わたしのままでママをやる

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784872905526

作品紹介・あらすじ

精神科医がサポートする濃い女子会。産むことについて、子育てについて、本音で語りあう。3・11後、いま、命の話、母の話。

感想・レビュー・書評

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  • 「わたしのままでママをやる」は、精神科医・斎藤学さん、よしもとばななさん、内田春菊さん、中村うさぎさん、倉田真由美さんの対話を収録した本です。第一部は子育てについての対談で、第二部は「多様化する母たち」のテーマで対話された内容が収録されています。

    あとがきの中で、斎藤学先生が本の背景や内容について説明しています。彼の話によれば、この本は「多様化する母達」をテーマにした講演会の成果物として生まれたもので、対話の内容については多くの支持を得られるものだと感じていたそうです。しかし、特に第二部に関しては、自身の発言があまりにも支離滅裂であることに驚き、出版に複雑な気持ちを抱いていたそうです。それに対し、編集者が第一部のよしもとばななさんとの対談を用意してくれたことに感謝していることも述べています。

    よしもとばななさんとの対談では、彼女の子育てに関する率直な言葉が印象的でした。特に、「子どもがいる自分に馴染むまでに時間がかかる」という話に対する斎藤学先生のコメントは興味深いものでした。この対話から、自分自身が母親としてのアイデンティティを確立する過程が時間を要することを感じました。

    一方で、アディクションに関する対話では、様々な依存症について議論されました。特に、依存症の根源について考えさせられる会話がありました。斎藤学先生のコメントから、依存症は個々の人格や環境に根ざした複雑な現象であり、それぞれが自己理解を深めることが必要であることを示唆していました。

    この本を通して、母親としてのアイデンティティの確立や依存症と向き合うための重要性が浮き彫りになりました。また、自己を受け入れることが癒しや成長の第一歩であることも理解しました。結局のところ、子育てや依存症というテーマを通して、自己理解や成長に向けた新たな視点を得ることができたと感じています。

    この本は、母としての自分がありのままでいられるか、などの明確な方法は提示されていません。
    いろんな癖を持った方の話が聞けるので、たくさんの色とりどりの花火を見て、ひとつふたつ印象深い花火が見れたな、と楽しむのにちょうどいい本だと思いました。

    子育てして、もう母親になって3年なんですけど、自分と別の個体と新たなから家族の形を作っていく過程の中にいるんだなっていうのが感想としてあるんです。

    母親である私と個人である私、そして乳幼児から幼児になって、どんどん1人の成人として独り立ちしていく。息子はどんどん変わっていくんですけど、自分の中の絶対的な母親という権力に固執し続けるのはダメなんだなと、危険なんだなって、意識が、本を通して大きな学びになりました。

    生まれたばっかりで世界の何も知らない子供から、母親に対する絶対的な信頼って恐ろしい位強固なんです。「どうしてあなたはそんなに私を愛してくれてるの」と不思議に感じるほどの絶対的愛は、母親にとっても絶対的な安心感で癒しなんですよね。

    その絆がずっとあるかと考えれば、ある意味歪で特別な愛情関係は永遠では無い。なぜならば、私自身も24歳くらいでちょっと遅めの反抗期を迎えて、すごい両親と離れたくなったんですね。自分の生き方を行きたい。もう生まれただけで親孝行したんだから自由にさせてくれ!みたいな。
    愛情はもちろんあるけど全てが母親に陶酔したり、信じきるわけではない。家庭以外の人間関係の気づきが自分の中にあるので、息子もきっとそういう家庭から外部の人とのつながりができて、自分なりの居場所、依存先、信頼できる場所を獲得していくのかな、私は思っています。

    ならば、その息子が家庭から出て、ぴったりとした子供と母親の関係が解消されたとき、また莫大な自由に使える時間がやってきたときに、自分に戻っていくのに慣れるのにまた3年から5年かかるんだろうなって。長いようで、短い子育て期間の未来を見たような気がしました。

  • すごく面白かった!
    いろんな女性の生き方が対談形式で語られるんだけど、特に印象に残ったのが、
    虐待すること、子どもに過干渉すぎるのはよくないことだけど、叩く手のスピードを落として、力を緩めていくとそれは「撫でる」ことになる。その反対は「無関心」であり、そちらのほうがもっとよくないこと、と書かれていたこと。
    虐待はだめだけど、無関心よりはよっぽどいいと。
    確かにそうで、無関心ほど冷たくて、恐ろしいものはないと思う。
    「やりすぎ」には愛があって、その程度を調整すれば事態が好転していく可能性があるけれど、無関心な人に関心を持たせるのって、より難しいことだと思う。

  • 濃いキャラの著名人の雑談形式。
    斎藤学さんの話はとても参考になりました。
    メールやTwitterが発達して、口で言えないようなことも、文章にして発信できるようになった。
    母・家族の多様化


  • ほんわかした表紙もあいまって、
    「お母さん」ではなくて「私」として生きよう!みたいな、そういう本かと思っていたが
    けっこう個人の暗部に切り込んだ対談の本だった。


    人格や性格、依存の根本は実は幼少期の家庭にあるという話、ものすごく怖いけどたしかにそういうところはあるなあ。

    私には考えも及ばないような家庭環境に置かれた患者さんも出てくる中、精神科医の先生がまるごと受け止めてくれる。

    まず話を受け入れる、許容する。

    根本的解決というよりは心の持ちようを助言してくれるようなお話の仕方にホッとした。



    私も母との距離感に悩むこともあり、でもそれを無理やりどうにかしなくてもいいのかと思った。


    「アルコール依存症の患者です、18歳の息子がなかなか自立しなくて…」
    という悩みに対しての斉藤先生の言葉がとってもよかった。


    「あなたの息子さんは、あなたがアルコール依存の道を通って、違う人物に変わっていく、という変容をそばで見ることができる。他の立派なお母さんの子どもよりも、いろんなものが与えられると思います。
    人間であればこそ、生きているからこそ悩める。
    あなたはそれを、「アルコール依存」なんてくだらない問題に表現しちゃってる。しらふになると、もっと直に「生きてることがつらい」って感じがしますでしょ。その「きつい」って感じが、実は生きてることの喜びそのものでしょ。それを、子どもと共有するんですよ。」

  • 前半のよしもとばなな氏と斎藤学氏の対談がおもしろかった。男の子を育てて男性への理解が深まった話に共感。私もどちらかというと下町的な綺麗ばかりじゃない環境で育ったので、ばななさんの感覚がなんとなく分かる。

  • 生育歴が複雑な作家さんたちと精神科医の斉藤学先生の対談本。
    会話形式なのでさらっと読めるが内容は濃い。

    アディクションやDVなどアダルトチルドレンの当事者も多く、「普通」の人が登場しない。

    最後の質疑応答の返しが参考になった。

    精神科の診察で、あんなユーモラスで個性的な会話が出来るなんて。

    私は今、特に持病はないけれど、もし精神的に不安定になることがあれば斎藤先生の診察を受けたいなぁー、と。それほど有意義な時間が過ごせそうだ。

  • よしもとばななと精神科医:斉藤学の対談と、内田春菊・中村うさぎ・倉田真由美と齋藤学のメンバーで行ったフォーラムの2本立ての本。

    フォーラムの方にもよしもとばななはいるのかと思っていたけれど、いなかった…。よしもとばななと内田春菊は仲がいいはずなので、いると思っていた。

    でも、どちらにしても、再読することは無いだろうな…という内容。
    一カ所だけ面白かったのは、男性の車いすを押すパートナーより、女性の車いすを押すパートナーの方が多いんじゃないか?という視点。
    なにかにつながりそうなので、メモしておく。

  • 図書館の育児書関連のコーナーでたまたま目に。

    それぞれの作家の家族関係やその中で経験した感覚を思い思いに話し、それに時々心理学的な視点から話しているもの。

    いつも読む提言書的な育児本とはまた違い、ある意味で楽になれる。
    特によしもとばななの小説から抜粋した箇所と、子育てを通しておこる事象に対しての感性がらしくていいなぁと思いました。

    以下メモ


    「まだ子供の時だけに感じる独特の世界の味。過日みたいにもいでももいでもなくならなかった、家庭の雰囲気。飽きるほどおよぎまわってもまだひろかったあの家は、たったふたりの不安定な男と女がつくっていただけのものだったということを、大人になってしりきっと誰もががく然とすることになる。(ちんぬくじゅうしい)


    「愛されているってこういうことだな
    この人に触っていたい、優しくしたい、そう思ってもらうことなんだと私は体でおぼえている。だから嘘ものの愛には体が反応しないように、きちんとできている。そういうのが育てられたっていうことなのだろう(みずうみ」

    「いつでもおへそをあったかくして、頭に血がのぼらないよう心も体も力を抜いて、お花みたいに生きてね。それは権利なの。生きているうちに必ずできることなのよ(みずうみ)」

    「人間がもっとだらしなく、雑多で、しょうもなく、治らないけどバランスとれて本人がくるしんでなくて、その人にとって明日も起きたらその位置が割と楽しいならいいんだみたいな方向性」

    母の権力
    自分が親になってみて絶大な権力には驚きますもん。
    家族の構成員を内面的に破壊することもたやすいんですよね。

    わたしは子育ての環境はどうでもいいことが多ければ多いほど、いいような気がしているんです。
    動物を飼っているいると人の考えからみたら一見、不合理に見える自然性にむきあって教えられることもおおいですよね。

  • 何だか知らないがとんでもないメンバーがそろったフォーラムが面白かった。うさぎが突出してぶっ飛んでいる。春菊もたいがいだった。こういった側面からアディクションを考えると面白い生き方なんだとアディクションじたいをひとつの生き方として表現していることを肯定できる昂揚感がある。自分のやっていることを肯定することからしか回復しないことを暗にほのめかしている齋藤学のカウンセリングはすごいと思う。

  • 母親になりだんだんと保守化していき、一般の価値観から抜け出せずそれにも気づかずもがいていた時に読んだ。自由でいいな、それを言ってもいいんだ、4人のそれぞればらばらな生き方に背中を押された気がする。

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著者プロフィール

1964年07月24日東京都生まれ。A型。日本大学芸術学部文藝学科卒業。1987年11月小説「キッチン」で第6回海燕新人文学賞受賞。1988年01月『キッチン』で第16回泉鏡花文学賞受賞。1988年08月『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞受賞。1989年03月『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞受賞。1993年06月イタリアのスカンノ賞受賞。1995年11月『アムリタ』で第5回紫式部賞受賞。1996年03月イタリアのフェンディッシメ文学賞「Under 35」受賞。1999年11月イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門受賞。2000年09月『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞受賞。『キッチン』をはじめ、諸作品は海外30数カ国で翻訳、出版されている。

「2013年 『女子の遺伝子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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