博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか? (Dis+Cover Science)
- ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010年11月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784887598607
作品紹介・あらすじ
1950年代以降、科学技術振興政策によって大量に生まれた「博士」には、なんと就職先がなかった…。かつては「オーバードクター」と呼ばれた彼らのために「ポスドク」という働き口が用意されたが、これも不安定で低収入、しかもその先に研究機関や企業での就職が保証されているわけではない。かくて「博士余剰」問題は未解決のままだ。こうした博士の就職難により大学院進学者も減少、これでは日本の科学技術研究の未来も危ぶまれる。しかしまだ遅くない。日本社会よ、博士をもっと活用しよう!博士の活用は科学技術の発展、そして不況にあえぐ日本の再生につながるはずだ。博士余剰問題を統計データと取材に基づいて考察し、具体的な解決策を提言する希望の書。
感想・レビュー・書評
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1950年代以降の大学院増加、博士のポスト不足はバブルで一息ついたものの、その後の大学院重点化で博士余りの状況になった。年功序列の企業には受入れられず、任期制・非正規雇用で博士の価値下落。国費をかけた優秀な博士たちを活用しないなんて、もったいないのに。
博士目線での本文に、付録で異なる立場から見たコメントがあって、より広い問題だとわかりました。活用できないなんてもったいない。10年後の今はどうなんでしょうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
博士漂流時代「余った博士」はどうなるか?。榎木英介先生の著書。博士余剰問題、ポスドク問題は少子高齢化で人手が足りない日本社会にとって深刻な問題。日本には優秀で高学歴で専門性の高い博士たちに活躍してもらえるような社会制度が十分でないように思います。優秀な高学歴博士たちの活用は、高学歴博士たちにとっても、日本社会にとっても、プラスになるはず。
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今更言う必要もないが、とても良い本だ。「博士+X」のいろんなバージョンをみんなで考えてみるのも面白いかもしれない。
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「サイエンス・ブック・トラベル」から。
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博士の余剰問題、いわゆるポスドク問題に切り込んでいる。社会的コストが費やされている博士を使い倒さないのはもったいないので、社会全体で博士を「活用」しようと主張している。そして、具体的に、博士+X(博士+国会(=政策秘書)、博士+ちゃんこ料理店(=化学の大使)、博士+研究支援者(=コサイエンティスト)など)という生き方を提案している。
著者の、社会的にもったいないので、博士はどんどん活用すべきという主張には共感を覚えた。しかし、具体的な提案は、科学の大使やコサイエンティストなど、博士、社会の双方にとって本当に需要があるのか疑問のあるものも多く、この問題の難しさを感じた。
著者は、博士の能力低下が問題の原因ではないと主張しているが、昔に比べて博士の母数を大幅に増やしている以上、能力の低下は否定しがたいと考える。博士の能力が低くない根拠として、ノーベル賞受賞者はほとんどが博士ということを挙げているが、優秀な博士がいることは当然であって、博士全体の中で能力の低い博士が少なからずいることが問題なのである。この点、付録での博士問題の識者へのインタビューで、「本来なら大学院に行ってはいけない人、本来なら博士号を取ってはいけない人が博士を取っている」ことが問題と指摘しているのは至当だと思う。
あと、この問題については、ポスドク1万人計画など、政策の失敗の面が強いということを改めて感じた。 -
進路支援図書「シュウカツの友」
2012/2/14更新 052号 紹介図書
http://www.nvlu.ac.jp/library/friends/friends-052.html/ -
ポスドク問題は深刻の度を増しつつある。なぜ博士が多すぎる状況が生まれたのか。打開策はあるのか。人材として博士を有効活用するために必要なことは何か。問題を指摘するだけでなく、具体的な対策を提案しているところが良い。
私自身ポスドクをやっていたし、現在も身近なところで問題を見ているだけに、耳が痛い意見もあれば、希望を感じる提言もある。長い間問題が認識されているにもかかわらず、なかなか解決も難しい。短いスパンで立てた対策は、だいたい碌なことにならないということはよくわかる。 -
博士の育成にはそこそこの国費が投資されてることも考えると、この本でも指摘されるように、もっと教育なり研究支援なりにその力がいかされるとよいと思った。社会と研究がうまくリンクしてないという問題を認識できた。
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70年代にも博士は余っていた、という話は驚きだった。バブル時代は就職先が多かったそうなので、結局景気の影響に左右されるんだろうな。。
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自分も何をかくそう「ポスドク問題」の当事者の一人なので、「読んどいて損はないはずだ」との考えから読んでみました。
基本的には、「博士号取得者の現状把握とキャリアの多様性を推進する本」といえるかと。
博士課程在学中、あるいは博士号取得者ならば、一度は聞いたことのある話が多いかと。でもまとまってるし、3時間以内で読めちゃったので確認も含めて読んでみても良いと思います。 -
1950年代以降、科学技術振興政策によって大量に生まれた「博士」には、なんと就職先がなかった……。
かつては「オーバードクター」と呼ばれた彼らのために「ポスドク」という働き口が用意されたが、これも不安定で低収入、
しかもその先に研究機関や企業での就職が保証されているわけではない。
かくて「博士余剰」問題は未解決のままだ。
こうした博士の就職難により大学院進学者も減少、
これでは日本の科学技術研究の未来も危ぶまれる。
しかしまだ遅くない。日本社会よ、博士をもっと活用しよう!
博士の活用は科学技術の発展、そして不況にあえぐ日本の再生につながるはずだ。
博士余剰問題を統計データと取材に基づいて考察し、具体的な解決策を提言する希望の書。
希望の書ではないことは確か。笑 結局の所、博士に行くには覚悟が大事だというのを一番思った。 -
問題の特定は完了、後はどう実行するか
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後半の内容には少々疑問を持つが、博士の抱える問題、これから博士をどう社会が活かしたら良いかについて書かれており、読者を選ばず広く読んで貰いたい内容である。
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書評を書くために理化の先輩に借りて読んだ本。
理工系、とくにバイオのしんどい様子をありありと描いていて、博士に進学するか悩んでいる人は一読の価値あり。ただし、分野が偏り気味だというのと、問題提起としてはよいものの博士のネガキャン的な側面が強く出ているだけな気もしてくるから難しい。うーむ、博士進学どうしたものかなぁ… -
博士の厳しさを学びました。
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(2011/7/9読了)博士、というか大学教員の世界は企業以上に既得権のカタマリだよなあ。つっかえてる上を何とかしないと、若く優秀な研究者がいなくなってマズいのではなかろうか。
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実は、まだ読み始めたばっかりなんですが、イントロダクションを読んで、とても読みやすく、「これはいい!!これなら是非高校生たちにも読んでほしい!!」と強く思いました。
私自身ポスドクとして日本を離れて研究をしていますので、とっても興味深い内容です。