- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784840148917
作品紹介・あらすじ
視界が歪み、記憶が混濁し、暗闇が臭いたち、眩暈をよぶ。
読み手を眩惑する八つの物語。京極小説の本領を味わえる怪しき短篇集。
幽けき『幽談』、ほの冥い『冥談』に続く、「 」シリーズ第三弾。
感想・レビュー・書評
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帯裏
読み手を眩惑する八つの物語。
◎便所の神様ー匂いに眩む
『厠の怪 便所怪談競作集』(二〇一〇年四月)
僕が住む木造の平屋は少し臭い。
廊下の先の暗闇の中を手探りで電気を探した。
心許ない灯りが便所の扉を照らしだす。
便所は汚くて臭くて怖い。
◎歪み観音ー幻視に眩む
『幽』Vol.13(二〇一〇年七月)
ある日、電信柱が曲がっていた。
ペンケースから出したシャーペンも、箸の先端や風呂の水面までもが、ぐにゃりと歪んでいる。
そして、母親の顔も。
◎見世物姥ー高揚感に眩む
『幽』Vol.14(二〇一〇年十二月)
村には楽しいことなどない。
雪に閉ざされる冬は嫌いだ。
しかし、今年は六年に一度の祭りがある。太鼓や笛や鉦が鳴り響き、見世物小屋がやってくる。
◎もくちゃんー人に眩む
『幽』Vol.15(二〇一一年七月)
僕たちを見つけたもくちゃんは、友人の亀山を指差して「もくちゃあん」と鳴く。
もくちゃんの記憶を見たという亀山は、彼は人殺しなのだと語った。
◎シリミズさんー家に眩む
『幽』Vol.16(二〇一一年十二月)
バイトを辞めて貯金が尽きたので実家へ戻った。
久しぶりに暮らす秩父の実家が、私は苦手だった。
この家では、いつも変なことが起きるのだ。
◎杜鵑乃湯ー湯に眩む
『幽』Vol.17(二〇一二年七月)
アクセスも悪く観光名所もない地に建つ巨大なホテルに行った。
外界と遮断された時代遅れの施設を彷徨っていると、屋上の露天風呂に辿り着いた。
◎けしに坂ー記憶に眩む
「リーディングカンパニー」vol.11(二〇一二年一〇月)
親父の法要を抜け出し、寺の裏門から外へ出ると細い坂道があった。
傍にいた老婆によると、この坂を登れば忘れていた記憶を思い出せるのだという。
◎むかし塚ー過去に眩む
電子書籍アプリ『「」談』(二〇一二年一一月)
よしこという見窄らしい女子生徒から漫画を借りた。
夏休みになり、二学期を迎えた教室に彼女の姿はなかった。
僕の手許には汚れた本だけが残った。
*収録にあたり、加筆・訂正がなされています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
期待したようなインパクトはなかった。もっと面白い作家だと思っていたが…
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京極夏彦さんを初めて読んだ。むかし、友達で京極ファンの子がいて面白い面白いと言っていたっけ。何度も読もうと思ったことがあったが、表紙の妖怪?の絵がおどろおどろしくて何となく敬遠していた。
今回、偶然図書館で見かけて借りてみた。表紙が妖怪じゃない!というのも一因あったかもしれない。
文体が独特だなあ。トップバッターの「便所の神様」は小学生の拙い作文を読んでいるような。支離滅裂なような、それでいて分かりやすいような。
よく分からない感想になってしまったが、面白いのです。面白い!
他の作品も小学生、ないし若い世代の視点を通して描かれる話が多かった。
思ったより恐くはないけれどじわじわ来る。クセになる。そんな文体。 -
2012年発行、メディアファクトリーの単行本。8編。理論的でなく、すっきりと筋がつながっているわけでもない。ただ何となく嫌な話。形式としては昔を思い出すものが多いが、昔の記憶の曖昧さって、考えてみれば恐怖だよね。作品の一つのいいぐさでないが、忘れる必要があるから忘れているのかもしれないし。前半の数編はオチが現在にあるが、そういう意味であまり怖くない。
収録作:『便所の神様』、『歪み観音』、『見世物姥』、『もくちゃん』、『シリミズさん』、『杜鵑乃湯』、『けしに坂』、『むかし塚』
初出:『便所の神様』:『厠の怪 便所怪談競作集』(2010年4月)、『歪み観音』:『幽』vol.13(2010年7月)、『見世物姥』:『幽』vol.14(2010年12月)、『もくちゃん』:『幽』vol.15(2011年7月)、『シリミズさん』:『幽』vol.16(2011年12月)、『杜鵑乃湯』:『幽』vol.17(2012年7月)、『けしに坂』:『リーディングカンパニー』vol.11(2012年10月)、『むかし塚』:電子書籍アプリ『「 」談』(2012年11月) -
京極夏彦は、とりわけこの作品なんてエンタメというより純文学なんだ、あたくしにとっちゃ。著者が何処に導かんとしているのかは定かでなく、きっと何処にも導こうとしてなくて、読んだ者なりに曖昧に解釈すればいいはずでしょ。そういう意味で正当な(ん?正統だっけ?)純文学なのだ。いずれの主人公たちもが抱く、あの虚実不明瞭で自己嫌悪を伴った怠惰な心待ちは、自分の内面に確かにある、ある、ある。人を埋めた夢をたびたび観た時期もあって、あれとて本当に夢だかどうだか。この物語では、夢も現も、過去も未来も、生も死も嘘っぱちだから。
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視界が歪み、記憶が混濁し、暗闇が臭いたち、眩暈をよぶ。
読み手を眩惑する八つの物語。京極小説の本領を味わえる怪しき短篇集。 -
なんとも不気味で気持ち悪い、夢か現か、分かるような分からないような、短編集。何だか、読んでいるだけで、手が汚れるような気がしてしまって、食事中は読めない(誉め言葉)。
読んでいると、怖いってなんなのかよくわからなくなる。あるものはあり、無いものは無いというだけなので、ないはずのものがあれば、それはあったというだけのことで。結局は、なんの解釈もしなければ、単なる現象でしかないということか。あとは、快か不快かというだけで。 -
「」談シリーズ。表紙からしてぐらぐらしてくる。
内容も落ちているのか、おちていないのか分からない。
ああ、気持ちが悪い。
なんかもう、温泉の話なんて本当に気持ちが悪い。
さすが京極の世界。