冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ

著者 :
  • 雷鳥社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784844137658

作品紹介・あらすじ

インド北部、ヒマラヤの西外れの高地、ザンスカール。冬になると他の都市をつなぐすべての道が雪と氷に閉ざされるが、厳寒期の1、2月になると、凍結したザンスカール川を歩いて行き来できる幻の道が現れる。この「チャダル」と呼ばれる道を辿る旅は、遠い昔からザンスカールの人々によって受け継がれてきた稀有な伝統であり、世界中のトレッカーにとって憧れの旅路でもある。
しかし、冬のザンスカールの真の姿を見届けるには、チャダルを歩いて辿り着ける場所からさらに奥へと踏み込んでいかなければならないことは、あまり知られていない。
ザンスカールの最深部の山中にある僧院では、「プクタル・グストル」という祭礼が行われると伝えられている。真冬のこの祭りを見届けるため、マイナス20℃にもなる極寒の世界の中、著者が約4週間かけて歩きぬいた苛烈な旅を、詳細に記した紀行文。
ふんだんに掲載された真冬の街、人々、生活を捉えた写真は、資料としても価値のある一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 自分は、チャダルはおろか、雪山にも行ったこともないし、今のところ縁もない。それでも、静まり返った中、しんしんと雪が降り積もるチャダルの風景が目の前に浮かんできた(途中途中に旅の様子を映した写真が入っていることもあるけど)。パドマとゾクパを著者が信頼していることも文章から読み取れたし、そういう人との繋がりの「良さ」が旅の醍醐味の一つだということを改めて感じた。

    おそらくパドマであろう人物の横顔が焚火でぼうっと映し出されている写真がとても印象に残っている。なんだか会ったこともないのに、彼が今もザンスカールで生きている実感を文章と合わせて読むことで感じた。
    そして、最後の「人生に意味があるかどうかの基準がこの世にあるとしたら、それは、その人が、どれだけあるがままに、まっすぐに、自らの人生を生きているか、ということに尽きる」という言葉がとても響いた。厳しい旅を乗り越えた著者の言葉だからこそ、自分に深く響いたのかもしれない。

  • チャダル、行きたくなる。

  • 日常とかけはなれ過ぎて、何と言ったらよいか。行ってみたいが。そう思う時に行くべきとよく言われるが、ちょっとハードル高すぎて。もっと行きやすい所から行くだろうから。

  • いつか行ってみたいが、日程的に諦め続けている場所。この本に描かれた風景が素晴らしくて、ますます憧れが募った。写真が良い。これは本棚に入れて再読しようと思う。

  • インドの北部ザンスカール地方の冬の旅。冬の間、凍った川の上の道(チャダル)を歩けることが特徴。現地人の友を案内人にできていることで成立している旅程。各集落ごとに親類・知人がいないとうまくいかないので、誰にでも可能なものではない。全体的には、行った、見た、書いたという内容。

    旅のハイライトは、バクラ・バオからツァラク・ドあたりまでのチャダルにあるのだろうと思う。この辺を訪れたことのない読者にとっては目新しいのかもしれない。目的であったプクタルの寺院での祭礼は内容薄め。
    こういったプリミティブな生活をしている地域を旅行したときに受ける印象は、皆同じなのだろう。このような生活習慣も遅かれ早かれインド的なものに取り込まれていくのだろうと思う。

  •  昔、インドを旅した時、デリーでよくした話は、「これからどこに行く?」「スリナガルかレーか・・、とにかく涼しいところへ」。結局僕はどちらにも行かなかったけど、北インドは今でも憧れている。

     レーから旅の入り口バクラ・バオまでは車で数時間。道はそこで途絶え、急峻な地形に阻まれて冬の間はその先に行くことはできない。陸の孤島。ただ、厳冬の時期、ザンスカール川が凍ってしまう時期を除いては。

     川の上の氷の道を地元ではチャダルという。そのチャダルを辿ってヒマラヤの麓、チベット仏教を信仰する人々が暮らす、ザンスカールという土地をの最深部までを巡る。土地の人々の家、多くはガイドの親戚の家だが、に泊まりながら、その土地で暮らす人々の冬の生活、信仰がだんだんと描かれる。
     旅の途中から考えるのは、「ミツェ(人生)」のこと。「あれほどまでに強大な自然に囲まれた土地で、わずかな畑と家畜とともにつましく暮らす人生に、意味はあるのか。辿り着くことさえ困難な山奥のゴンパで、瞑想と仏への祈りにすべてを捧げる僧侶たちの人生に、意味はあるのか。」。静かに、著者は答えを見つける。

     この旅の最中もレーと繋がる道路の建設が進んでいた。今頃はもう一年中外界とつながっていて、この冬の旅も、ザンスカールの冬の生活も完全に過去のものとなっているかもしれない。

  • 山本さんの2度目のチャダルの旅、10余年の時を経て様変わりしたチャダル。変わらない友の心、変わりゆく社会、人々、インフラ、、
    旅する人の思いの変化は、チャダルの変化についていけないのだ。というより、今の全然平和でもないのに平和ボケして全然もはや先進でもないのに先進国ヅラしてる日本に暮らしているかぎりどんどん取り残されて、ぼんやりしていたら追い越されてしまう。しかし観光客に荒されているチャダルの入り口を過ぎたらそこは孤高のザンスカール。コロナ、パンデミックという理由で、どこにも訪れることができない今ならいたずらに羨ましいと思うこともなく、落ち着いた気持ちでアツすぎずも温かい山本さんの心持ちで一緒に旅を楽しめる、、しかしザンスカールの冬はこの世とは思えない世界。おまけにいただけた夏のザンスカールの美しい写真集をながめて、凍れる手先を温める思い。

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著者プロフィール

山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとザンスカールに長期滞在して取材を敢行。以来、この地域での取材をライフワークとしながら、世界各地を飛び回る日々を送っている。本書のほか、主な著書に『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)、『インドの奥のヒマラヤへ ラダックを旅した十年間』『旅は旨くて、時々苦い』(産業編集センター)など。『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)で第6回「斎藤茂太賞」を受賞。

「2023年 『ラダック旅遊大全』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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