- Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
- / ISBN・EAN: 9784877280482
感想・レビュー・書評
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連絡手段は公衆電話、喫茶店では喫煙自由、飛び交う会話はジェンダー、ルッキズム…旧さを感じた。が、人間の本質、欲望だけは不変だから面白い。関西大震災の最中に出版された本書。対応が遅い政府への民衆の怒り(あとがき)も不変なのが情けない。
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1995年発行
引用 P222
「うまく言えないんだけど、 則ちゃんの、 あの異常な寂しさってのは、 則ちゃんが、 これまで一度も人のために生きたことがないからじゃないかって思うんだ。 自分のためだけにしか生きたことがないから、 寂しくてたまらないんじゃないかな・・・・・。」 -
殺人事件と近所の人々の反応
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昼間の道端、金属バットで主婦が撲殺された。
それまで 悪意のないありきたりな日常を繰り返していた近所の住人達に起こったことは?
犯人探しがメインではなく 犯人がわかるまでの人々の心の中の渦巻きが興味深い。
明確な悪意を持っていない人間達同士が どうして互いに傷つけ合うのか。
ささやかな幸せを守ることに汲々とするあまり 他者に対して狭量になっていくのは何故なのか。
幸福とは一体何なのだろう。
比較の上に成り立つものでなく 己の中にこそ成立するものなのではないだろうか。
読み進める内に 次第にその感を強くした。
誇りと自尊心は 別物であり、持つべきは 誇りなのだという作中の言葉も これに通じるものがあるのではないだろうか。