僕の背中と、あなたの吐息(いき)と (MF文庫 ダ・ヴィンチ さ 1-5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840136686

作品紹介・あらすじ

バーテンダーの正午(しょうご)と、WEBデザイナーの陽向(ひなた)は、かつて高校の教師と教え子だった。恋に落ちた彼らは、新天地で共同生活を始めたが…。多くを語らない男と、彼の言葉を求め続ける男、そして彼らのバーを訪ねる、かつて正午の"客"だった女-それぞれの過去と痛みが交錯する。すがるように愛を求める魂を描いた、胸をうつ恋愛小説。文庫書き下ろし。

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  • かつて教師だったバーテンダーの正午と、生徒だったWEBデザイナーの陽向(ひなた)のゲイカップル。
    そして正午と旧知の仲の客の小夜。

    どこか冷めているかのような正午の態度と、どこまでも真っ直ぐな陽向。
    想う気持ちは一緒なのに、表現が違う。放った言葉が思ったように受け止めてもらえず、すれ違っていく。
    それはどんな人間関係でも生じる問題だけれど、相手への想いが強ければ強いほど、その度合いは大きくなる。
    心配させたくないから言わない。好きなら何でも言って欲しい。

    想いの表現法は一つではない。両者ともに間違ってはいない。
    間違ってはいないだけに、変われないのだろう。
    それでも「何かを伝える」ということは必要であり、重要なのだと思う。
    黙っていては何も始まることはないし、終わることもできない。

  • 小さなバーをしている正午とフリーデザイナーの陽向は高校の時、教師と生徒だった。2年経て陽向が成人し、再開し、以来同棲している。常連の小夜は主婦だった頃、正午をデートホストで指名していた。今は独り身46歳、彼女が一番女として共感する笑
    おめでたく二人が結ばれました、で恋愛は終わるわけではない。年を取る。仕事がある。親がいる。相手の何気ない気に食わない仕草。考え方の違い。相手が間違っているわけではないから説明がめんどくさくて、でもそれでは納得してくれなくて、あるある、わかるーってなるけど、そこで黙っちゃいけない、「平行線でもなんでも、とにかく会話するの。わかんないってあきらめて口きかなくなったら、おしまいの始まりだから」小夜さんはやっぱり大人の女性だ。

    カクテルが美味しそうで、レシピメモ。
    「ブザム・カレッサー(Bosam Caresser)は、直訳すれば『胸を愛撫する人』だが、『秘めやかなる抱擁』という意味だという」マデイラワインとオレンジキュラソーとグレナデンシロップ、卵、シェーク、ソーサー型のグラス
    「女神たちの欲望に翻弄された末に非業の死を遂げ、流した血からアネモネの花を咲かせたアドニス」ティオ・ペペ。チンザノ・ロッソ。ノールズのオレンジビターズ。ミキシンググラス。シェリー多め。
    「抱きあったあとは、キューバ・リバーだ。
    二十世紀初頭、米西戦争でアメリカがスペインを下し、長きに亘ってスペインの植民地だったキューバは独立した。このときの民衆の合い言葉『Viva Cuba Libre(自由なるキューバ万歳)』が名の由来」氷を詰めたタンブラーにラムを注ぎライムを搾り、冷やしたコーラで満たすだけ
    「月の満ち欠けの周期は約29・5日なんだけど、太陽歴のカレンダーって二月以外はそれより長いじゃない。だから31日ある月なら、一日が満月だったら月末にまた必ず満月が来る。めったにないその二度めの満月をブルー・ムーンっていうんだって聞いた」「いいな。そっちのほうがロマンチックですね」
    「英語でパーフェクトラブ。完全なる愛」「菫の花言葉?」「いや、紫の菫で〝貞節〟とか〝誠実〟とか。それが秘訣ってことですかね」
    レインボー「クレーム・ド・カカオ、バイオレット、ベネディクティン、シャルトリューズ・ジョーヌとシャルトリューズ・ヴェール、最後にブランデーです」好きな色のところからストローで
    「マティーニ」プードルスとノイリー・プラット
    マミー・テイラー「ちょっと甘いハイボール」スコッチとレモンジュースとジンジャエール。贅沢に氷が詰まったタンブラー。
    「フロリダ」「お酒じゃないんでしょ」「ビターズが入ってるから厳密には酒だ」柑橘類のジュースを合わせてシェーク
    パラダイス「ジュース多めにするとすっきり仕上がる」ドライジン、アプリコットブランデー、オレンジジュース、シェーク。
    「グリーン・アラスカ。シャルトリューズ・ジョーヌをヴェールに変えただけなんだけど、度数跳ね上がってますから」
    「これでおしまい、という意味のカクテル」「究極のカクテルの意味を持つ名前だけど、この場合は『京の茶漬け』的なことかもしれない」X・Y・Zレモンを多め

  • 前作、前々作では男の人視点のみだったのに、本作では男の人視点と女の人視点、交互に話が進む。
    どうしても、女の人の小夜さん視点のシーンの方がおもしろくて、これ、普通に小夜さん主人公で読みたいな…なんて思ってしまった。
    3作品続けてこのシリーズを読んだけど、表紙を本当にどうにかして欲しい…。何故どれも官能小説っぽいものなの。手に取ってもらってナンボだと思うけど、表紙のせいで手に取りづらくしてるような…。

  • 表紙をどうにかして欲しいシリーズその三……。

  • 高校時代に教師と生徒として出会った二人。
    一緒に暮らし始め、幸せなはずなのに喧嘩になる。
    価値観の違いを上手に埋められず苦悩する日々。


    人の欲って際限がなくて、現状に満足するってことができなくて。

    一緒にいられない時は、毎日一緒にいることに憧れて。

    毎日一緒にいられるようになっても、それだけじゃ幸せじゃなくて。

    人って貪欲ですよね。

    好きなだけなのに、大切だからこその行動が、相手には伝わらなかったり。

    生きていく難しさと向き合う大切さを教えられる作品です。

  • 「背中シリーズ」三作目に当たる男性同士の恋愛モノ。
    文章表現に透明感があるので、
    読者にアブノーマル感を与えないだろうとは思う。
    ただ、やっぱり、前2作の方が好き。(特に1作目が)
    主人公の年齢や職業が変わっただけで、
    男性同士という点に前2作との違いはあまり感じられない。
    それでも、沢木さんの文章は好きですね。

  • 切ない感じの恋愛ものだろうと思って読んだんだけど
    違ったかな。
    相手が異性であれ同性であれ 相手を思う気持ちは
    変わらないって事なんだね。

  • 一般小説と割り切って読む分には素敵な文章なんだけど、女子としては頷きかねるかなあ。これから三浦しをんのように展開していこうと言うのなら、まあ納得はするけど、新風を盛り込むという理由でこれまで書いてきたタチ像ネコ像を入れ替えたんなら、元に戻した方がいい。前二作と『彼女の或る日』に惹かれて今作を手に取った身としては、軸がズレ過ぎていて正直読むのがつらい。
    ただ、センテンスの浮遊感というか、中途半端なところで終わるのに捨て鉢には感じないセンスというか、陶酔感めいた独特の後味は健在。だから結局、構え方の問題なんだろうねー。

  • 「君の背中で~」を読んだときは、姉もカナもそんな好きじゃないなと思ったけど、これの小夜は結構好き。出てくるカクテルがおいしそう。
    読み返したい!と思うのは「君の~」だけど、終わり方はこれのほうが好きかもしれない。

  • 沢木さんの『背中~』シリーズ3作目。

    うーむ。
    私は2作目が1番好きかな。
    今回のは、もうすでに恋人同士で、重要なことを話してくれないっていうのがケンカの原因で、っていう話。
    第三者もいい人だったし。
    てか、いなくてもよかったのでは?っていう登場人物がちらほらで、メインの話が薄かったかなぁ。

    小夜さんいい人。
    あんな感じの女性になりたいなぁ。

    “平行線でもなんでも、とにかく会話するの。わかんないってあきらめて口きかなくなったら、おしまいの始まりだから。 継続は力よ。初めからやるつもりでまた頑張ればいいのよ”

    わかんないならいーや。って、会話をやめちゃう癖があって、
    で後で何でわかってくれないのー!って怒る。
    だって私がちゃんと話さないんだもん、自業自得だわ、って小夜さんの言葉で思った。
    一緒にいたって、わかんないことばっかり。
    それを知らなくていいや、教えなくていいや、じゃ、正午と陽向とか小夜さんと旦那さんみたいになっちゃう。
    会話って、やっぱり大事だよな。


    カクテル呑みたくなった。ちゃんとしたバーで。
    現実とか、ちゃんと考えられるようなお酒の飲み方ってしてみたい。

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