地図の中の札幌: 街の歴史を読み解く

著者 :
制作 : 井上 哲 
  • 亜璃西社
3.70
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本棚登録 : 38
感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784906740024

作品紹介・あらすじ

地図エッセイの名手が、新旧のべ180枚の地図・地形図を駆使して、道都・札幌の歴史と変遷を読み解く前代未聞の書。沿革略史や吸収された旧町村、鉄軌道系交通、道路・水運など多彩な角度から、明治以来140余年におよぶ街の成り立ちと変遷を地図で探索する「札幌タイムトラベル」への誘い。稀少な5万分1試験地形図を付録にした、オールカラーの贅沢な一冊です。

感想・レビュー・書評

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  •  久々に買った堀先生の地図エッセイ本。エッセイストクラブ賞の「地図のたのしみ」以来、個人的におつきあいいただいたこともあり、たくさん地図や鉄道に関する本を読ませていただいている。本書は札幌の歴史を旧町村、鉄軌道、道路水運等の項目別に新旧の地図をふんだんに使って俯瞰したもの。大著ではあるがかなりの部分が地図図幅なので読むところはそれほど多くない。札幌に生まれ育った生粋の札幌っ子としてはふむふむなるほどと興趣をそそられることばかりではあるが、いかんせん系統だっていないし取り上げる内容に著者の主観が色濃く反映されているので、読んでいて満腹感はいまひとつ。それはともかく収載されている地図が判型の制約で範囲が限られ、しかも地図ごとに0.81倍とか1.06倍とかまちまちに拡大縮小されているうえに横向き配置のものもあったりして見にくいことはなはだしい。地元の出版社でレイアウトにも著者の意向が通りやすそうに思えるのに、地図をこよなく愛する堀先生らしからぬ体裁が不思議でならない。地図好きならせっかく収載されている貴重な古地図の範囲外部分もぜひ見たいと思うに違いない。大判の本とするかあるいは地図だけ分冊にするとかできなかったのだろうか。価格とか営業上の問題があったのかな。貴重な資料だけに惜しい。

  • 地図でめぐる札幌の歴史。個人的興味がある事項をいくつか拾う。/製麻工場、明治20年、北海道製麻株式会社に、23年本社工場が現在札幌中央郵便局のある、北6東1に竣工。繊維採取工場(製線工場)が北区麻生町6〜7丁目に設置。会社は明治40年日本製麻株式会社と合併して帝国製麻株式会社へ、昭和16年、太陽レーヨン株式会社と合併し帝国繊維株式会社へ。化学繊維台頭のため、札幌の会社、工場は昭和31年、38年に閉鎖、後者が「麻生」という町名、地下鉄駅名に辛うじて名をとどめる。テイセンボウルは帝国繊維が経営している。名前の由来/地下鉄をゴムタイヤにしたことでJRと乗り入れできないこと、定山渓鉄道跡を利用して、南区も延伸できたのでは、というIFをかかげる著者。しかし、今となれば、地下鉄が分離していることで、冬期にJRの運休の影響をまったく受けないというメリットもあり、どっちもどっちと言えそうに個人的には思う。/植物園西側、北四条通りの西11丁目〜西17丁目間。通称、ミニ大通。閑静な遊歩道で著者のおきにいりとか。ちょっと一度歩いてみたくなる。/著者主催のコンターサークルS、機関誌「等高線S」にもあたってみたくなる。著者の趣向として、あまり街歩きに興味がなく、閑静な場所を歩く事に指向が向いているようで、個人的には逆の指向なので、街歩き指向の人が同じ目でみたらどうなるのか、というのも読んでみたく思った。

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著者プロフィール

1926年、京都府に生まれ、1935年、札幌に移住。北海道大学理学部卒業後、同大学低温科学研究所助手等を経て、物性物理学・統計力学・数理物理学を専攻。理学博士。1980年まで同大学理学部教授として主に物理の研究・教育に従事。同年、人生二毛作に向けて大学を退職し、エッセイストに転向。1990年、建設省(現国土交通省)国土地理院長表彰を受賞。
小学生のころから地図の美しさに魅せられ、放浪を趣味とする。1960年代より地形図を手に全国の旧道、廃線跡、産業遺産などを歩く旅をスタート。地図と旅の愛好者の集まり「コンターサークルS」を主宰。現在も各地を精力的に歩き続ける。1972年、『地図のたのしみ』(河出書房新社)で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。北海道大学名誉教授。
『地図を歩く』(河出書房新社)、『地図のワンダーランド』(小学館)、『地図で歩く古代から現代まで』(JTB)、『消えた街道・鉄道を歩く地図の旅』『にっぽん地図歩きの旅 古道、旧道、旧街道』(ともに講談社+α新書)、『忘れられた道 完』(北海道新聞社)、『サッポロこぼれある記―北の街の空のひろがり』(そしえて)、『エントロピーとは何か―でたらめの効用』(講談社ブルーバックス)、『地図の中の札幌』『北海道 地図の中の鉄路』(ともに亜璃西社)など、地図・鉄道・旅行・物理学に関する著書が多数ある。

「2017年 『北海道 地図の中の廃線』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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