増補版 街場の中国論

著者 :
  • ミシマ社
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908250

感想・レビュー・書評

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  • これはいい本。反日デモ等を行う隣国・中国に対して条件反射で反感を抱くのではなく、なぜ相手がそうするのか考えてみましょう、という本。大学の講義を文章に起こしたものであり、素人相手に話すことを前提としているため、難しいところはほぼなく、読みやすかった。
    新聞等で反日教育等の記事を読んで「なんで今更そんなことを」をムカッときていたけれど、この本を読んで印象が変わった。本当に反日思想のためにデモを行っているのではなく、現政治体制に対する不満を反日というオブラートに包んで表明しているらしい。
    中華思想も非常にしっくりきた。アメリカはこうだ、フィンランドはこうだ、だから日本は駄目だと言われるけれど、それぞれのお国事情があるのだから、日本は昔ながらの立ち位置でやればいいじゃないかという。
    他にシリーズがあるようなので、是非読みたい。今回は私もど素人だったけど、教育学科で学んだものとして、教育論はどう映るだろうか。

  • 阿Q正伝
    王化政策
    日中の世界像の〈ずれ〉を中心的な論件にした中国論

  • 分厚かったけど、スラスラっと読みました。
    中国に流れている、中国的心理というか中国的考え方がわかりやすかった。
    異文化コミュニケーションってこうゆう心理を理解するところから始まるんだなー。反日教育、田中角栄の日中外交、尖閣諸島問題、なんとなくつながった気がします。
    結局こうゆう根っこの深層心理を理解しないと、物事は前に進まないね。

  • 何かと日本とトラブルの多い中国。その病理について内田先生の言説を求めるつもりで読む。

    反日デモが起こったりするが、中国政府はコントロール出来ているフリをしているだけ、という。かなり制御の難しい国家になっている。病理を暴くというより、相手の身に置き換えて考えてみよという態度。急いで結論を出すデメリットもある。そう言われれば、コッチも中国嫌いだと騒ぐこともないか。

    小室直樹さんの本だったかな、朝鮮は自分の力で独立を勝ち取っていないので、そのコンプレックスが反日心理の奥にあるとあった。
    でも日本の現在の姿は、昨日まで鬼畜といっていたマッカーサーに開放して貰ったお蔭だから、国家の基礎に危うさがある。憲法を改正したら解決するようなことじゃない。今の日本はアメリカの属国。それに疑問を感じていない自分がいる。

    王道思想と国境を争う国家感がまったく違うものというのは判るが、王道思想の中心は皇帝の徳が周囲を感化することにあるはずだから、現在の中国にそれを求めるのは難しいのでは。そう思うと、アジアの共同圏に疑問符がつくのだけれど、どうでしょう。

    物凄く納得したこともあり、考え込んでしまう言説もたっぷり。僕自身、まだまだ近代を引きずった考えしかしていないことを思い知らされた。
    読み応えは十分過ぎるほど。何年か経ったら、読み返してみようかな。そして、急がずゆっくり中国のこと、日本のことを考えよう。

  • 街場の中国論…内田樹
    廃県置藩のすすめ
    日本と中国の近代化のスタートラインにそれほどの差はなかった。にもかかわらず、清国は日清戦争に負けた。その要因は…
    日本の近代化が成功した最大の理由は、藩閥体制にあり。日本に二百七十の小国が分立していた。自給自足している国がそれだけの数あった。つまり、「治国の訓練をするための機会が日本中に二百七十あった」のである。
    小藩といえども、一国を統御するための能力や技法に本質的な違いはない。一国の宰相を現に務めている人間が日本中に二百七十人いる。そのための訓練を受けている人間がその数倍控えている。(中略)その中でいちばん優秀な人物が日本全体を統括するというシステムではなかったけれど、治世の訓練を受けた政治家を大量かつ継続的に育てるシステムではあった。


    街場の中国論    内田樹
    チャイナリスク
    1.中国経済の失速
    成長率7%を下回ると、パイの分配の公正さをめぐる不満が噴出?
    未成熟なインビジブル・アセット
    組織原理、職業倫理が未成熟、もしくは存在しない。
    2.中産階級の動きが読めない
    果たして中国の中産階級は、健全な中産階級として中国の中核を形成できるのか?
    3.中国政府のガバナンスの低下
    政府は国民を統治できていない、と言われるよりは、政府は反日的である、と言われるほうがまだまし。という苦しい立場の中国政府。
    少数民族一億四千万人、五十五の民族。
    四国で内戦、九州の独立、などという心配のないにほの政治家に、十三億人の中国を統治するのは無理。
    4.技術力の貧さ
    製造、組立、加工の領域にとどまる。
    華僑も、中国が川上、川下に進出することを望んでいない。

  • 最近の中国を見て、根底にある文化と社会の飛び去るような発展のギャップが理解できない感じがしているのですが、この本はそれを解き明かしてくれたように思います。私のように文系で育っている人間にはとてもわかりやすいです。

  • 内田樹の大学での授業(ゼミ?)の内容を一冊にまとめたミシマ社の出世作でもあるとことの書籍を初購入。とてもよくできた本。増補版は最近のブログ内容も入っていて、それがよいのかどうかはよくわからない。こういう本を読むと、知性のレバレッジのかけかたとしての大学は正しいなと思う。教える側にとっても教えられる側にとっても。想像だけれど、ゴルゴ13におけるサイトウタカオプロダクションもこのような知性の働き方をしているのでは?

  • 自分が不勉強なせいもあるんですが、
    中国の人たちの持つメンタリティがいまいちわかんなくて。
    それぞれの出来事の専門的なあれこれは
    よくわかんないだろうと思ったので、この本はちょうどよかった。

    中国の根本にどういう考え方があるのか。
    それを丁寧に読ませてくれた感じがする。

    華夷思想って面白いねぇ。
    そりゃ私たちに中国が理解できないはずだし、
    中国に私たちが理解できないはずだなぁ。
    だって立ち位置が違って、
    お互いその立ち位置から動かずにものを言うんだものね。

    華夷思想のいうもののもつ曖昧さって、
    結構日本の持つ曖昧さと相性がいい気もするんだけどな。
    だって国境はっきりさせようぜ!とか、
    私たちの方が優位なのよ!とか言わなきゃ、
    ある程度放っておいてくれるんでしょう。

    日本が常にどこかの国の下位となる位置にいるって話も面白かった。
    でもそこで好き勝手やってなかなか快適にやってます、
    っていう状態はなかなかいいよね。だって快適なんだもの。
    とか、そういう風なことを思いました。

    全部はっきりきっちりさせるのって大変よね。
    いろいろ考えられて面白かったです。

  • 中華思想、中国近代史、チャイナリスクについて、勉強になりました。

  • この手の本は、中国への批判を一方的に展開する論調に終止するというパターンが多いのだけど、本屋で立ち読みしていたら冒頭から面白く、最後まで読んでみようと思い買ってしまいました。

    中国という国の本質を抑制の利いた文章で論理的に解体する。
    共産党内部の政治闘争によって外交の風向きが変わる。
    台湾、チベット、尖閣など紛争も辞さない国境線を危ういムードに保つことで国内の世論を沈静化するなど、なにしろ13億人の国家というのを統治していくというのは想像を絶するものがあるらしい。
    日本の政治家のようにぬるくはない、緊迫した状況がそこにはあって、中国の政治家は必死。

    7%の経済成長率を保たないと国が破綻しかねないとか、一官僚の江沢民が主席になれた理由。抗日教育と村山談話、胡耀邦の親日外交が天安門事件の引き金になった、、などこの作家の洞察は目を見張るものがあった。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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