- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784891769550
感想・レビュー・書評
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「リリアナが泣く」死を待つ体。想像する。自分が消え去った後の妻と友人。良作。
「手掛かりを辿ると」熱狂的な人気を持ちながら謎に包まれた詩人。彼の生涯を追う男。驚くべき真実。
「ポケットに残されたと手記」地下鉄の中のゲーム。偶然の不可能性にかける。
「夏」友の娘を預かった夫婦。夜中。不審な物音。巨大な馬。
「そこ、でも、どこ、どんなふうに」ずっと前か。パコ。もう死んだきみ。
「キントベルクという名の町」ヒッチハイクの少女。スープを飲む少女。かつての自分。
「セベロの諸段階」繰り広げられる儀式。告げられる数字。
「黒猫の首」電車の中。見知らぬ女に触れる。女も私に触れる。女の告白。
「シルビア」子供たちのまとめ役シルビア。しかし大人たちは彼女は存在しないという。良作。
「旅路」列車を待つ男女。彼らは自らが行くべき場所を思い出せない。
「昼寝」悪夢におびえる少女。友との性に関するめざめ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
訳者が「文学青年コルタサルの終りを告げる一作」と位置づける短篇集『八面体』(1974年刊)と、エッセイや評論などが併せ編まれた『最終ラウンド』(1969年刊)からの物語風の文章三篇及び短篇小説についてのエッセイが収められる。
『八面体』はかなり前衛的な作風のものが多く戸惑った。『最終ラウンド』の方がオーソドックスなつくりで、楽しんで読めた。特に「シルビア」はさすが短篇小説の名手といえる巧みな一篇。子どもの描き方なども実に鮮やか。
「コルタサルの新しい邦訳!」と意気込んで読んだけれどもはね返されてしまったような気がして少し残念。彼の作はもう徹底的に読み込んでいてさらに他のものを、という読者向けの一冊だったかもしれない。