螺旋

  • ヴィレッジブックス
3.78
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  • Amazon.co.jp ・本 (614ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863322233

作品紹介・あらすじ

絶妙な語り口、緻密なプロット、感動のラスト。大ベストセラー小説『螺旋』の作者トマス・マウドは、本名はもちろん住んでいる場所すら誰にも明かさない"謎"の作家。「なんとしても彼を見つけ出せ!」出版社社長に命じられた編集者ダビッドは、その作家がいるとされる村に向かう。一方、麻薬依存症の青年フランは、盗んだバッグに偶然入っていた『螺旋』をふと読み始めるのだが…。いったいトマス・マウドとは何者なのか?2つのストーリーが交錯する時、衝撃の事実が明らかになる!驚異のストーリーテラーが放つ、一気読み必至の長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • ★★★
    コーアン出版社に勤める編集者のダビットは、社長のコーアンに呼ばれ秘密の指令を受ける。
    コーアン出版社は、謎の作家トマス・マウドによるSF大河小説「螺旋」の大ヒットにより一流出版社の仲間入りをしていた。
    定期的に続編を送ってきたトマス・マウドだが、ここ数年は配達が止まっている。実はトマス・マウドの正体は誰も知らない。ダビットの指名は、トマス・マウドを探しだし、続編を送らせること。
    コーアンの調査により、トマス・マウドはブレダレッホという田舎の村に住む六本指の人物だと推測される。
    ダビットは妻のシルビアと共にブレダレッホへ向かう。これは夫婦の将来を決める旅行でもある。

    ダビットとシルビアの着いたブレダレッホには、元船乗りエステーバン、死病の床に就きながら元気な時のように村人に慕われるその妻アリシア、シングルマザーのアンヘラとその息子トマスたちに会う。

    コーアン社長の秘書エルサは離婚したばかりの40代の女性。
    ダビットに勧められた「螺旋」を手に取り、今までの人生を思い起こす。

    麻薬中毒者のフランは、ひったくったバックに入っていた「螺旋」を手に取り、自分が本を読んでいた頃のことを思い出す。

    彼らの人生、彼らの生活。

    1冊の本は確実に数人の人間の人生を変えていく。
    ★★★

    小さな奇跡と善意と偶然が重なって、未来が確実に良い方に変わっていく。実に素直で前向きな1冊。
    しかしダビットくんは、トマス・マウド探しでド素人らしく直撃しては撃沈しを繰り返し、
    1回目はともかくさすがに2回目はもうちょっと方法考えようよ、六本指の人間が複数出てきた時点で確認方法変えようよなどと本に話しかけたくなってしまう(笑)

    作者はスペイン人。これを書いたのはまだ20代の時で、初めて出版された小説らしい。
    主眼者が移り変わる描写は唐突だともと感じたのですが、20代ほぼ処女作だからかなーとは思いました。

  • あー面白かった。エンターテイメントとして読書をするならこういう本だけ読んでいたい。600ページの長編だが、一度手に取ったら続きが気になって離せなくなりあっという間だった。
    編集者が正体を隠した謎のベストセラー作家を探しに行く、枠組みとしてはミステリー(というのか?)で、エンタメ小説だ。ストーリーテリングがとにかく巧み。寒村で6本指の作家を探すなんて簡単、と乗り込むとそこらじゅう6本指の人たちが…そこで起きるドタバタ劇など意外性に富み、存分に愉しませる。また、それだけではない。編集者と妻、死にゆく妻を抱えた興味深い村人、また、後半並行して語られる麻薬中毒者の青年や友人たちなどのキャラクター設計が実にいい。彼らはみな生き生きとし、自分の声を持って語る。この暖かくポジティブな世界観に、この作家の人柄や個性を感じる。
    また、多数出てくる作家名や書物のタイトルから伝わる熱い読書愛も心地いい。私は作家・編集者・文壇ものは好きではないのだが・・・そりゃ作家という職業にとって「工作機械の営業マン」より編集者のほうが遥かに書きやすいのだろうが、そんな特殊な狭い世界、内輪ネタすぎるだろう・・・、この小説においては読書好きの一人として楽しんだ。
    作家は1979年生まれのスペイン人、若い現代作家が日本に紹介されたのが嬉しい。スペイン語翻訳で実績のある木村栄一氏、どんどん面白い作品を発掘して下さい!

  • 1年前に読み始め、半分読むのに1年かかりました。
    それが、不思議なもので先週、たったの2、3日で読み終えました。
    初めはそれほど惹き込まれなかったのです。典型的な都会人でエリートのダビッドが田舎に来ていかにも典型的な失敗を繰り返す、都会とは違い、ゆったりした生活を送る人々やトマスマウドを取り巻く素晴らしく優しい人たちとのやりとりが暫く繰り返される、少し退屈になり読むのを止めていました。
    読むのを再開してからは、1つの本によって色々な人生が交わって変わっていくのに惹かれてどんどん読み進みました。トマスマウドとは誰か?というよりは、何か?と問う方が良いかもしれません。

  • 正体不明の小説家を探して、編集者が素人探偵と化して奮闘する話。訳が良いのかすいすい読めるので、何かを一気読みしたいときにおすすめ。600ページと長めだけれど、最後までダレない面白さだった。登場人物がほぼいい人たちかつ各人にびっくりするほど良い結末が用意されていて、気持ちよく本を閉じることができる(個人的にはそこに少し興を削がれたとも言える。好みの問題です)。

    読み始めてすぐに、なんだか作者は精神が健全ないい人そうな感じがしたのだけれど、あとがきで木村さんが「控え目で感じがいい」と書いていて、やっぱりなあと思った。

  • 世界中の読者を夢中にさせるベストセラー小説、『螺旋』。謎につつまれたその作家の正体をさぐるため、編集者ダビッドは観光客を装って僻地の小さな村へ。
     といってもミステリー色はあまり強くなく、あいまいな手がかりに振り回されて、妻に捨てられそうになったり、木から落ちたりと、次々と災難に遭遇するダビッドのへっぽこ探偵ぶりがユーモラスに描かれる。ダビッドが、つつましい愛情にもとづく生活の価値を見出し、作家の正体にたどりつく過程に、麻薬中毒から抜け出そうともがくフランの物語が絡み、一つの物語のつくり手、送り出し手、受け手が、それぞれに大切な人との関係を再発見していくことになる。
    物語をめぐるメタ物語的なものを想像していたのだが、都会と田舎、金を得るだけの労働と、つつましやかな愛情につつまれた生活を対比させて、最後はすべてがおさまるべきところにおさまるという、わりあいにシンプルな物語だ。へんにひねらないところが好感はもてるが、いささか保守的な感じがしないでもない。

  • 『螺旋』の作者を探す物語と、『螺旋』を手にした人の物語。2つの物語が”螺旋”のように1点に、とは言い過ぎでしょうか。前者のダビッドは、最後まで自分を生活を変えることなく仕事?を続けた。一方後者の登場人物:エルサ、フラン、レケーナは、それぞれがそれまでの生き方を”変える”行動に結びついている。
    物語を語る口、つづる手には神が宿る。本を創る人、本を編る人、本を読む人は、「本」でつながり、本って素晴らしい、と、感じさせる内容でした。
    印象的なフレーズは:
    ★作家と作品を比較した場合、どちらがより重要だろう。 作家はいずれあの世へ旅立つが、作品は永遠に生き続ける。
    ★一人の人間と本とでは、どちらがより大切か? 答えは言うまでもなく人である。
    ★友達というのは時に別れ別れになるけれども、だからといって友人でなくなるわけじゃないんだよ
    ★子供に将来何になりたいって訊いたら、みんな口をそろえて、サッカー選手、宇宙飛行士、消防士って答えるはずだよ。だけど、幸せになりたいなんていう子はいないよ。…。何か職に就けば幸せになれると思いがちだけど、そんなことはない。時には、幸せと仕事が相容れないことだってあるんだ。
    ★アイデアはどんな風に生まれてくるんですか、…、信じてもらえないだろうが、時々むこうからやってくるのが感じられるんだよ。…、あら足が近づいてくるような感じなんだ。

  • 2010-3-27

  • 読書って大事
    ほんとそう思えるよね
    文中にも出てくるけど、引用される小説があると
    あーやっぱりその編の本もよまなくっちゃってなるのわかるw
    最後の顛末はからみあったものがすとんとほぐれる感じがすごく良い!

  • 愛情深い物語を読んだ。
    現代的なのに、どこかファンタジックでおとぎ話のような雰囲気がある。

    善き人たちばかりなのだけど、安直ではないし、生命を吹き込まれた登場人物たちなので、ひとつひとつのエピソードにひどく心を動かされた。

    人生は悲しみが多いけれど、幸せを見出だす底力を人は秘めていることを信じられる気がする。
    素直な気持ちで受けとめました。

    自分にとっては、あまりめぐり会わないタイプの貴重な小説かもしれない。
    大切なのは人である。素晴らしかった。

  • 話の流れは時間軸に沿って展開される、主に三人のそれぞれの人生。
    3つの人生が螺旋のごとく、交わらずに中心を向いて動いていく。
    「どこかで交差するのか」と期待もしたが、無理にくっつけた感のあるラストは、しっくりせず作りすぎ。
    ミステリー要素もあるが、もう少し人生を深く描き進んでくれたら…と思ってしまった。

    それでも一気に読みたくなるドライブ感は良い。

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