キネ旬総研エンタメ叢書 「おもしろい」映画と「つまらない」映画の見分け方
- キネマ旬報社 (2011年8月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784873763699
感想・レビュー・書評
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個人的には2011年度の1番影響を受けた本。
ハリウッドでは面白い映画を作るためのシナリオ術があって、エンターテイメント作品の脚本はそのシナリオ術が説くところの法則に従って書かれている。で、日本映画においても、最近のテレビ屋制作映画などに代表される脚本のダメさを指摘する声が大きい。どうすれば良い脚本が書けるのか。また、どういう条件を満たしていれば良い脚本なのかを分かり易く紹介している。
でも、ストーリーテリング以前の問題でダメさが際立つ日本映画がほとんどなので、そのあたりにも踏み込んでほしかったかなぁ。とくに「素人脚本か!」と観客を憤然とさせる芸能プロダクションと映画会社の力関係とか。 -
読んでてすごい参考になった。ストーリー+テリングとか。
今までもどこかモヤモヤしてた一部の映画に対する感想が、今なら具体的にどごがモヤモヤしてたのか言えそう。
ただ、アマルフィがあまりにもかわいそうで・・・ -
私の好きな「アマルフィ」が否定的だったのが残念。
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間違いなく勉強にはなりました。その意味で☆四つ。
ただ、時々全く脈絡なく、ある特定の分野を貶める発言が出てくるのが気になります。一般論として、著者が言及する現象は、その分野以外でも十分に起こっていることだと思います。これでは世の中の悪事を逐一漫画アニメのせいにしてる悪徳マスコミのやり口と同じです。
カバー折り返しの著者経歴を見る限り、著者はその分野でも仕事をされているようなので、何かこの人は個人的にその分野で余程嫌な経験でもしたのかなー、と勘ぐるぐらいしかありませんが。
この理論の大本である、監修の方の本を読んでみたくなりました。 -
こんな映画の見方もあるんだ、という参考本。例としてとにかく「アマルフィ」が挙げられているのだが、こんだけ言われるとあえて観たくなってきた。もちろんテレビ放映レベルでだけど。
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ストーリーテリング=ストーリー+テリング
ストーリー=物語
テリング=感情を外へ表す行為
テリングだけでも感動させることはできる ex. 俳優の名演、アニメーションの動き
良い「ストーリー」を感動的に語る「テリング」
ストーリーとは、変化。変化するときに最低2つ以上の試練をくぐり抜ける
主人公は、未知の冒険に出たときに、自分だけではどうしようもない世界に入り込む。そこで、仲間や、あるいは導師に出会って、成長や工夫することによって、その世界での生き抜き方や、自分の目的を達成するための方向性をつかむ
=助けと成長のある試練(成長葛藤)
そして、その成長を祝っての美しい「ごほうび」のような瞬間を経た後で、たったひとりで、破滅の待ち受ける試練へと旅立ち、クライマックスの大きな変化のきっかけをつかむ
=助けのない、破滅のある試練(破滅葛藤)
面白い=(見たことがない)非日常のこと。日常との「違い」や「変化」を楽しむこと
「仲間を守りたい」という欲望が充足されたとき、非常に大きな喜びを得るように脳が快楽を与えてくれる。これが「愛」
献身的な行動によって、想いが伝わること「愛の感動」
映画の面白さ=成長葛藤と破滅葛藤による納得できる変化×愛の感動
三幕構成
対立・葛藤・変化
対立:敵味方という役割上の対立、主人公が自分の中で抱えている内面上の対立
葛藤:成長葛藤と破滅葛藤 主人公が苦労すれば苦労するほど「おもしろく」なる
変化:変化を遂げた主人公がすべての対立を解消する
フェイズポイント1 第1幕の終わり
フェイズポイント2 第2幕の終わり
ターンポイント 成長葛藤の終わり
制限時間付きだとさらに緊迫感が増して面白くなる
このポイントでの選択・決断で苦悩するほど「おもしろく」なる
コメディの例外
キャラの脈絡のない変化が売りになる
変化がオチになっている。キャラクターが脈絡なく「あ、こういう風にしよう」と思いついて「予想外の変化」をするのが「おもしろい」
スピーディな「いきなり」さが楽しい
どうしてそのように「変化」するのか、というプロセスは描かない。ほとんど脊髄反射。「変化」の方向性を観客に予想させては、意外性の「笑い」が弱まってしまう
「予想外の変化」で笑わせることが目的なので、その変化の方向が異常であればあるほど「おもしろい」。主人公の「変化を納得」するのではなく、「笑えて楽しい」のが魅力。筋立ての構造は最低限でいい
クドカンvs.山田洋次
13フェイズ構造
第一幕 主人公の内面に抱える問題との「対立」、実際に直面しなければならない人物や事件との「対立」
背景 主人公は登場していない。「ツカミ」
①日常 主人公の抱えている内面的な問題 「変化」する「隠しテーマ」が見える
②事件 相手の強大さ
③決意 面白い作品では究極の選択になっている
第二幕
④苦境 どうすればいいのか?と途方に暮れれば暮れるほど面白くなる
⑤助け 導師、アドバイザ、状況、ヒント 意表を突く存在が「助け」となった方がおもしろい
⑥成長・工夫 なんらかの「成果」を得る描写があるかどうか? ex.力を得る(冒険もの)、相手の好みに合わせて変化を始める(恋愛もの)
⑦転換 主人公の成長へのご褒美 ex. 祭り(冒険もの)
⑧試練 主人公が自身の力で臨むが、取り巻く環境は悪化していく
⑨破滅 どうやってその状況から主人公が抜け出せるかあなたが分からないということも重要
⑩契機 破滅から脱出するための選択をするきっかけの出来事が起こる。時間制限があったほうがおもしろい
第三幕
⑪対立 主人公が目的とする敵(大問題)と対峙する
⑫排除 最大の敵(大問題)の排除に成功。今までのストーリーで描かれた、すべての対立関係や問題、伏線が解消されているか確認(マルチプルソリューション) この「爽快感」が大事
⑬満足 事後でなければ手を出せない伏線や設定も解消して、作家が要領よく、エピローグを語っているか確認
要点チェック 1,2,2,3,4,たくさん
① ファースト10
全体の10分の1までに、視聴者の見たいと思わせるような「ツカミ」を見せているか?
②-1 2つの葛藤
成長葛藤と破滅葛藤があること
②-2 二本の坂
隠された内面坂
直接の試練への変化の結果、視聴者が「あれ、内面の問題も解決すている!」と驚くようになっていれば「説教臭く」ないエンタテインメントとして満足できる
破滅坂
主人公が転がり落ちていく坂。長く、急であるほど面白い
③ 3つの究極の選択
主人公の選択があるか?
フェイズポイント1
フェイズポイント2
ターンポイント
・3つ以上のポイントがあるか?
・それらが主人公によるものか?
・それぞれが「究極の選択」になっているか?
・それぞれ「時間制限(タイムアタック)」があるか?
・各ポイント以降の展開が、ポイントでの「選択」によって引き起こされているか?
④ 4人の起伏
内藤、中岡、深谷、高山
内藤:主人公の内面の葛藤
高山:第12フェイズ(排除)での山が高ければ高いほどおもしろい。すべての試練、葛藤、苦しみを祝福する「高揚感」があるか
中岡:第7フェイズ(転換)におるかチェック、作品中盤に歌って踊れるような岡として描かれているか?
*岡は山より低くなくてはいけない
深谷:第9フェイズ(破滅)、脱出困難な深い谷であるほど面白くなる
Character Problem
Climax Peak
Covered Peak
Cliff Hanging
たくさん すべての問題、伏線を第三幕で解決
マクガフィン(注目させておくためだけに必要な、意味のない謎)は解決しなくてもよい
テリング=リマインダー 「売り」 「◯◯らしさ」
ミュージカル・リマインダー、コメディ・リマインダー、ホラー・リマインダー...
未見性リマインダー、超常現象リマインダー、アクション・リマインダー、キャラクター・リマインダー、俳優リマインダー
リマインダー映画としての「火垂るの墓」「パイレーツオブカリビアン」クドカンの映画
悲しみリマインダー vs 感動リマインダー
感動リマインダー vs 拒絶リマインダー
愛リマインダー
プラスドラマリマインダー マイナスドラマリマインダー
感情リマインダーは、反対の感情を揺り動かすリマインダーと対比さえないと「おもしろさ」が引き立たない
笑いリマインダーと深刻リマインダーを対に
悲しみリマインダーと恋リマインダーを対に ex. ツンデレ
リマインダー対比を強く 悲しみリマインダー&恋リマインダー
スポーツとは、ドラマ・リマインダー (対立・葛藤・変化)があり単独で楽しめるから
ストーリー主人公 人でない場合もある 社会システムが主人公 ex. facebook
リマインダー主人公 一見主人公に見えるがほとんど変化しない存在
協力者
敵対者
犠牲者
依頼者
援助者 援助者が犠牲者になっていると面白くなる
対抗者 -
映画の面白さをどう分析すべきか。かなり詳しく分析手段が書いてある。ストーリーとテリングという分類はすぐに使えそうな軸。ストーリーは主人公の変化が重要だそうな。たしかにそうかもしれない。
具体例としてアマルフィが如何にダメだったかがあらゆる角度から分析されている。読むと「もうやめて!アマルフィのライフはゼロよ!」という気持ちになる。