作品紹介・あらすじ
自閉症の人と一緒に社会に生きて一緒に仕事をする。一般社会人である私たちにもできる発達障害者支援とは?自閉症の人たちと仕事をしてきた編集者が十年という時間の中で気づいたこと。
感想・レビュー・書評
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花風社の本を、既に5.6冊読んでいるので、あまり目新しいことは書いてないのですが。仕事をする仲間として自閉っ子に出会った著者の、時系列に沿ったエピソードの紹介は、とても腑に落ちて、よくわかります。
今の日本に高機能性自閉症者を養う力はない。一緒に働けるよう支援しようというのは、きわめてまっとうな主張だと思います。
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編集者としてお仕事をされている花風社の浅見淳子さんが、ご自身の体験をもとに、自閉症や発達障害のある人について、また、支援について書かれた本です。
浅見さんが障害のある方とお付き合いする中で気がついたり、考えたこと、また、書籍で伝えたいことなどがまとめられています。浅見さんのお仕事のこれまでの歩みを振り返った本といえます。
浅見さんは、お仕事を一緒にしたい、一緒にする必要がある人だから、お付き合いしていくという姿勢の方。障害の有無は、仕事上のお付き合いをする・しないとは関係ない。
お付き合いの考え方は、とても自然だと思います。
また、本書を読むと、浅見さんが失敗を経験されたり、試行錯誤されながら、お付き合いしてこられたことも伝わってきます。
私が注目した点は、次の箇所です。
「(株)たすく」の斎藤宇開先生の言葉としてご紹介されている「社会の理解には限界があるんです」という言葉。
これは、胸のなかにもやもや蓄積していたものがストンと落ちるような言葉だと思います。
浅見さんもご指摘されていることですが、一般の人から理解を得にくい、分かりにくいとされている障害について、理解を得るのはなかなか難しいと思います。
理解を得るために啓発活動をしたり、情報発信することは必要ですが、でも、それをしたからといって、すぐに理解されるかというと、おそらくそうでないとも思います。
社会のなかには「わかってくれない」人もいる。
社会の理解には限界がある。
頭の中で一応は分かっているけれど、なんとなくモヤモヤしてしまったとき、改めて、「ああ、そうでした」と、再確認するような感じがします。
そして、「社会の理解には限界がある」ということを踏まえて、だからこそ、こうしていこう。こうやってみよう。
という次の一歩が見えてくるような気がしました。
本書第7章の「新時代へ」は、この本の総括であり、浅見さんのお仕事のこれからについて書かれています。
そのなかで、
「社会は怖い場所ではない」というテーマで書かれていることは、私が障害者の就労に注目している理由と重なる点がありました。
また、「希望を記録していく」というテーマでまとめられていること、素敵です。
その人の今だけでなく、未来ごと受容するという考え方は、視野が開けます。
読みやすく、そして、読み終えた後、「なるほど」と感じさせる1冊。
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この本が良いと思ったのは発達障害を知らない一般の方が読んでも理解しやすいことです。
編集者が執筆した本だけあって構成や文章、文字の大きさなどが見やすく、専門知識がない私にもとても読みやすかったです。
この本は帯にも書かれていますが、「一般社会人である私たちにもできる発達障害者支援とは?」を考え、一般の人にもできる支援の案を提案している本だと思います。
本の構成は、
第1章 偶然の出会い
第2章 自閉症理解への長い道
’身体編、セルフ・エスティーム編、世界の切り取り方編、など)
第3章 自閉っ子についてわかってもらおう時代
第4章 現場の人々との出会いが教えてくれたこと
第5章 わかってもらうことの限界
第6章 発達障害は治らないんだろうか
第7章 新時代へ
他の方もレビューで書かれていますが浅見氏が説明する「三つ組みの障害」、自閉症スペクトラムの方への接し方、就労などを含む成人支援などが現実的なアプローチで丁寧に書かれています。
本論とは外れますがインターネットのルールを発達障害の人が理解し、トラブルに巻き込まれない・トラブルを起こさないようにすることの大切さもこの本を読んで感じました。
今、一般の人達が発達障害の人と接するときにどうしたら良いのか、ともに生きて行く上でお互いに知っていたほうが良いことが大変わかりやすかったです。発達障害の方・ご家族の方が呼んでも自己理解をする上で役立つ本だと思います。
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世界の切り取り方が「一対一対応」で「先着一名様」というのが、あるあるすぎる。修正するのに多大なエネルギーを要するのよね。『自閉っ子シリーズ』でそれを知ってからは大分マシになったけど。父親が商売をしてたおかげで「金儲け=悪」という刷り込みはされずに済んで良かった。「誰とでも仲良く」の呪いは強力やったなぁ。友達100人作らなあかんのに、いじめっ子と仲良くできない自分は悪い子やと思ってた。人見知りを克服しようと趣味のグループに飛び込んでいって、途方に暮れて、持て余されたりもした。懐かしい。
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かっこいい。
読みながら、私の脳みそはぴきーんぴきーんとつながっていく感じがしました。
読みながら、背中を押されてる感じがしました。
読みながら、私もまだまだやれる、がんばれる、かなと思いました。
またへこむときもきっとくる。
そうしたら「私の想像力はあてにならない」と、違うベクトルへ気持ちが向かうようにしたい。
ひさびさに、付箋をつけながら読みました。
この本そのまま、脳みそに入れたいと思いました。
浅見淳子の作品