方舟

  • 太田出版
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784872335545

感想・レビュー・書評

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  • 現実に在る終局というものはアルマゲドンの隕石みたいに分かり易い形ではなくて、多くの場合この漫画の中でサーーっと降り続ける雨のようにただ淡々と忍び寄ってくるものだろう。

    群像劇的な手法で様々な人間が描かれるが、僕がこの漫画で一番恐ろしかったのは明らかに目の前にまで致死的な危険が迫っていても、フワフワしたままなんとかなると他人事のように考えていて死ぬまで自分のことを当事者として本気で考えることのできない人々の存在だった。

  • ハリウッドは世界は一気に破滅すると唱えるが、この本のようにジワリジワリと破滅することもありうる。
    そしてジワリジワリと破滅する時にはヒーローは現れない。
    世界だけではない、国も、企業も、家庭も、個人も、ジワリジワリとくる破滅には逆らえない。
    怖い。怖すぎる。
    トラウマになる。

  • まさしくサブカル的、といえばいいのかな。氏の描きたい世界観が一冊かけてだらだらと、しかしながら確かな鋭さを持って伝わってくる。注目すべきはその表現力だろう。ノアの箱舟の神話になぞらえ、世紀末の時世にあった場末感を表現する。突然降りやまぬ豪雨に見舞われ、水没しゆく都市。その災害を発端に脆くも崩れゆく人の精神のうねり、絶望感をコミカルに、ふわふわと滑稽に描く。この作品にどことなく漂う軽さが、この作者の特徴であり、作品一番の見どころだと思う。

  • 延々と降り続く雨がもたらす緩慢な滅び。ノアの方舟を題材に世界の崩壊を描いていく。

    2000年に出版された作品で、先の見えない平成不況への不安か、単純に世紀末への不安か、当時何を意図して描かれたかはわからない。しかし、いまこの2013年という時に読むなら、そこで描かれるのは明らかに3・11後の世界であり、雨は原発の放射能そのものである。多くがその可能性を否定しつつ、しかし皆が僅かながらにでももしかしたらと思ったであろう核の惨禍。大丈夫、大丈夫と言い聞かせながら、じわじわとそして着実にせまる終末。終わりはある日突然カタストロフとしてやってくるわけではなく、日常と地続きにゆるやかに実現する。事後的にみればその予兆も対処の時間もあったはずだが、誰もが目をそらし続け、気づいた時にはとっくに手遅れとなっている。

    そしてなにより、そこには希望が入り込む余地はない。戦災にしろバブル崩壊にしろ宇宙人の侵略にしろ、物語に描かれる崩壊には焼け跡からの再生という希望、あるいは一発逆転的な希望が常に含意されている。しかし、しりあがり寿はそのような生易しい希望には与しない。緩慢な衰退ののちやがてすべてが死に絶えるという確信、カタストロフよりもはるかに冷酷な死のビジョンだけがそこにはある。
    しりあがり寿には、3・11を直接に描いた傑作である「あの日からのマンガ」がある。これは原発事故と現在進行形で向き合った結果であるが、10年も前にその想像力だけでものされた本作もまた3・11を考えるうえで外すことのできない作品と言える。

  • この期に及んで救いだと?ってな感じの一冊

  • 個人的には「ジャカランダ」とならんでしりあがりマンガ傑作の一つだと思います。現代人の「死」に対する見つめ方をしりあがりさんなりによく表現していると思います。

  • 建築家の乾久美子さんの推薦図書になっていたので読みました。絵は正直、しりあがり節なので評価しづらいのですが、その絵で、これほどまでに人間の死を前にした色々な感情、ドロドロ感を出せるのはすごい。読むべし!

  • しりあがりさんの中で一番好きです。

  • 世界の終わり。
    壮絶だ。壮絶なのだけれど、誇張などないような。世界の終わりを迎える私たちは、ここに書かれた登場人物のだれかになるのだろうと思った。リヤルの果て。

  • たぶん、そう遠くはない
    未来の。
    この世の、終末。

著者プロフィール

1958年静岡県生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン専攻。1981年食品メーカーに入社、宣伝・商品企画に従事する一方、漫画家としても活躍。1994年専業漫画家となる。2000年『時事おやじ2000』(アスペクト)、『ゆるゆるオヤジ』(文藝春秋)にて第46回文藝春秋漫画賞を受賞。2001年『弥次喜多in DEEP』(エンターブレイン)にて第5回手塚治虫文化賞「マンガ優秀賞」を受賞。

「2006年 『本当は知らなかった日本のこと 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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