年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学
- プレジデント社 (2014年4月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784833420822
感想・レビュー・書評
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あえて読むほどのものではなかった。
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経済
社会 -
<blockquote>イノベーションは、雇用に大きな影響を及ぼす。しかも、その影響ちょくは強まる一方だ。今日の経済では、生産プロセスにおけるイノベーションの段階がどの土地で行われるかが、このまでになく大きな意味を持つようになっている。(P.16)</blockquote>
<blockquote>イノベーションは、新しい医薬品、便利なコミュニケ0ションと情報共有の方法、きれいな地球環境など、社会に大きな恩恵をもらたらす。それらの恩恵は限られた土地に極端に集中する。(P.113)</blockquote>
<blockquote>「国を貧しくする要因は、不況、歯止めなきインフレ、内戦などさまざまだが、国を豊かにできる要因は生産性の工場だけだ。」(ポール・クルーグマン:経済学者)(P.58 )</blockquote>
<blockquote>アメリカにおける賃金格差が社会各層よりも地理的要因によって決まっているということだ。(P.131)</blockquote>
現在のアメリカ国内の格差議論は概して、恵まれたそう(高度な教育を受けていて、安定した専門職に付いている人たち)と、恵まれない層(教育レベルが低く、雇用の安定を享受しておらず、日々着ていくのがやっとの薄給の人たち)の階級格差に着目している。この視点は、テクノロジーの進化とグローバル化が追い風になるそうと、逆風になるそうがあるという一般のイメージにも沿っている。(P.142)
<blockquote>アメリカ人は、住む街をよく変える国民だ、経済環境の好ましい土地があれば、すぐそこへ移り住もうとする傾向がある。(P.206)</blockquote> -
技術を持つ人の雇用が、地域の発展を促進する。言い換えればイノベーションの発信地になれれば、その地域の人の収入は、イノベーションと関係ない、マッサージや床屋さんまでもあがる。万能ではないにしても、地域活性化のヒントがこの本にはある。
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経済学者による、地域による繁栄の度合いについて述べた本。イノベーションをキーワードに、現在成功している企業が多数存在する地域が豊かであることをデータを用いて主張している。論理的で面白く読めた。
「ある土地に大学卒業者が多くなれば、その土地の経済のあり方が根本から変わり、住民が就くことができる職の種類と、全業種の労働の生産性に好影響が及ぶ。最終的に、そういう土地では、高度な技能をもっている働き手だけでなく、技能が乏しい働き手の給料も上がっていくのだ」p24
「ハイテク分野の企業が成功できるかどうかは、従業員の質だけではなく、地域の経済環境の質にも左右される。ハイテク産業の盛んな土地にさらに多くのハイテク企業が集まってくるのは偶然ではないのだ」p27
「生産性が向上すると、消費者にとっては商品の値段が安くなるし、労働者の賃金も上昇するが、最終的には雇用が奪われる。雇用の喪失というマイナス面を強調する論者は多いが、労働者の生産性が高まることは、社会が豊かになり、生活水準の向上が実現する主たる要因だ」p54
「雇用の大半は非貿易部門が占めているのに、そうした産業は国の経済的繁栄の牽引役になりえない」p80
「(ザッカーバーグ)「本当に飛び抜けた人材は、まずまず優秀な人材より少し優れているという程度ではない。100倍は優れている」」p92
「(イノベーションのハブ都市の)共通点とは、教育レベルが高く、そのおかげできわめて生産性の高い貿易部門を擁している」p121
「高技能の働き手の数が増えると、それ以外の労働者の生産性も高まる」p134
「格差は拡大しており、そのペースは拡大している。好調な州や都市はますます好調になり、低迷している州や都市はますます低迷するケースが多い」p137
「都市が栄えるためには、充実した文化とリベラルな気風が欠かせない、ひとことで言えば「クール(かっこいい)」な町でなくてはならない」p249
「政府が産業に補助金を支給する政策は、アメリカでもヨーロッパでもあまり成功していない」p272
「変化には、かならず痛みがともなう」p281
「大学進学は、最も割のいい投資の一つだ」p297 -
目を引くような題名になってますが、金払いのいい人が集まっている都市なら、サービス産業でもそれなりの所得になれるということです。
都市部なら生活コストも上がりそうですが、それ以上に所得の上昇の方が大きく、それはハイテク産業の乗数効果が大きいからだそうです。
都市が発達する条件は、地理的条件が大きかったけど、ハイテク産業が市場を引っ張るようになってからは人的条件が最も影響しています。日本で言えば、渋谷にIT企業が集積してビターバレーと呼ばれていたことが近いです。
優良企業が市場を作り、いい人材と刺激的な交流を求めてさらに企業が集まりそこに雇用が生まれ、ハイクラス人材がやりがいのある仕事を求めて引っ越し、金払いのいい人にサービスを提供するために低学歴も惹きつけられる。そんな流れが都市発達での普遍性あるプロセスになっています。
日本における地方創生を考えてみると、イノベーティブな企業を地方に誘致できるかが鍵になるというところでしょうか。
稼いでいる法人を優遇する政策は一般ピープルから抵抗に遭いがちですが、芸術祭や移住促進じゃなくて、やるべきは優良企業の誘致ってことなんですけど、それって難しいですよね。 -
171216 中央図書館
原題は'The New Geography of Jobs'。ハイテク先端産業の集積する都市への経済集中が加速している、ということをアメリカの都市格差データで説明している。スター研究者やエンジニアが少数居るだけで、その都市の経済は「乗数効果」で上昇する、すなわち人と資金が集まり、サービス業の繁栄にまでトリクダウンするとな。