ラブ&ポップ: トパーズ2 (幻冬舎文庫 む 1-7)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877285494

感想・レビュー・書評

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  • 援助交際。私が学生時代から世間で騒がれた社会問題である。最近はこの言葉を私はあまり耳にしなくなったけど、きっとやってる人はヤってると思う。
    主人公は裕美という女子高生。友達と来週行く海で着る水着を買うためにに渋谷にやってきた。
    手がきれいな裕美。裕美は12万八千円のインペリアル・トパーズの指輪が欲しくなる。水着をかって余ったお金では足りず、伝言ダイヤルで援交してお金を稼ごうとする。
    彼女は援助交際が犯罪であることがよく分からなかった。
    彼氏とのエッチは良くて、見ず知らずの男とのエッチがいけない理由が・・・。ゴムさえつければたいていの性感染症は防げる。

    「倫理社会の先生は貞操観念というものは神によって確立されています。と言った。あの倫理社会の先生は女子学生に八万払ってエッチしようとする会社の社長や高額なスーツを着て女子高生の履いているパンツや噛みかけの葡萄やガムを欲しがる男がいるのを知らない。オヤジの読む週刊誌にはヌードやソープランドのことはあっても女子高生が見ず知らずの男とエッチしてはいけない理由は一行も書いていない。TVでもそんなことを言う人はいない。いけないことだという人は掃いて捨てる程いる・・・。裕美は絶対に欲しいあのインペリアル・トパーズの指輪を援助交際して手に入れるということについてそれが本当にいけないことだという根拠みたいな何かがあるだろうかと探した。」

    そうして裕美は伝言ダイヤルで知り合った、自称「キャプテンE.O.」というむいぐるみに話しかける異常な男と待ち合わせ、その後ラブホに入るのだった。
    裕美は部屋で男と会話を交わす。そして「お前は話しやすい・・・」と男も気を許したのかそう裕美に告げた。
    しかしお風呂にはいっていた裕美は無理矢理襲われかける。スタンガンとケミカルメスというガスを手にもって男はこう言った。
    「お前もこれで失神させて死体とヤるような感じでヤって、お金を盗もうと思った。何人もそうやってやってきたけど、誰一人援助交際がバレるから警察には言わない。」と・・・。
    そして男は自分の擦り切れてボロボロのぬいぐるみに「裕美ちゃんは何も分かってないね・・・」とただただ話すのだった。
    男は裕美の顔を自分に向かせ、悲しそうに言った。
    「名前もしらないような男の前で裸になってはいけない。それを知ったらすごくいやがる人がいるんだ。こんな風に胸とか触られてまっ裸でいる時にどこかで親や恋人が死ぬほど悲しい思いをするんだ。インドや中近東の方でさらわれたり、売られたりした子供たちが何をしているか知っているか?一日16時間位絨毯を作っている。逃げられないように片方の足首を切り落とされる子供もいるし、ほとんどの子は絨毯の細かなホコリを吸って肺病になって、20歳前には死んでしまう。それでも子供たちはそんな思いと運命を抱いていても、インドだと一日に10ルピーしかもらえない。プラダやシャネルが欲しいから援助交際だなんて、ふざけるな。でもお前は助けてやる。インドの相場で金を払うよ。一緒にいた時間は2時間弱だから4円だ。」
    そして男は1円玉4枚を濡れた裕美の胸に貼り付けて、去っていってしまった。裕美はお金が足らず指輪は結局買うことはできなかった。

    援交ももちろんそうだけど、私は見ず知らずの男とSEXする心理が分からないようで何となく分かる(苦笑)
    それはスリリングであり、男は性欲を満たすだけかもしれないけど、女は違う。中には男のような考えを持つ男もいるだろうけど、抱かれることで安心感や安らぎが欲しいのかもしれない。
    お互いの体温を感じて、自分の存在を認めて欲しいだけなのかもしれない。
    シャネルだってグッチだって指輪だって、本当に欲しけりゃ伝言ダイヤルやテレクラなんかしないで盗めばいい。
    皆、オスとしてメスとして自分に価値があると思いたいから・・・セックスして他人の欲望や興味が自分へ向くことを楽しんでいるのに過ぎないんだろうと思う。
    そんな事で自分の価値を図るのはとっても寂しい気がする。一時だけのスリルや興奮は冷めてしまえばしまう程、何も残らない、余計心が空っぽになり、よりいっそう自分の価値を探してしまう悪循環に陥るということを知っています(苦笑)。

    村上龍さんはコインロッカーに捨てられた赤ちゃんの話しやらドラッグやら社会問題に報道するように焦点をあてて世界を描くので面白いです。

  • 女子高生と援助交際の話。
    実話を元にした物語だから、
    トパーズみたいに堅苦しく重苦しくない感じ。

    ヴィトンの財布を買うために半年バイトする女子高生は居ない。

    みたいな文があって、衝撃を受けた。
    輝きも衝動もいつか色褪せて失われてしまう、
    1分、1秒、一瞬。
    その事を一番知っているのは彼女たち。

    だと、思った。
    援助交際はもう死語だけど。
    いつの時代でも、売る女も、買う男も居るのだから、
    それはかわらない、と、思った。

  • トパーズより好き。
    映画も良かった。

  • 村上龍っぽくない。
    だから、嫌いじゃない。

  • 先輩からいただいた本。

  • 初めて村上龍に出会った作品。
    体を売ってる女性の短編集。
    描写がグロいけど
    読んでてかなり面白い。

    村上龍の世界観に魅力を感じた一品。

  • おれら半端よね、って言える友達と
    いつまでも新鮮な風を受けていたい

  • 援助交際をテーマにした小説です。
    非常に村上龍らしいアプローチで援助交際と女子高生を描いています。

    彼の小説大半に当てはまることだが、10年後の現在読んでも充分に読めるし、新しい。

    刊行当時女子高生だった人たちの感想が聞きたいし、今の女子高生にも是非読んで感想を聞いてみたい。

    現在では「援助交際」と言う言葉はもはや死語に等しくなっているが、決して避けることの出来ない問題である。

    主人公は「なぜ援助交際がいけないことなのか?」を考え、その答えを模索する。女子高生なりに模索する。
    援助交際をして、また、考える。

    そうやって彼女がたどり着いた場所はどこだろう。

    読んで、考えてみよう。彼女と一緒に。

  • 技巧にはしりすぎかな・・・

  • 「援助交際がなぜいけないのか?」この本のラストシーンは物語中で自問自答するその質問に、絶対的な答えを示しているわけではないが、それでもハッと気付かされる最後の言葉。
    もう究極的に曲がり歪んだ世界の果てに、ひとつ真実が落ちていた、というような話。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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