夏の嵐 [DVD]

監督 : ルキーノ・ヴィスコンティ 
出演 : アリダ・ヴァッリ  ファーリー・グレンジャー  マッシモ・ジロッティ 
  • 紀伊國屋書店
3.55
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4523215005371

感想・レビュー・書評

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  • 1954年イタリア映画。監督はルキノ・ヴィスコンティ。
    原作名の”Senso”は「官能」の意とのこと。
    主演は伯爵夫人リヴィア役のアリダ・ヴァッリ。それに不倫相手のオーストリア軍中尉フランツ役にファーリー・グレンジャー。リヴィアのいとこでオーストリア占領軍に対抗するロベルト役にマッシモ・ジロッティ。

    19世紀半ば、オーストリア軍はイタリアのヴェネツィアを占領していた。オペラ劇場でオーストリア軍将校らに対抗の意志をあらわす観客たち。そんな中でロベルトはオーストリア軍中尉のフランツに決闘を申し込む。ロベルトの身を案じたリヴィアはフランツに近づき決闘を阻止せんとするのだが、フランツに会ったリヴィアは次第に若い彼に心惹かれるのであった・・・。

    単刀直入にいうと不倫物です。若い男にのめり込み、不倫の果てに次第に破滅につき進む伯爵夫人リヴィアの姿を描いています。内容はこれだけなのですが(笑)、ヴィスコンティが監督すると華麗で重厚な歴史絵巻を背景に、情熱的な愛情に目覚めた高貴な淑女の悲恋としてかくも壮大に謳いあげるのかと感心してしまいます。極彩色な衣裳と映像、イタリア中世の各所のたたずまい、格調あるクラシック音楽のBGM、そして、圧倒的な戦争シーンと、これでもかと費用を使いまくったように思えるだけの独特な雰囲気を描き出しています。ほんと、内容的には若いジゴロな男に狂い翻弄される熟女(?)を描いているだけなんですけどね・・・。(笑)
    アリダ・ヴァッリはなかなかの好演でした。男に振り回される毎に、歓びやいらいら感や悲嘆や怒りを縦横に演じ切っていました。特に、抑えつけた欲求が溜まっていくところなんかは迫真な演技だったと思うのですが、いまいち感情移入できなかったのは、観ている者には、あれはどう考えてもダメダメな男だろ!とわかりやすかったからかもしれません。(笑)
    ヴィスコンティ以外の監督だったらここまで格調高い作品にはならずにエロティックな方向に走っていく方が楽なような内容なのですが(笑)、本作は脱ぐシーンも無いし、ひたすら堕ちていく女を観ていて思ったのは、あ~、熟女ってこわいなあ~、と。(笑)
    いや、重厚で格調高い不倫なら・・・。(笑)

  • う~ん、なんだかなあ。原作はカミロ・ボイトの短編「Senso(官能)」ということだから、まさにイタリア語でSensoの成せる事跡。それがヴィスコンティの大仰なセットでくりひろげられる。

    気になったのは伯爵夫人のスカートの裾。完全に地面についている。泥だらけになりすぐ擦り切れてしまう気がする。当時の実情を知りたい。

    1954イタリア
    2020.4.11アマゾンプライム無料

  • 多分10年以上前に買ったDVD、ようやく観終えた。
    なぜ恋に落ちたのか、なぜ『夏の嵐』なのか、なぜ発覚しないのか、なぜ見抜けなかったのか、「なぜ」だらけなところが鑑賞を遅らせたのかも。

  • 高貴で美しく着飾るアリダ ヴァリが、髪を振り乱して般若のような醜い女となるまでのヴィスコンティが描くメロドラマのような人妻不倫の物語。

    イタリア人中年の公爵夫人と若きオーストリア中尉と紡ぐ美しいとは言えないゲス不倫の物語ですが、壮大な音楽を背景に流れるイタリア貴族の絵画のような格式高いシークエンスは、オープニングの長回しで映し出されるオペラ劇の延長のようにも見えて、作品全体に溢れるクラシカルで芸術的な映像は実に重厚感があってワクワクさせられる。
    アリダが演じる気高い公爵夫人が、初めての恋を目の当たりにして、十代の少女のように周りが見えないほどに自分を見失い、最終的に消化されない想いに憎しみにまみれていくまでの表情の変化で見せる演技は、今見たらありきたりなこんなストーリーの中であっても色褪せない素晴らしさがある。
    そして、美しき中尉を演じたファリー グレンジャーの胡散臭さプンプンのいい意味でわかりやすい演技は、始めから悪い予感しか感じさせず、期待通りほんとうに見事なゲス男ぶりを見せてくれて、美しく着飾った夫人がそのクズ男の罠に落ちてどんどん愚かな女なるという予定調和に、こうはなりたくないと思いつつも楽しん観てしまう自分もいた。

    ヴィスコンティの描く悲劇の中でも最ももって救いようのない虚しい人間関係を描いた本作品は、心に打つものは何もないのだけども、こんなしょうもない恋愛模様を壮大に、芸術的なものしてしまう才能にはひたすら感服してしまうし、全くもって共感性もなく、好きな系統のストーリーではないのに、なんとも言えぬ重厚感な雰囲気に気圧されて、結果的には観ることができて良かった思ってしまうヴィスコンティ作品の魔力、恐るべし。

  • はたから見ると、男のどうしようもなさが歴然ですが、恋はするものではなく、落ちるものなんですね。でも、ただの不倫ものではない格調の高さ。伯爵邸や荘園の様子、伯爵夫人のドレス姿の着こなしなど、ヴィスコンティならではのセンスですね。また、劇中なんども流れるブルックナーの交響曲は、後期ロマン派かと見紛う、むせ返るばかりの濃厚さでした。

  • オーストリアに占領されたベネチアを舞台に繰り広げられる、伯爵夫人と若い将校の悲恋もの。はじめから終わりが見えている恋に、自らさまざまな裏切りを重ね、地位や立場ばかりでなく正義すらかなぐり捨てて恋を貫こうとする。勿論待っていたのは残酷な別れ。ヴィスコンティの光と影を使った美しい映像が、その悲しみをさらに演出する。ロミジュリを見たときも思ったのだが、個人的にはこの自業自得的な悲恋の空騒ぎには酔えない。ただその愚かな将校が言うように、若くして故郷を離れ、見知らぬ街で命を落とす危険にさらされながら生きていれば、酒や女に溺れ、おかしくなってしまうこともあるのだろう。決して許されることではないが、その狂気じみた恋愛にも理由はある。戦争というものは、このほどさように人生や命をもてあそぶものか、ということは改めて実感する。

  • 深読みさせてしまうショットやセリフの素晴らしさには、ため息がでる。

    オペラ座のショットの構成、ちちくりあっている時に見た夢が「戦争ごっこ」(恋をめぐる攻防)、ラストカットの空虚感など。

    【ストーリー】
     1866年、オーストリア軍占領下のヴェネツィアで観劇中の軍の将校と抗戦運動の指導者の侯爵との間に決闘騒ぎが起こる。それを諌めに入った伯爵夫人は、従弟である侯爵を流刑にされながらも、その美貌の将校に狂おしく恋をする。
     再び戦争が勃発し、密入国した侯爵は従姉のもとを訪ね軍資金の保管を依頼するが、夫人はその金を、将校に軍籍離脱の賄賂のためにと渡してしまう。祖国は敗れ、ヴェロナにいる彼の元に馬車を急がせた。
     だって原題が「官能」(19世紀末のカミッロ・ボイトの短編小説が原作)だもの、もう、その通り。オペラ座の舞台から始まる、この絢爛たる恋の絵巻は、後期のヴィスコンティの耽美趣味が既に顔をだしながらも、やはりネオ・レオリズモで鍛えた直截な描写力が活きていて、全くヴァイタルなメロドラマになっている。
     薄汚れた姿で恋人を探して兵舎を訪ね回る夫人=A・ヴァリの激情は、トリュフォーの「アデルの恋の物語」のI・アジャーニの比ではない。G・R・アルドと彼の死で途中交代したR・クラスカーのキャメラのゴージャスさ、全篇に響き渡るブルックナーの第七番。これぞイタリア映画というボリュームで観る者を圧倒する傑作だ。

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