カルチャーセンター

著者 :
  • 書肆侃侃房
3.42
  • (4)
  • (2)
  • (2)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 92
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863855137

作品紹介・あらすじ

松波太郎はそこにいた。
カルチャーセンターで共に過ごしたニシハラくんの未発表小説『万華鏡』が収録され、作家や編集者たちから寄せられたコメントに、松波太郎の説明責任までもが生じてくる文章と空白の連なり……松波太郎は、ニシハラくんに語りかける。「どうかな? これは何だろう? 小説なのかな?」

松浦理英子さん推薦!
「小説を書きたいという欲望に憑かれていた若くほろ苦い日々を、哀惜をこめて振り返る松波太郎は本物の作家である」

これはすべての作家が通って来た文学的青春への鎮魂の書である。小説とは何かも言えないまま、ただ書きたいという欲望に憑かれていた時代への。
――松浦理英子

小説のわからなさを、そのわからなさと共に生きていくことを、ひたすらに書いている。この小説を読み終わりたくないと思った。
――柴崎友香

カルチャーセンターは、社会で帰属する場を離れて〈個〉となった人と人が、遠い憧憬を胸に秘めて集う。それが稀に奇跡のように幸福な交流を、この地上にもたらす。
松波さんはその鎮魂と再興のために、この小説を、みんなの力を借りて作り上げた。
(この推薦文わかりにくいですか? 読むうちにほぐれて、あなたを照らす光になるはずです。)
――保坂和志

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    「カルチャーセンター」は「万華鏡」である

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    松波太郎はそこにいた。 カルチャーセンターで共に過ごしたニシハラくんの未発表小説『万華鏡』が収録され、作家や編集者たちから寄せられたコメントに、松波太郎の説明責任までもが生じてくる文章と空白の連なり……松波太郎は、ニシハラくんに語りかける。「どうかな? これは何だろう? 小説なのかな?」

    ⚫︎感想
    すごい小説だった。

    まず「タイトル」の「カルチャーセンター」には、さまざまなバックグラウンドの人々が一ヶ所に集まる。その時点で「万華鏡」を思わせる。

    松波太郎さん自身が登場し、西原康晃さんの未発表作である「万華鏡」を内包した小説…という体のメタ構造小説なのかなと思い読み進めていくと、後半にはこの「カルチャーセンター」と「万華鏡」の書評が現小説家や編集者らによって書かれている。それを読んでいくと、あれ?これは本当の話なのか?となり、ググってみたら、実際に「万華鏡」は西原さんによる創作であり、ほとんどが本当のことなのかとわかってきた。

    「万華鏡」と名付けられた西原さんの作品は、万華鏡のように一人の女を色々な角度から語る、その語り手もまた彼女の一部であり…という構造。さらに多くの書評があることで多角的に「万華鏡」を照らしている。日の目を見ることのなかった作品が、こうしていろいろな人の目に触れている。そしてそれを包むその作品を内包した「カルチャーセンター」自体がもう一回り大きい万華鏡となり、その大きな万華鏡を見るのが、読者の私たちだ。なんてすごい試みなんだろう。「カルチャーセンター」は「万華鏡」本である。

  • 理解に難かったり、メタかと思えば超絶リアルだったりで、展開というよりも時系列を追う苦しさでニシハラの死と彼の描いた「万華鏡」で、私と彼女とその他の人格と周りの人々と事件を追体験した上でさらに作者の「カルチャーセンター」がそれを内包し、いつの間にか書評に入ってしめ括りにまで到達。こんな本は読んだことないが、かなり複雑でマニアックなものに触れて興味深かった。

  • カルチャーセンターの小説創作クラスで出会った著者とニシムラ君とその他の人たち。ニシムラ君が発表した小説「万華鏡」を絶賛するもクラスの他のメンバーは共感を得ない。小説家を志す者たちと創作の苦悩と理想が、小説内小説、小説内評論などがメタ的に融合して虚実が綯い交ぜになった構成は斬新。

  • すみません、正直よくわからなかったです。どこまでがフィクションなのか脳を揺さぶられる感じは嫌いではないですが、別にそこまで目新しいものでもないし。。
    こういうのがいわゆる「文学」なんでしょうか?途中何度も放り出しそうになりました。
    もしかしたら面白いのかもしれないけど自分にはそれを見いだすことができませんでした。残念。

  •  久しぶりに、まったく刺さらない、手に負えない作品だった。

     小説を書くカルチャーセンター通いの生徒たちの、とある若者の作品に対する論評のやりとりからスタートし、主人公(というか著者)とその若者を中心に話は展開するのだが・・・。

     まったくやりとりかストンと入ってこない。会話の多い読みやすそうな字面なのだが、その会話の途中で発話者当人以外の思いが入る表現になかなか馴染めない。

    「まぁ相対的な目標に立ったことがないんで」という言い方が何となく彼らしい。「大変かはわかりませんけど、すくなくとも明日は」
    「うん」

     こうした違和感を敢えて喚起させるように書いているのか?という部分が多く、それがおそらく、新しい小説表現を生み出そうと四苦八苦するカルチャーセンター通いの小説家未満の物書きたちの足掻きを見せられているかのよう。

    「小説においては強烈なアンチの存在もまたその小説の真価を高める」

     と、講師が指南していることを、そのまま読者にその存在になってほしいというわけでもなかろうが、すんなり読者を小説世界に取り込もうという雰囲気が感じ取れなかった。

     我慢して我慢して読み進み、件の若者の問題小説が本書の中で小説内小説として丸々掲載され、その後は、その書評の羅列となり、「はぁ??」となって本を閉じてしまった。

     どうやら、その書評も問題となる小説『万華鏡』のことだけではなく、そこに至る、すなわち本書『カルチャーセンター』の前段部分も含めての書評らしい。

     そもそも、小説はフィクションだ。いかに読者を欺くかが筆者の腕の見せどころではあるが、これは欺かれたのかなんなのかも分からない、ねじれた世界観に、なんともいえない消化不良しか覚えず。かといって、もう一度、最初から読み返そうかという気にもならない作品だった。

    “強烈なアンチの存在”が、作品の真価を高めるというなら、どうぞどうぞ。

  • 小説家を目指してる人とかには面白いのかも。
    私には、一章以降は難解で読み進めるのが難しかった。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

1982 年生まれ。小説家、臨床家。大東文化大学中退、宇都宮大学卒業、一橋大学大学院言語社会研究科修了。東洋鍼灸専門学校卒業( 鍼灸あん摩マッサージ指圧科) 中国・北京中医薬大学短期研修、都内の治療院数ヶ所での勤務・研修を経て2018 年より豊泉堂を開院。小説家としては2008 年「廃車」で文学界新人賞受賞、2009 年「よもぎ学園高等学校蹴球部」で第141 回芥川賞候補、2013 年「LIFE」で第
150 回芥川賞候補、2016 年「ホモサピエンスの瞬間」で第154 回芥川賞候補。『LIFE』( 講談社) では野間文芸新人賞を受賞。著書に、『本を気持ちよく読めるからだになるための本』(晶文社)、『カルチャーセンター』『そこまでして覚えるようなコトバだっただろうか?』(書誌侃侃房)など。

「2024年 『背中は語っている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松波太郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×