虎の尾を踏む男達 [DVD]

出演 : 大河内傳次郎  藤田進  榎本健一  森雅之  志村喬  黒澤明  小杉義男  岩井半四郎 
  • 東宝
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988104021458

感想・レビュー・書評

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  • 平家滅亡後、英雄から一転、兄・源頼朝の命で追われる身となった義経一行の逃亡の一幕を、歌舞伎の演目として名高い「勧進帳」を基礎に、極めてシンプルな枠組みなのに、いかにも黒澤明監督らしい、一ひねりのユーモアと、緊張感ある演出で描いた良作。

    ストーリー展開自体は、勧進帳に忠実です。
    頼朝の命で追われて奥州へ逃げようとする義経主従七人。
    義経は強力(今でいう山の案内人)、弁慶を始め家来六人は、東大寺再建の為の寄進集め(勧進)を仰せつかった山伏に扮して、安宅の関所を越えようとします。

    しかし、義経一行が山伏に扮して逃げているとの情報はすでに伝わっており、関守の富樫は、変装した義経一行の正体を暴こうと、難解な質問をいくつもする。
    山伏に扮した弁慶は、堂々と淀みなくその質問に答え続け、そして、白紙の偽勧進帳を、空で堂々と読み上げ…。

    弁慶と富樫の、視線と言葉による両者一歩も譲らない応酬は、緊張感に満ちた厳しい美しさに溢れていて、これぞ、黒澤映画の醍醐味といった感じ。

    黒澤監督は、刀を用いた躍動感ある対決シーンのない、このような動きのないシーンだけでも、これほど緊迫感ある見事な映像を撮れたのかと惚れ惚れしてしまいました。

    軽口のせいで弁慶達に凄まれ、義経に衣装を貸す羽目になり、うっかり付いていった関所ではオタオタ・オロオロする、本家の勧進帳には登場しない架空のキャラクター「強力」を設けて、死ぬか生きるかの瀬戸際の舞台の中に、クスクス笑ってしまうコミカルさを埋め込んでいるメリハリ技法も、いかにも黒澤監督らしい。

    この、巻き込まれる「強力」の表情やしぐさが、またなんとも絶妙です。あまりに見事なので、調べてみたら、なんでも、当時人気絶頂の喜劇スターで、榎本健一さんという方だそう。
    外国でいうチャップリンとか、現代の日本なら、志村けんさんみたいな感じだったのかもしれません。

    ラストの弁慶の、うって変わった滑稽な姿も実にご愛嬌。
    これも、本家の勧進帳とは異なる展開ですが、「緊張しっぱなしの大仕事を終えた後だもん、そうなるよね!」と手を叩きたくなってしまいました。

    にしても、敵方だけど、関守の富樫も、義を知る素敵な人です。

    一時間にも満たない短い作品ですし、第二次世界大戦最中に撮られたことで予算がなかったのもあり(1945年9月完成)、後年の黒澤作品と比べたら実にこじんまりとした作品ですが、充分に黒澤手法による魅力が詰まった良作でした。

  • 源義経と六人の従者が、頼朝の守る安宅の関所をどうにかこうにか通り抜けるというお話。
    わずか58分の映画である。
    戦中の混乱の中で作られたということで、セットが非常に小さく、映画というよりも舞台を見ているような気持ちになる。

    見どころは、武蔵防弁慶(大河内傳次郎)が、白紙の巻物を勧進帳と偽って読み上げるシーン。
    ハラハラドキドキ。

    虎の尾を踏み
    毒蛇の口を逃るる心地

    ってこんな感じなのか?

    榎本健一さん演じる強力の顔を見ているだけで結構おもしろいです。

  • 黒澤監督版勧進帳。強力の存在がいい味を出していた。
    ラストシーン、豪華な着物と印籠を褒美として残して義経とその一行は去り、美しい雲の流れる空の下、強力は一人残される。セリフもモノローグも説明も一切無いが、この後強力と義経弁慶たちは二度と会うことが無いのだろうなと直感させられる。一期一会を感じさせる良いシーンだと思った。
    弁慶と義経だけ演技が違っていて若干浮いていた。

  • (1945年作品)

  • 大河内傳次郎の台詞が聞き取りづらいのが残念だけど、関所を対話で越えようとするところには独特の緊張感があったし、弁慶と義経の関係も気持ち良い!榎本健一の演技も作品に軽さを生んでいて好き!そんでwikiで勧進帳のあらすじ読んだけど、良い話だなー!

  • 黒澤明監督 1945年9月 作品

    この時期に よくこんな映画を作ったと思う。
    ただし、「主君への忠誠という封建思想」ということで、
    アメリカ占領軍に 禁止処分を受け 
    1952年まで公開されなかった。
    アメリカ占領軍の虎の尾を踏んでしまったらしい。

    黒澤明監督始めての 時代劇。
    弁慶の勧進帳・・・は、歌舞伎の定番を映画化。

    1185年 
    『人が疑うのが欠点で有名だった頼朝』・・・
    とクレディットが出る。

    弁慶(大河内傳次郎)と6人の山伏
    義経(仁科周芳;岩井半四郎)も山伏の姿である。。
    (黒澤監督は この時から 7人を意識している。)

    『旅の衣は、すずかけの・・・』の歌で始まる。
    山伏の一行の中に 強力(榎本健一;エノケン)が、加わって・・・
    加賀の国を通り抜け、安宅の関に向かう。

    エノケンって、背が小さかったんですね。
    エノケンは 物知りに 
    義経の一行が姿を山伏に変えて逃避行している
    ということを、義経一行に話をする。
    この表情がいい・・・
    黒澤監督は このような役回りをうまく使う。
    『乱』の ピーターが、エノケンの役割に近いが・・・
    ピーターは その役割を十分に発揮しえていない。
    喜劇役者は天性のものがあるのだろう。
    存在するだけで、笑いを引き起こすことができる。

    弁慶と対峙するのは 関守富樫(藤田進)・・・
    『鎌倉殿の厳命により、
    判官一行が山伏の姿に変えている。
    山伏姿の者は、ここを通す訳には参らぬ』
    という・・。

    山伏は7人のはず・・・
    というと
    山伏6人 強力2人 とエノケンが言う。
    義経は 強力に姿を変えていたのだ。

    そこで始まる 弁慶(大河内伝次郎)の勧進帳・・・
    (姿三四郎では 普通の話し方をしていたが
     伝次郎節での話し方になっていて・・・
     今では、よく聞き取れない。
    弁慶の読んでいる勧進帳は 白紙なので、
    エノケンは 驚いて、目を剥いている。
    弁慶は 富樫の質問に 堂々と答え、通行を許されるが・・

    強力姿の義経を梶原季時の使者が 
    『その強力 義経に似ている』という・・・。
    そのとき弁慶が 強力姿の義経を引き倒して
    杖で散々殴る・・・

    使者は『義経と瓜二つ』ということで、
    斬りあいになろうとするときに・・・ 

    富樫がいう
    『おのれの主を杖を持って家来が打つなど 
    あるはずがござらん。通られい!』
    と・・・

    無事通り抜けた一行は・・
    しばし休憩したときに・・・
    弁慶は 義経に涙を流して謝る・・。
    義経は 『もうよい』 と許す。

    富樫の使者から 弁慶一行に 酒がふるまわれ・・
    酒を一気に飲み干す 弁慶。

    エノケンが酔っ払って眠ってしまい
    目を覚ましたとき義経の衣がかぶさっていた。
    そして、エノケンが遠くを見るときの 
    空には きれいな雲がでている。

    この物語が 後の 『隠し砦の三悪人』に発展していく。

  • 歌舞伎勧進帳の有名な場面。
    歌舞伎は観たことがないのですが、この安宅の関所の場は有名です。
    驚きなのは、1945年9月に公開ということです。
    戦後・・・・まだ半月も経っていない。
    これだけの俳優や撮影機器が揃って・・・・。
    当然、戦時中にも撮影していたのかもしれないとしても。
    歌舞伎からしか題材が取れなかったのかもしれないとしても、映画人としての勢い、気負いが感じられる。

  • 義経の話に疎くてもそこそこ楽しめたから、予備知識があると黒澤明の狙いとかもっとわかってより面白かったのでは。時間が短く、起承転結もすっきりしているさらっとしたエンターテイメントでした。でも作品の古さ故の味のある厳しさはあります。うん、戦後感すごい。字幕ありでの鑑賞をお勧めします。

  • 合わない。眠い。字幕ないと理解出来ない。

  • 聞き取りづらい…

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