戦下の淡き光

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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861827709

感想・レビュー・書評

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  • 単純なノスタルジーだけでは語れない、不条理さや生命力をも感じさせる自分だけの特別な「子ども時代」と、それを答え合わせするかのような主人公の成人後の物語。人生の取り換えのきかなさ・一回性を考えると、何が大事で何がそうでもないのかよくわからなくなってくる。

  • 第1部の子供時代、父母の出て行った後姉と後見人の蛾たちとの交流。そして第2部、大人になって母の人生を辿り発見する形で第1部の出来事がまた違った形で浮かび上がる。この巧みなストーリー展開、描写の美しさ、隠された心情のほのめかしなど読み応えがあった。

  • フェロンはどうした?

  • オンダーチェ「戦火の淡き光」http://www.sakuhinsha.com/oversea/27709.html 読んだ。よかった。キャッチーな出だし、内容もミステリー色が強くて実際ちゃんと結末もあるんだけど、とにかく文章がノスタルジックで映像的で、読後の余韻がものすごい。ちょっとFadeがかった質感の画面で映画になったらきれいだろうな(おわり

  • 主人公が14歳の頃、両親は仕事で外国に行くことになる。姉と二人はかつての母の知り合いらしい人物2人に任せられる。母親はスパイ活動をしており、その仲間であり、家にも普通の感じじゃない大人が出入りするようになる。粗筋から手に取るも。この年代の都合の良い時だけ大人扱い、または子供扱い、多感なのに不安な毎日、寄り処というか、一人前に見えて、自分の意見を聞いてくれる大人に盛大に寄りかかりたくなる。それは決して肉親とは限らない。全体的にこういう、もやもやーんとした作風。

  • オンダーチェ「戦火の淡き光」http://www.sakuhinsha.com/oversea/27709.html 読んだ。よかった。キャッチーな出だし、内容もミステリー色が強くて実際ちゃんと結末もあるんだけど、とにかく文章がノスタルジックで映像的で、読後の余韻がものすごい。ちょっとFadeがかった質感の画面で映画になったらきれいだろうな(おわり

  • 「たとえ今、あのなかの誰かの行動を思い出そうとしても、浮かび上がるのは非現実的で順序を無視した一瞬一瞬だけだ。」
    誰かのすべてを知ることはできない。
    たとえそれが母であっても。一時期一緒に暮らした人であっても。

    戦後の混乱とスパイであった母。
    1つ1つのエピソードだけがすべてて、重なり合ったときにどきりとすることもある。重なりを見つけることができずに過ぎてしまったこともたくさんある。

  •  主人公ナサニエルの少年時代と大人になってからの、自身の出来事と家族の秘密が、回想録のように語られる。

     戦時下のイギリス、仕事の関係で父と母がシンガポールへ赴任することになり、十四歳のナサニエルと姉のレイチェルは曰くありげなお守り役たちと一緒に家に残される。さらに、母親が実際にはシンガボールには行っておらず、子どもたちに嘘をついて家を出たことを知る。
     学校になじめないまま、怪しげなお守り役と夜な夜な非合法な商売に繰り出し、名も知らぬ恋人との逢瀬を重ねるナサニエルだが、少しずつ少年から大人になる過程と、戦時下のイギリス(特に運河やドッグレース)の猥雑で熱のこもった風景が混ざり合って、強い印象を残す。
     やがてある事件が起きて、第一部とナサニエルの少年時代が唐突に終わりを告げる。第二部では大人になったナサニエルが、母親の過去と徐々に対峙していった様子が描かれるのだが、冒険心に富んだ第一部と違って、ナサニエルの勝手な想像シーンが入り交じり、やや混乱した回想になっていたのが残念。

     美しい余韻を残す作品を書ける作者であることは確かだが、前作『名もなき人たのテーブル』には及ばなかった。

  • 第一部は第2次大戦中のロンドン、ナサニエルは14歳の時、母親が父親の海外赴任についていくと言って、17歳の姉レイチェルとロンドンの家に残される。母親が後見人としてつけてくれた男ば蛾"のような男で、姉弟はそうあだ名を付けた。そして、蛾のもとに集まる怪しい仲間たち。姉弟は、その不思議な世界に少しずつ慣れていく。
    第二部は、第一部の最後にさらわれそうになった姉弟が母親の仲間に救い出された後、28歳になったナサニエルが情報部で仕事をするようになるところから始まる。そこで母親がスパイであった事を知り、その功績を密かに調べ始める。
    徐々に明かされる母親の本当の姿と子どもたちへの思い。姉弟の周りにいた怪しげな大人たちの本当の姿。かつてナサニエルが愛した少女の現在。知れば知るほど深い愛情とギリギリの選択に感動する。

    突飛な設定と言ったしまえばその通りかもしれないが、スリリングな場面もたくさんあるのに、読後感は清々しさと落ち着きを感じる。良かった。

  • 「1945年、うちの両親は犯罪者かもしれない男ふたりの手に僕らをゆだねて姿を消した。」冒頭からすっと引き込まれる巧みさ。男たちと過ごす一風変わった子供時代の冒険の物語でもあり、謎に満ちた母の人生を追う物語でもある。主人公と恋人アグネスと犬たちが過ごす一夜など美しいシーンが心に残る。

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著者プロフィール

マイケル・オンダーチェ(Michael Ondaatje)1943年、スリランカ(当時セイロン)のコロンボ生まれ。オランダ人、タミル人、シンハラ人の血を引く。54年に船でイギリスに渡り、62年にはカナダに移住。トロント大学、クイーンズ大学で学んだのち、ヨーク大学などで文学を教える。詩人として出発し、71年にカナダ総督文学賞を受賞した。『ビリー・ザ・キッド全仕事』ほか十数冊の詩集がある。76年に『バディ・ボールデンを覚えているか』で小説家デビュー。92年の『イギリス人の患者』は英国ブッカー賞を受賞(アカデミー賞9部門に輝いて話題を呼んだ映画『イングリッシュ・ペイシェント』の原作。2018年にブッカー賞の創立50周年を記念して行なわれた投票では、「ゴールデン・ブッカー賞」を受賞)。また『アニルの亡霊』はギラー賞、メディシス賞などを受賞。小説はほかに『ディビザデロ通り』、『家族を駆け抜けて』、『ライオンの皮をまとって』、『名もなき人たちのテーブル』がある。現在はトロント在住で、妻で作家のリンダ・スポルディングとともに文芸誌「Brick」を刊行。カナダでもっとも重要な現代作家のひとりである。

「2019年 『戦下の淡き光』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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