南ポルトガルの笑う犬―アルファローバの木の下で

著者 :
  • 書肆侃侃房
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本棚登録 : 29
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863850019

作品紹介・あらすじ

劇団・天井桟敷出身の著者が、ポルトガルで様々な人と犬に出会い、その味わい深い日々を綴った珠玉のエッセイ。ポルトガルの小さな漁師町で、「ニッポン人である」と悟った著者。無鉄砲で無防備、無知こそが与えてくれた幸福だと言い切る。その小さな物語が共感を呼ぶ。

感想・レビュー・書評

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  • 書肆侃侃房の本。
    ポルトガルの魅力が伝わり心地よく読めました。
    一度行ってみたくなりました。

  • 南ポルトガルの小さな街に住む著者による16編のエッセイ。

    故あって、ヨーロッパの端っこの漁師町に住むことになった著者。
    外国で暮らすということは、予想もしないような異質なものの中に放り込まれることである。それゆえの鮮烈な楽しさはもちろんある。しかし、それゆえの深い孤独もまた付きまとう。

    ポルトガルというところは隣国スペインとは全く違う気質を持つ人が住むという。
    スペイン人はどこか開けっ広げで、知り合ったらすぐに招き招かれることも珍しくない。だが一方でがちゃがちゃと騒がしく、治安の面でも心配がある。
    ポルトガル人は容易に心を開くことはなく、よそ者にも不愛想だ。だが実は義理人情に厚く、涙もろい。どこか日本の下町を感じさせる風情である。

    ポルトガルの小さな街には、たくさんの犬たちが闊歩していた。
    この街では犬はたいてい放し飼いで、汚れっぷりから野犬かと思えば、実は飼い犬だったりするのだという。中には、気が向けばある家で数日過ごし、ふらっといなくなってはまた別の家に飼われている「自立」した犬もいる。そんな彼は街の人々みんなに愛されている。
    犬たちは、たいてい愛想よく、よそ者もすぐ受け入れて、「ども、ども、奥さん」と、にこっと笑って挨拶をしてくる。

    犬とは異なり、住民たちは用心深かった。東洋人が住民に受け入れてもらえるまでには時間が必要だった。
    そんなわけで、著者がまず友人となったのは、やはり異邦人が多かった。
    皆、それぞれの事情を抱え、この町に流れ着いた。
    抜けるように青い空の下、それぞれの生を生きる。
    抜けるように青い空の下、それぞれの孤独を抱える。
    彼らの人生を包み込むように、南の陽射しが降り注ぐ。

    著者がこの地に住み、14年。
    無骨なこの町で、やりきれぬ思いもあったけれど、気がつけば「かたじけない」ほどの美しさの中で暮らしてきた。
    アルファローバとは、地中海沿岸に自生する常緑樹である。この大きな木の作る陰は、強烈な陽射しをそっと遮る。
    とりどりの季節の花に彩られ、屈託なく笑う犬に癒され、著者には、徐々にポルトガル人の友達もできていく。
    異国に住まうということは、どこかに埋められぬ空白を抱えながら、新たな毎日を生きていくことである。
    著者が過ごした14年のあれこれが、見知らぬ国のことでありながら、どこか懐かしく、どこか愛しい。

  • 海外暮らしのエッセイは、日本との違いを強調する本が多いが
    (それも面白くて好きだけど)、この本は本当に暮らしのエッセイ、
    という感じで、海外の話なのに親近感がわく。
    他の海外暮らし本が色とりどりの花のような雰囲気とすると、
    この本はさらさらと流れていく水のような雰囲気。
    心地よく読めました。

  • 代官山蔦屋書店で見かけて。

  • 漁業関連の仕事をしているご主人と、ポルトガルに住む事になった筆者。
    その前に住んでいたイタリアと国民性は大違いで、なかなか打ち解けられる人に出会えない。結局、仲良くなったのは同じ外国人と犬たちだった。
    そんなポルトガルでのアレコレ。

  • ポルトガルに住む日本人のエッセイ。
    海外暮らしの良いところだけじゃなくて、切ない話、寂しい話、そして、それがあるからこその嬉しい話が、さりげなく書かれていました。


    海外暮らしを書くエッセイ集というと、意気揚々と話すステキな体験談という印象を持ってしまうけれど、この本は違ってた。
    最初の方で、40代でポルトガルに住むことになって、ポルトガルで還暦を迎えた、と書かれていて、あぁ、本当に普通に生活として海外暮らしをしている人の話なのだな、と、なんだかとても嬉しくなりました。

    旅行でしか行ったことのないポルトガルの、本当の姿をかいま見ることができました。

    自分の話になってしまうけれど、海外に何年か住み、結局現地の友人を作ることもなく、日本ばかり見て生活していた私には、このエッセイのような生活や感覚には出会うことができないなぁ…と、少しの憧れと、憧れとは言っても挑戦したくないなぁという気持ちを持ちながら読みました。

  • あたたかい話。変に現地に溶け込んで私達楽しんでます感ありありの本じゃなくて、本当の苦労と亀の歩みのような一歩一歩感が。

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著者プロフィール

1946年、東京生まれ。劇団「天井桟敷」の創立メンバー。
19歳で構成作家に、以後、テレビドラマの原作、脚本を手がける。
独身時代のパリ、ローマに始まり、結婚後はカナダ、ニューヨーク、メキシコ、モロッコ、スペイン、最後の20年は南ポルトガルの小さな漁師町に暮らした路傍の主婦。2015年に帰国、伊豆在住。
脚本/「親にはナイショで」「東京ローズ」他。
舞台/「アカシヤの雨に打たれて」
著書/『私は指をつめた女』(文春ネスコ)、『南ポルトガルの笑う犬』
『リスボン 坂と花の路地を抜けて』(書肆侃侃房)など。

「2023年 『寺山修司 彼と私の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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