見残しの塔: 周防国五重塔縁起

著者 :
  • 新宿書房
3.67
  • (5)
  • (5)
  • (10)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 67
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784880083896

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 久木綾子さんは89歳の新人作家さん!
    『見残しの塔』は彼女のデビュー作になります。
    周防の国とは現在の山口県のこと。もともとは山口県の地方同人誌に発表された作品らしいのですが、室町時代に建てられた山口県にある国宝「瑠璃光寺五重塔」が建立される話を中心に、当時に生きた人々を生き生きと現代によみがえらせています。
    丹念な取材から書き起こされた文章には脱帽します。当時の治安、他国との距離、職人や女性の置かれた立場なども、まるで当時を思い浮かべることができるよう。
    でも、この物語で、最後まで印象に残るのは、美しく建つ五重塔なんですよね!
    人間が幻のようにその一生を駆け抜け、残像のように来ては去っていく中で、五重塔だけがそこに立ち続け、美しさもそのままに時代を越えて現代の私たちの目に映っている、そんなイメージが浮かびました。
    登場人物に対して作者はある一定の距離感を持っています。それでいてそれぞれの人物に共感したり感情移入できる、不思議な小説。
    きっと久木綾子さんの歩んできた人生がこういう素敵な小説を生んだんでしょうね。
    なんて勝手に私は思ってしまいました☆

  • 端正。
    主人公である左右近の、職人としての修行の物語と、若狭新田家の人々の物語、どちらも面白くて、この二つの流れがどこで交錯するのかも気になる構成。
    さらに、文章の力で頭のなかに五重塔が組み上がっていく。

    五重塔の巻斗に書かれた「このふでぬし二廿七」の文字をきっかけに、この物語が生み出されるまで、準備に14年、執筆に4年、本となったのは更に1年後の89歳…。これがデビュー作。何歳になっても新しく始められるということにも、出会うべき時に出会うものがあるということにも、感じ入ってしまう。

  • 山口県、瑠璃光寺 五重塔にまつわる中世歴史小説。壮大で荘厳なスケールで読むものを圧巻させる。縁のない人々を長い年月を掛けて塔の建立を背景にしながら物語が進んでいく、やがて終焉を迎える。人の一生のはかなさと永遠の願いと思いが塔という有形としてそこにある。人の一生と日本の歴史、歩みを描く。歴史とロマン、個人としての思いや一生を描き感じる想い。五重塔が人を惹き付け圧倒するもの、それに対比しての中でまつわる人々の生きざまを物語とし、惹き付けて止まない。塔の中から見つかる木片に書かれた棟工の書き印から物語は生まれた。作者の足掛け十八年の年月がずっしりと重くそして美しい。

  • 小説としては、読みにくい。話がポンポン飛んでいき、読者を置いてけぼりにする。
    それでも読んで行くと、大方こういった流れかな、というのが分かってくる。
    山口県の瑠璃光寺の五重塔の建立にまつわる人たちの生き様が書かれている。そこには淡い恋物語もある。
    もし、行く機会があれば、この物語のことも思い出して見たい。

  • 小説としての出来は、あまり良くないと思う。小説と思うと、読みにくい。歴史書に近いと思うか、史実でもないだろうし中途半端かも。
    史実から、いろいろ想像して、話を組み立てたんだろうなぁと思うと、さぞかし、楽しかったのだろうと思う。
    個人的には、大好きな、五重の塔や、若狭の国、周防の国、国東、興味は、つきなかった。

  • あの美しい瑠璃光寺の五重塔建設をめぐる中世の物語。高齢の著者の緻密に取材し検証していく制作態度に感銘を受ける。
    しっとりとした壮大な物語であるし、語り口の格調高さにも納得するが、無理やりのエンドにはちょっとがっかり。

  • 登場人物の精神性に惹かれる。
    最初は、大工仕事の詳細に惹かれていた。けれどそれだけではない、神仏に恥じない生き方をしようとする人たちに惹かれる。

    読み進むうち、私は本当にこれを知りたかった、あの美しい塔を作ったのがどういう人たちだったのかを知りたかったのだと思った。

  • 山口県にある瑠璃光寺の五重塔の建立にかかわる、多くの人物の絡みが爽やかに書かれている。日本の建築技術の素晴らしさにも触れることが出来る。一人ひとりは個性的だが、その凛とした姿、潔さには、今を振り返り反省させられる。

  • 本書を先に知っていたら今年、山口県に行ったときに瑠璃光寺五重塔まで足を運んだものを・・・。

  • 見残しの塔
    久木綾子さん
    89歳の新人に乾杯

全14件中 1 - 10件を表示

久木綾子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×