チャヴ 弱者を敵視する社会

  • 海と月社
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903212609

感想・レビュー・書評

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  • ここで語られているのと全く同じことが、日本でも起きている。

  • 2017/11/25 二度めの観測 2017-09-18 初観測

  •  イギリスで貧しく愚かで危険な人々と見なされているチャヴという存在達。なぜこのようなことが起きているのか。

     チャヴというのは昔の労働者階級だった人々のことだ。経済状況の変化に加え、組合潰しや公営住宅の削減などの様々な政治、さらに階級などもうないという啓蒙などによって労働者の連帯は崩れ、その一部が嘲笑し憎むべきチャヴという存在になった。さらに、貧しい人は自己責任だという認識まで広まっている。もちろんこれらは間違った印象操作だ。
     この本が最初に書かれたのは2000年代のようだが、今の日本にそのまま当てはまる内容だ。
     単純なグローバル化だけではなかった。政治と社会は悪い方向へと向かってしまっているのだ。

     私達はこの本に書かれていることを強く意識しなければならない。

  • 「そろそろ左派は経済を語ろう」で紹介されていた。

    出版は2011年で少し前になるが、サッチャー政権以降、英国で労働者階級が没落し、貧富の差が拡大した結果、白人労働者階級が社会全体から(同じ労働者階級からも)差別されるようになる様子が克明に描かれる。

    炭坑労働者から発生した労働党が、労働者を疎外するようになるとは。

    それにしても英国の政治家、マスコミ、コメンテーターは言いたい放題だ。問題箇所だけ切り取っているということはあるのだろうが、差別意識を隠そうともしない。

  • "弱者を敵視する社会"というのはいまの日本社会にも当てはまる言葉だ。

    イギリスはもとより階級社会である(その是非はおいておこう)。つまり階層は目に見えてあったわけだ。労働者階級でも更に階層化が進んでいるというのは本書を読めば日本にいる我らにも明らかだ。

    階層、階級、身分差がないことになっている日本と同じように見えない壁がイギリス社会でも出来ている。

    この"壁"を作っているのは「自己責任」という旗のもとに推し進められた福祉や社会保証の削減だ。

    <blockquote>「新しい階級にもとづく政治では、たとえば移民に対する反動を、無知や人種差別として片づけず、労働者階級の嘆きが無視されることへの不満が誤った方向に進んだものなのだ、と理解しなければならない。移民への反動を抑えたいなら、手頃な住宅や、安定した高賃金の仕事の不足といった、肌の色に関係なくすべての労働者階級の人々に影響する根本原因を認識し、解決することだ。</blockquote>

    弱者を敵視し、人身御供とするのは社会を牽引するエリート層の責任転嫁にほかならない。
    経済が停滞するなか逃げ切ろうとする上層に踏みつけられる下層…というのは歴史でも繰り返された絵面なのか。それは人類社会が逃れられていない宿痾なのか。

    遠い異国の話ではなく我がこととして読んだ。
    彼の国と我が国で一番違うのは、そういった状況に抗おうとするポップ・カルチャーの存在で、レベル・ミュージックともいわれるそれらの存在の必然性のようなものが垣間見られる一冊でもある。

  • イギリスの労働者階級に対する中流階級の差別的視点を描いた書。富裕層が不満をそらすことを目的として、労働者階級が不当に福祉を享受していると中流階級に思わせているという視点は我が国の福祉政策を考えるうえでも重要な視点である。というかかなりの部分我が国にも当てはまる。

  • そこそこ簡単で、それなりの給与と地位が約束される仕事」が消えた世の中では、見えにくい「弱者」が増えている、と題されたネット記事を読んで感じるところがあり、記事中で本書が一部引用されていて興味をもった。

    本書はイギリス社会で「チャヴ」というレッテルが貼られている人たちを取り巻いている環境やチャヴではない人たちが「チャヴ」に対してどのように考え、行動しているかを事実に基づいて紹介している。マイノリティ憑依や著者の主張する本来的なものへ回帰といった内容にはなっていない。
    興味深いのは、本書のボリュームに対して、チャヴその人たちの主張や声がほとんど目立たないこと。これは意図的な構成でこのようになっているものと思う。声を積み上げるかたちではなく、環境やチャヴではない人たちの言動を詳述することで、チャヴという現実を効果的に浮き彫りにしているように思う。

    以下、興味深かった本書のテーマを点描。
    ・ニュー・レイバーの主張する向上心と自己責任の問題
    ・メリトクラシーと社会的流動性
    ・社会階級を民族にすり替えるレトリック
    ・イギリスの左派が空転している理由

    徹頭徹尾、イギリスの現状を綴っているものと思われるけども、なんだかとても身近な話題のように感じられた。

  • イギリスの社会の様子がわかる。色々勉強してからイギリスにいけば良かった。

  • 高齢化社会をひた走るトップランナー、日本。これに関して先例は無く歴史から習うことができないのだが、格差社会、階級社会に関しては英米という格好の教材がある。「チャヴ」という、低収入労働者クラスタを示す言葉。近い将来日本でも造語されそう。今でも「非正規」「B層」「マイルドヤンキー」あたりにその萌芽を感じる。
    「自己責任」という欺瞞に満ちた言葉、差別意識を刷り込み分断を図る富裕層、政治家とマスメディアという構造が実に分かりやすい。わかりやすいということは、多分に虚構が混じっているか、さもなければ身近に似た構造があるのだ、
    分断社会(国家)の往く道は衰亡か革命か。二択はゴメンだ。

  • チャヴってのは、映画でいうとあれですね。「アタック・ザ・ブロック」に出てくる子供たち。あと「キングスマン」のエグジー。

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