増補版 街場の中国論

著者 :
  • ミシマ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908250

感想・レビュー・書評

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  • 広い国、中国を統治するというのは何と大変なことか。農民が飢え、地方にカリスマ的指導者が出現した時、7億人とも言われる農民&低所得層が動き出したエネルギーはもう誰にも止められない。その恐怖は日本から見れば比較にならない。こうした立場の違う中国が使う”対日統一戦線”は統治が危ない状況に陥った際、国民を一致団結に向かわせる唯一無二の合言葉だと理解が必要なのですね。(日本人としては嫌だけど・・・。)国益を守るのですから単純にはいきませんよね。二重でも三重でも何枚舌も使って、ようやく国民を守っていけるのだな。中華思想の鷹揚さも台湾と尖閣の問題で理解できた気がします。東アジアがEUのように過去の歴史を克服して連携を深めることが出来ない理由も「やっぱりな」と思いました。シェール革命でエネルギー問題を克服した超大国の次の標的をしたたかに読むことが大切ですね。

  • 思考停止しないこと。
    特に、相手の立場に立って考えること。
    自分は理解出来ない言動でも、相手の立場にどっては合理的であることが往々にしてある。

  • 中国通に薦められて読破。
    あくまで推論を出ない著者の主張だけど、非常に面白い。

  • 中国との関係については、近年は尖閣諸島の領土問題で専門家やマスコミが様々な議論を行っていますが、解決策が見いだせない状況です。国際法に則って、領土に線引きをしたい日本と、主権の及ぶ範囲を曖昧にしておきたい中国の考え方には、思想的に相入れないことが要因ではないかと著者は主張しています。領土問題に限らず、歴史的な観点で中国人の考え方はどのように自らの思想を確立してきたかを考察しています。
    ベースは大学の講義の内容をアレンジしたもので、日本辺境論の内容とダブる部分も多いですが、言いたいことはよく解るし、納得できる部分も多かった。中国は日本と違って、多くの民族を含む多民族国家であり、日本のような管理された社会ではない。そのため歴史的に戦争や国内の紛争も多く、国民が共有する唯一の成功体験が対日戦争での勝利であり、国内情勢が悪くなると政府の求心力を高めるため日本批判が起きるという。専門家は何となく歯切れの悪い見解で中国を批判しますが、中国問題については素人という著者の意見の方が、納得できる部分は多かったように思います。
    マスコミは目の前の現実だけを捉えて、中国批判を繰り返していますが、歴史を踏まえると領土問題は「放っておく」のが一番良い解決策のような気もします。
    世界平和に貢献したいと考える国民であれば、お隣の国と小さな無人島を巡って紛争になるような愚挙は避けたいものです。

  • 高校の頃世界史にまったく興味が湧かず、大した勉強もしてこなかったけど、社会的な情勢もあり今さらながら興味わいてきて読んでみた。
    なぜ国家の考え方が違うのか、特に領土の線引きをきっちりしたいという西洋的な考え方と、中国の、中心部から裾野が広がっているだけであり、裾野の先の先は漠然としたままで問題はないという考え方の違いはとてもおもしろかった。尖閣問題も、中国は領土を明確にするのではなく、このまま漠然としたまま時が流れていけばいいと思っているのはないかというのは目から鱗だった(本当のとこどうか知らないが)。
    なぜ反日デモをするのか、国家の大きさによって政治の進め方が違うからそもそも小国と大国の政策だけを見て羨ましいだとか批判だをしても意味がないというもの納得で、考えるネタを与えてくれるとてもおもしろい本だった。毎度のことながらダラダラ長いので、あと150ページくらいは少なくできるのではないかと思うけど。

  • ウチダ先生の「街場」シリーズ中国論、ここしばらくの情勢や中国共産党大会開催中ということもあって読み返してみた。「中華思想」=「ナショナリズム」ではない、というウチダ的中華思想の解釈、やっぱり面白い。この増補版出版から1年半、今後実権を握ることになるいわゆる太子党組が、「中華(政権)とその周辺の東夷・南蛮・西戎・北狄などいわゆるエビスとの“あいまいな境界”」としての中華思想をどんなふうに受け継ぐのか、あるいは受け継がずに帝国主義化していくのか気になるところ。

  • 華夷思想という概念は、日中関係を語る際に欠かせないものだと思った。立ち返り読み直す機会は今後も沢山あるだろう。所謂「中国専門家」とは異なる切り口というが、一般的な専門書にまだ当たっていないので、何とも言えないが。帝国主義以降の中国の凄惨な歴史には、同情を禁じ得ないところがある。中国に対する見方を幾分か広げてくれた。

  • 冷静に根本的にお互いの『違い』を理解し合うことは
    現在の問題を理解する上で必要だと思う。

    どちらが悪いとか正しいとかという、短絡的な結論や
    議論ではない、もう1つ深い議論になると思う。

  • 歴史上の「起きてもよかったのに起きなかった出来事」をどれだけ多く思いつけるか。

    歴史の流れやひろがりを考えることで、自分が時代の流れの一部分に生きていることを知ること。歴史を知ることで、その視点から現代において「自分がどのような感性や感覚を持って生きていきたいのか」ということを思考していく起点になるように思います。それが著者のいう、他者と同期することなのかも。

    また、その国の歴史を知り、国家の成り立ちから現在までの経緯を理解した上で、さらに深く想像しないと近隣国でさえ忖度できないと感じました。

  • ネットで中国のニュースをながめていると、なんて野蛮でエゴ丸出しの国なんだって国なんだって思う。そのトンデモ国の被害を一番受けているのが、ワレワレ日本。そのくせ、国内の政治やマスコミは中国を奉る。庶民とすれば、中国もイヤだ、親中で弱腰の日本権威もイヤだ。だから、2ちゃんねるを窓口とする庶民の嫌中国感は高まってくる。

    が、ちょっと待て。そうした感情は置いといて、中国をあるがままの「国」として向こうの事情も考えてあげつつ、客観的に観察してみれば、見落としているものが見つかるんじゃないだろうか。無条件に中国と仲良くするのは論外だが、手を取り合えるところは取り合い、理解できるところは理解しちゃった方がお互いに気持ちが良くなるんじゃないだろうか。という発想で、中国について専門家ではない著者や大学生たちが、ワイワイガヤガヤと中国のことを話し合った結果が本書。

    読んでいると、確かに中国政府の複雑な事情は理解できる。だけど、そのガス抜きとして日本を利用されたのでは、こっちはいい迷惑。著者はまえがきで「日中で東アジアにおける対等な関係を築き上げるのが互いに良いことだ」と理想を掲げるが、それはまだまだ先の話のような気がする。とはいえ、ネットに影響され、何が何でも反中って色眼鏡は外しておくべきだ。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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