- Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863320505
感想・レビュー・書評
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「バナナフィッシュ日和」「コネチカットのアンクル・ウィギリー」
かわいそうできれいで、もうだいすき。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
高校時代、「バナナフィッシュにうってつけの日」だけ読んで、意味がわからない!と放り出してしまったまま幾年。
柴田元幸信者として、彼の訳なら読まねばと重い腰を上げて再読したのだけど、一編目で放り出した高校生の自分は何ともったいないことをしたのか…。
いや、当時の私が続けて読んでもこれを魅力的に思ったかはわからないけれど。
「コネチカットのアンクル・ウィギリー」が、もうどうしようもなく私の心を潰してたまらなかった。
涙出た…。
他の作品も胸に迫るものが多く、最後の「テディ」が、その結末の鮮やかさを含めてまた見事。
一つには戦争、もう一つには人と人とが通い合う・合わないのほんの紙一重のこと、ほぼ全編にそれがあるように思うけれど、この作品に解釈ということに意味があるのかどうか。
特にバナナフィッシュについては相変わらず意味はほぼわからないものの、これはこのまま読んで何か言葉には表しがたいものを感じた、それでいいんじゃないかと今は思う。
一言でこの作品集を表すなら、愛おしい、だと思った。 -
野崎孝さんの訳より、もっとやわらかい感じ。すんなり文章が入ってくる。良くも悪くもゴツゴツした感じはうすまってる。
やはりこの作品は、なにか違和感だとか諦観だとか人とのつながりを求める心だとか求めない心だとかを、さりげなく上手に描いているから素晴らしいのだなと思った。
ふとした瞬間に、登場人物がどのように妥協して生きていったのかが垣間見えるときがある。その瞬間がたまらない。
あとがきにあった「丸腰の個人」というフレーズに感心した。確かに、この物語の登場人物に当てはまる言葉かもしれない。 -
2011.10.25 読了。
以前の訳より読みやすかった。 -
◎笑い男
◎エズメに 愛と悲惨をこめて -
苦い味ばかり。だけど印象に残ります。
「だから、どうして姉さんのことをそういう風に言うのかって聞いてるのよ」 -
サリンジャーのサリンジャーたる所以は、「閉塞感」という目に見えない鬱屈をヴィヴィッドに表現できることではないか。
例えば1人の女がペディキュアを塗りながら電話にでるとき、カウチに寝そべって、今にも酒がこぼれそうな程自堕落な様子で語らう旧友達、威丈高に振る舞ってたチーフが振られしまった風情など、とにかくその人の情景が「全体」で伝わってくる感じ。
多くの作家がそうであるように、文章を追っていく中で得られるヴィジュアルはだいたい、表情と声音。足先や腰つき、肩の動かし方などささいな仕草が連想されにくい。
そういう小さなことを見逃さなかったサリンジャーはいろんなことが見逃すことができない存在として疎ましく思っていたのかもしれないなぁ。
ご冥福をお祈りします。 -
アメリカの青春文学を、若いうちに読んでおこう。
って、ダイニングバーで隣り合ったかっこいい女性に誘われ、読んでみました。
ライ麦畑でつかまえて、の作者サリンジャーの短編集。
近々、原書も手に入れたい。
話の筋をおうのが難しくて、謎解きみたいだけど、
最終的に味わい深く、割と絶望的な感じの結末に落ち着いている。
一話ずつ、本を閉じて、瞼も閉じて、考えてしまう。
『戦争』が、若者のこころに投影すると、こんな像を結ぶのか。
↓なんか、こんな言葉が書き留めてある。なるほど、と思ったんだろう。当時の自分は。
幸福と悦びの一番大きな違いは、幸福は固体で悦びは液体だということである。
(250頁『ド・ドーミエ=スミスの青の時代』) -
J.D.サリンジャーのナイン・ストーリーズを読みました。新しい日本語訳で発売されていたので、改めて読んでみました。サリンジャーは私の気に入っている作家の一人なので、期待して読んだのですが、青春期の登場人物たちの物語が、以前(と言っても20年以上前でしたが)読んだときより頭にすっと入ってこないような気がしました。単に私が歳をとってしまってサリンジャーの物語を楽しめなくなったのか、今回の日本語訳が私に合わなかったのか。確かに若いころは、ヘッセ、サリンジャー、夏目漱石、遠藤周作などの重めの小説を読んでいましたが、最近は軽めの小説しか読まなくなったからなあ。