加速するテクノロジー・消えていく職
・汎用的技術であるコンピューターが企業に与えた影響は、事務処理の効率化だけにとどまらず、仕事のプロセスそのものに変化をもたらした事。
・情報技術ありきのビジネス・プロセスを構築している企業が、勝者総取りで市場を独占する構造になっている。
・利益は数%のスーパースター企業が占め
・富の90%を3%のスーパースター(CEO、セレブ)が占める
・情報技術でスーパースター企業は国を跨ぎ、消費者は「最高の人には喜んでプレミアムを支払う。」
・グローバル企業がなぜこれほど独占するようになったか?
・従来のグローバル企業は巨大な固定費が必要だった
・情報技術がそれを微々たるものにした。
・そして商品だけではなく、プロセスも複製可能にした。
・所得の中央値は下がり続け、上位に富が集中していく。
・上位は富を貯蓄に回し、中央値以下は購買力が低下する。
↓
・需要の下方スパイラルによる経済縮小。
(4)ではどうすれば良いか?
<blockquote>文明がこれまで成し遂げてきた最も偉大な功績は、機械を人の主人ではなく奴隷にした事である。
-パブロック・エリス</blockquote>
1995年
人間界最高のチェスの名手であるガルシ・カスパロフはIBMのスーパーコンピューター、DeepBlueに敗れた。
その後、コンピューターは人間を圧倒し続け、チェス協会は「フリースタイル」を認めた。
フリースタイルとは、コンピューターと人間をどういう風に組み合わせても良いルール。
優勝したチームの構成は
アメリカ人のアマチュアチェスプレイヤー二人と、三台の普通のコンピューターで編成されたチームだった。
このチームは、その時点まで最強だったコンピューター、最強のコンピュータと最強のチェス名人の組み合わせも退けた。
二人のアマチュアは機械学習プログラミングの能力に長けており、学習プロセスを効率化していた。
[弱い人間]+[平凡なスペックのコンピュータ]+[良いプロセス]の組み合わせは、
[最強の人間]+[最強スペックのコンピュータ]+[平凡なプロセス]
をも退けたのだ。
・コンピューターは定型的な処理、反復的な計算、一貫性の維持で強い。
・加えて複雑なコミュニケーションやパターン認識も備えた。
・だが、それらを組み合わせるプロセスを生み出す創造性においては、人はまだ上回っている。
・つまり、直接的にコンピューターと能力を競争するのではなく、組み合わせ使うプロセスを生み出す創造性が、今後有効ではないか?
・一方では中間的スキルを持つ膨大な数の労働者が雇用を失っており、一方ではどんどんコスト安になるテクノロジーがある。
・現代のアメリカにおける起業の成功例は、これを組み合わせた例が多い。
・クラウドファウンでィング、AppStore、クラウド・ソーシング。
・デジタル世界は経済の原則、「資源の希少性」と異なる法則で動いている。
・インスタグラムが短期間で巨大になったのも、FacebookやTwitterの膨大なユーザー数を「プラットフォーム」に出来たからだ。
・「組み合わせのイノベーション」
・小さな会社の仕事をしている事務員が行なっている仕事を書き出させると、52ぐらいにはなるだろう。
・だが、この52の組み合わせは、52!(階乗)となり、これは銀河系に存在する原子の量に匹敵する。
・コンピューターに対して人間が優位に留まるのは、この組み合わせの能力においてである。
・そして、希少性の制約が機能しないデジタルの世界では、それを膨大な数のスタートアップがトライする事で規模が維持されるのだ。
国への指針
・教育への投資
・労働市場の自由化
・移民の活用
・著作権、税法の改正 -
「イノベーションのジレンマ」の言葉を借りると、
人間自体が「持続的技術」で、機械が「破壊的技術」と言えるかもしれません。
テクノロジーの急速な進歩によって、雇用が減り、クリエーターと肉体労働者に二極化するという話です。
1.この本をひと言でまとめると
「機械との競争」に人は負けている。機械を味方につけよ。
2.お気に入りコンテンツとその理由を3から5個程度
・eディスカバリーが弁護士の仕事を肩代わりしたように、高度なスキルもコンピュータに浸食される恐れなしとしない。(p101)
→ちょうど昨日、「弁護士収入:2割が年収100万円以下」というニュースを見た。ネットで調べれは大抵のことはわかるからかも。
・ソフトなスキルの中でも、リーダーシップ、チーム作り、創造性などの重要性は高まる一方である。これらは機械による自動化が最もむずかしく、しかも起業家精神にあふれたダイナミックな経済では最も需要が高いスキルだ。大学を出たら毎日上司にやることを指示されるような従来型の仕事に就こうなどと考えていると、いつの間にか機械との競争に巻き込まれていることに気付くだろう。(p.127)
→働き方について従来の考え方を見直さないといけない。
・著者からの提言(p131)
→基本的には「小さな政府」のような考え方で、納得できる。
3.突っ込みどころ
・「解説」で指摘していたが、著者が具体的な対応策として述べていることが「アメリカでは十分やっているではないか」という指摘はその通りだと思う。
・5章の「人類も世界もデジタルフロンティアでゆたかになると私たちは確信している」はあまりにも楽観すぎないか。楽観の根拠も抽象的。
・看護師を肉体労働者と分類するのはちょっとちがうのでは?
・技術の進化が指数関数的としているが、そこまで急激といえる根拠がわからなかった。
4.自分語り
・本が硬くて読みにくかった。
・極論を言えば、人間にしか出来ない仕事(肉体労働)をするか、新しい仕事を創出するしかない -
ビジネス
経済
社会 -
☆おもしろくないな。
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本書は、コンピュータ等テクノロジーの発達に伴い、仕事が機械から奪われてしまうのではないか、という点について著者の考えを述べ、どう対策するかについて言及している本です。
内容としては、
・これまでの産業革命ではテクノロジーの発達に伴い失職しても、そのテクノロジーにより新しい職業ができたり、仕事の効率化により新たに消費が生まれたりして、失業者があふれるということはなかった。
・現在のコンピュータの発達については、その変化が早すぎるため、失業者の移行が行われていない等の問題点がある。
・対応する方法としてテクノロジーを排除するのではなく、協力することが必要である
ための19の提言が行われています。
と言った感じでしょうか。
なお、161ページからの小峰隆夫教授の解説が非常に素晴らしく、エッセンスだけならこれだけでも十分な程度です。
ただ、ページ数が174ページ程度と少なめなを普通の本の厚さにするためか紙が厚くて、しかもそれが固くて非常に読みにくい。
なので、読むならキンドルをお勧めするし、内容的には解説部分だけでも十分なので立ち読みでもいいのではって感じです。